海外の取引先への支払い。輸入代金の送金。事業がグローバルに広がるほど、外国送金の業務は増えていきます。
NetSuiteで基幹業務を一元化するとき、こんな疑問を持つ方は多いはずです。
「NetSuiteで、海外送金もそのままできるのだろうか?」
さらに2023年から2025年にかけて、外国送金のフォーマットが国際標準のISO20022へと切り替わりました。実務担当者にとっては、対応が気になるテーマです。
結論からお伝えします。NetSuiteで外国送金まわりの多くは、標準で回せます。ただし、日本の銀行が求める外為フォーマットの出力には、注意すべき点があります。
この記事では、できること・できないこと・解決策を、実務目線で整理します。NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが解説します。
この記事で分かること(読了目安:約7分)
- ISO20022とは何か、2025年に外国送金で何が変わったのか
- NetSuiteで外国送金が標準でどこまでできるのか(できること・できないこと一覧)
- 標準で足りない場合に、どう対応すればよいか(3つの道)
ISO20022とは?2025年に外国送金で何が変わったか
まず前提を整理します。2025年までに、外国送金の世界共通フォーマットが新しくなりました。その中心にあるのがISO20022です。
ISO20022とは
ISO20022とは、金融メッセージの国際標準規格です。
お金のやり取りに必要な情報を、XML(データを構造的に記述する形式)でまとめます。
従来より多くの情報を、正確に乗せられるのが特長です。住所や送金目的などを細かく記載できるため、マネーロンダリング対策にも役立ちます(出典:三菱UFJ銀行ほか各行公式)。
MTフォーマットからMXフォーマットへ
外国送金の電文は、SWIFT(国際銀行間通信協会)という世界的なネットワークでやり取りされます。
このフォーマットが、従来の「MTフォーマット」から、ISO20022に対応した新しい「MXフォーマット」へ移行しました。
- MTフォーマット:1970年代から使われてきた従来の書式
- MXフォーマット:ISO20022準拠の、XMLベースの新しい書式
移行は2025年11月までに完了
この移行は、2023年3月から2025年11月にかけて段階的に進み、すでに完了しています(出典:SWIFT、三菱UFJ銀行)。
- 2023年3月:ユーロ圏の決済制度
- 2024年4月:米ドル決済制度(CHIPS)
- 2025年7月:米ドル決済制度(Fedwire)
- 2025年11月:円建ての外国送金制度(日本)
つまり、いまは「これから備える」段階ではありません。「切替後の実務にどう対応するか」が論点になっています。
NetSuiteで外国送金は標準でどこまでできるか
では本題です。NetSuiteで外国送金は、標準機能でどこまでできるのでしょうか。送金ファイルを作る機能を中心に見ていきます。
送金ファイルを作る標準機能「Electronic Bank Payments」
NetSuiteには、Electronic Bank Paymentsという標準のSuiteAppがあります(出典:Oracle NetSuite公式)。以前はNetSuite Electronic Paymentsと呼ばれていた機能です。
仕入先への支払いや従業員への経費精算など、送金ファイルを作ることができます。
- 多通貨での支払処理
- 世界50以上の銀行フォーマットに対応
- 送金の承認ワークフロー
仕向送金(自社から海外へお金を送る側の送金)のデータ作成や管理は、標準で対応できます。
【比較表】標準でできること・できないこと
| 項目 | NetSuite標準 | 補足 |
|---|---|---|
| 送金データの作成・管理 | ◯ | 支払取引として登録・管理 |
| 海外仕入先・銀行情報の管理 | ◯ | 仕入先ごとに保持 |
| 多通貨での記帳・支払 | ◯ | 標準で多通貨対応 |
| 送金の承認ワークフロー | ◯ | 承認フローを設定可能 |
| 銀行向け送金ファイルの出力 | △ | 生成機能はあるが、日本の銀行の外為仕様には完全対応しない |
| 日本の外為ファイル伝送(AnserDATAPORT等)への適合 | ✕ | 標準テンプレートがなく、カスタム作成が必要 |
凡例:◯標準対応/△条件付き/✕カスタム開発が必要
ISO20022のマッピング機能はある
NetSuiteには、ISO20022のタグに項目を対応づけるカスタマイズ機能もあります(Localization Assistantの画面で設定。出典:Oracle NetSuite公式)。
つまり「ISO20022にまったく対応できない」わけではありません。
ただし、日本の各銀行が求める細かな仕様に合わせるには、設定やカスタムの作り込みが必要になります。ここが次のテーマです。
なぜ「標準だけ」では足りないのか(正直にお伝えします)
ここは、NetSuiteをおすすめしたいから書くのではありません。導入後に「思っていたのと違った」とならないよう、正直にお伝えする部分です。
まず、よくある期待からお話しします。
「NetSuiteを入れれば、海外送金も自動でできるはず」
そう考える方は少なくありません。たしかにNetSuiteには、送金ファイルを作る標準機能があります(前述のElectronic Bank Payments)。
ただ、日本の外国送金には、つまずきやすい点が2つあります。
理由1:日本の外為フォーマットは「標準テンプレート」が用意されていない
NetSuiteのElectronic Bank Paymentsは、世界50以上の銀行フォーマットに対応しています(出典:Oracle NetSuite公式)。
一方で、標準テンプレートがない国もあります。その場合、自社でカスタムの送金ファイル書式(Payment File Format)を作る必要があります(出典:Oracle NetSuite公式ドキュメント)。
日本の銀行が外為送金で求める書式は、この「標準テンプレートがない」側に入ることが多いのが実情です。
理由2:送金の経路が日本独自
日本の外国送金は、多くがAnserDATAPORT経由か、各銀行のインターネットバンキングで行われます。AnserDATAPORTとは、NTTデータが提供する、企業と銀行をつなぐファイル伝送サービスです。
NetSuiteから出した送金ファイルを、この経路や銀行ごとの仕様にそのまま乗せられるとは限りません。
だから、正直にお伝えします。
現時点では、NetSuite標準だけでは、日本の銀行が求める外為フォーマットを出力しきれない場合があります。
これは弱点ではなく、「最初に確認しておくべきポイント」です。日本の財務・銀行まわりは、勢いで進めず慎重に見極める。遠回りに見えて、これがいちばんの近道です。
NetSuiteで外国送金に対応する3つの道
では、どうすればいいのか。向き合い方は大きく3つあります。「今できること」「作り込めば実現できること」「これから対応されること」の順に説明します。
(a) 今、標準でできること
標準機能だけでも、外国送金まわりで回せることは多くあります。
- 海外仕入先ごとの銀行情報の管理
- 多通貨での記帳・支払処理
- 送金の承認ワークフロー
また、送金の「周辺業務」は、日本対応の機能やSuiteApp(NetSuiteに追加できる拡張アプリ)で効率化できます。
- 国内送金(全銀フォーマット)の自動化 → NetSuiteで全銀フォーマットの支払を自動化する方法
- 入金消込・銀行明細の自動取込 → NetSuiteの銀行連携・自動消込ガイド
- 日本対応で標準でできること一覧 → NetSuite Japan Localization SuiteAppとは
まずは「標準で回せる範囲」を確定させる。これが出発点です。
(b) 作り込めば、実現できる
「標準テンプレートがない=あきらめる」ではありません。
NetSuiteは、カスタムの送金ファイル書式やSuiteScriptを使えます。SuiteScriptとは、NetSuite上で動く独自プログラムのことです。これらを使えば、銀行ごとの仕様に合わせた送金ファイルを作り込めます。
ベンチャーネットにも、この領域の実績があります。
2025年のISO20022切替に際し、国内大手銀行の新しい外為送金フォーマットに、カスタムオブジェクトを用いて対応した実績があります。
「できること」を起点にするのではなく、「やるべきこと」を起点に要件を固める。標準とアドオンの最適なバランスを設計する。これが、ベンチャーネットのアドオン開発サービスNetSuiteリブートの考え方です。
できないことを隠さず、できる形を一緒に作る。私たちはそういう関わり方を大切にしています。
(c) これから、順次対応されること
NetSuiteは、年2回のアップデートで機能拡張を続けています。日本の外為対応も、今後さらに進む可能性があります。
本記事は、最新の対応状況に合わせて随時更新します。現時点での対応可否は、お問い合わせください。(更新日:2026年6月1日)
よくある質問(FAQ)
Q1. NetSuiteで海外送金(外国送金)はできますか?
できます。ただし、範囲に注意が必要です。
仕入先の銀行情報の管理、多通貨での支払処理、承認ワークフローは標準で対応できます。一方、日本の銀行が求める外為フォーマットでの送金ファイル出力は、標準だけでは不十分な場合があり、カスタム開発で補うことが多くなります。
Q2. ISO20022への切替で、NetSuite側に特別な準備は必要ですか?
切替そのものは、2025年にすでに完了しています。
NetSuiteから送金ファイルを出して銀行に渡す運用の場合、銀行が求める新フォーマットに出力を合わせる必要があります。まずは取引銀行の仕様と、自社の送金経路(インターネットバンキングか、ファイル伝送か)を確認することをおすすめします。
Q3. 標準で足りない場合、どう対応すればいいですか?
カスタムの送金ファイル書式やSuiteScriptを使った作り込みで対応できます。
ベンチャーネットには、ISO20022切替に伴う国内大手銀行の外為フォーマットに、カスタムオブジェクトで対応した実績があります。要件の確認からご相談いただけます。
Q4. 国内送金(全銀フォーマット)はどうなりますか?
国内送金は、外国送金とは別の仕組み(全銀フォーマット)で行われます。
NetSuiteでの全銀フォーマット対応については、別記事で詳しく解説しています。→ NetSuiteで全銀フォーマットの支払を自動化する方法
まとめ:できることを正直に、できる形を一緒に
NetSuiteで外国送金に向き合うとき、大切なのは順序です。
- まず、標準でできる範囲を確定する
- 次に、標準で足りない部分を見極める
- そのうえで、作り込みが必要かを判断する
NetSuiteは万能ではありません。日本の外為フォーマットのように、標準だけでは届かない領域もあります。
でも、それは「あきらめる理由」ではありません。要件に合わせて作り込めば、実現できることは多くあります。
ベンチャーネットは、できないことを隠さずお伝えし、できる形を一緒に考えるパートナーでありたいと考えています。
「自社の取引銀行で、NetSuiteから外為送金できるのか知りたい」
「標準で足りない部分を、どう作り込めばいいか相談したい」
そうした段階で、お気軽にご相談ください。
ご相談はこちらから
- 外国送金の要件を相談したい → NetSuite 事前無料相談・体験デモ
- 標準で足りない部分を作り込みたい → NetSuiteリブート(アドオン開発サービス)
- 財務・経理まわりを一気通貫で整えたい → NetSuite×会計ブリッジ伴走サービス
