27年間使用してきたSAP R/3 の保守終了を機に、基幹システムをOracle NetSuiteで全面刷新
新基幹システム導入に向かった背景と課題 そして得られた業務変革の数々の成果
【1.導入の背景】SAP R/3 保守サポート終了を契機に基幹システム刷新を決断
1963年創業以来、コーヒーをはじめとするカップ式自動販売機オペレーターの先駆者として飲料開発に努めてきた株式会社アペックス。いつでも最高の飲み物を届けるため、商品の開発•原料の選定から自動販売機の開発、管理運営まで、顧客から支持され続けるトータルビジネスを展開しています。
ただ、そんな同社の事業のネックとなっていたのが、1998年から27年間にわたり運用してきたSAP R/3です。基幹システムとして日々の業務は支障なくこなしていましたが、紙の帳票ベースの複雑な業務オペレーションが根付いており、将来的なデジタル•AI活用基盤への拡張は困難な状況にありました。
そして目前に差し迫っていたのが、2025年にSAP社による保守サポートが終了する、いわゆる「2025年問題」です。以降もSAP R/3を継続利用するのは事実上不可能であり、同社はこれを契機に、基幹システムの全面刷新を決断しました。

【2.Oracle NetSuite 選定の経緯】ゼロベースで検討した結果として
SAP R/3からの移行先となる新たなERPとして、まず候補に挙がったのはSAP S/4 HANAです。しかし、この移行には多大なコストと工数が必要で、同社にとって負担の重すぎるプロジェクトとなってしまいます。SAP S/4 HANAは大手企業向けのERPであり、中堅企業である当社には過剰機能でコスト負担が大きいと判断しました。
また、長年にわたり蓄積されてきたアドオンや複雑なカスタマイズが新システムの要求仕様に組み込まれ、既存の業務に潜在している非効率なプロセスまで、そのまま継承されてしまう懸念がありました。
そこで同社はゼロベースで選定を行い、延べ12製品を比較検討しました。その結果、クラウドネイティブのOracle NetSuiteには以下の優位性があると判断し、導入を決めました。
- システムのイニシャル•ランニングコストが大幅に削減できる
- シンプルな設計で業務標準化を促進
- ドリルダウン機能による財務数値分析の高速化
- 統合マスター管理でデータ精度向上
- 外部ツール(楽楽明細等)との連携が容易
【3.プロジェクトの経緯と成果】
株式会社アペックスの基幹システム導入プロジェクトは2024年1月に始動しました。
PMに就任した岩月大器氏の陣頭指揮のもと、情報システム部、財務経理部、商品調達部、業務企画部などからメンバーを集めた全社横断のチームを編成。さらに、株式会社ベンチャーネットをパートナーに加えてOracle NetSuiteの導入を進め、1年9ヶ月後の2025年10月1日に無事リリースを完了しました。
Oracle NetSuiteによって刷新された基幹システムは、次のような定量的効果をもたらしています。
| 項目 | Before (SAP R/3) | After (Oracle NetSuite) | 改善効果 |
|---|---|---|---|
| 帳票送付にかかる外部支払いコスト (Netsuiteと自動連係した楽楽明細から請求書・支払明細書を電子作成・送付) |
年間約6,000万円 (紙代•インク代•封筒代•切手代など、外部支払が多く発生) |
年間約1,600万円 (Netsuiteと自動連係した楽楽明細から請求書•支払明細書を電子作成•送付。外部支払コストは、ほぼ楽楽明細システム利用料のみに集約) |
約73%削減 |
| 帳票送付にかかる内部作業コスト (主に帳票関連の作成・報告・請求・メール・電帳法保存対応など) |
年間約4,000万円 (紙の請求書を印刷し、3つ折り機にかけ、封詰め、切手貼り付けなど、手作業で対応していた従業員による内部作業のコストが多く発生) |
年間約700万円 (Netsuiteから楽楽明細に請求書•支払明細書などの帳票データを自動連携し、取引先に電子帳票を自動送付することで、従業員による印刷•封詰めなどの内部作業を大幅に削減) |
約80%削減 |
| 帳票電子化 (請求書・支払明細書など33種類のうち、 26種類を完全電子化・作成送付の自動化) |
手作業 (紙で作成•郵送、メール、FAX等) |
自動化 (全33種類の請求書•支払明細書などのフォームのうち、26種類を完全電子化•作成送付の自動化) |
約80%自動化 |
| 月次決算分析時間 (全社PLの定量・定性分析) |
月5~10時間 (各部門の担当者に主要な勘定科目の数値の増減をヒアリング) |
月2~3時間 (NetsuiteのPLのドリルダウン機能で、クリックのみで全社の勘定科目数値を、1つの仕訳単位までブレイクダウン可能に) |
約50〜70%削減 |
| 保守費用 | SAP保守費用 (SAPサポート+サードパーティーサポート) |
NetSuite保守費用(ベンチャーネット社のみ) | 約70%削減 |
さらに定性的な効果として、次のような業務改善に貢献しました。まずは実態会計への移行による経営判断の精度向上です。
「管理会計」から「実態会計」への転換を実現しました。(従来は、商品の仕入金額や減価償却費などを管理会計上の標準原価で見ていたが、Netsuite導入後は、実際の費用で各種損益レポートに財務数値を反映)
これにより、「実際の財務数値ベース」で経営判断ができるようになりました。さらに統合マスター管理による業務効率化です。
従前は1つのマスターが20~30のテーブルに分散し、複数画面を遷移して情報確認する必要がありました。これに対してOracle NetSuiteでは、統合マスターにより1画面で仕入先・在庫・価格を一覧確認できるようになり、業務効率が格段に向上しました。
今後は、Oracle NetSuiteに蓄積されたデータをAIと連携させ、データドリブン経営を一段と加速させる計画です。
NetSuite導入をどうやって成功に導いたのか 1年9ヶ月に及ぶプロジェクトの軌跡

- ーー株式会社アペックスにおいて、今回の基幹システム導入プロジェクトはどんな位置づけだったのでしょうか。
- 岩月氏 率直なところ、当初は「守り(統制)」の観点が強かったです。
「DX推進」といった積極的な動機ではなく、「現行SAPバージョンの保守サポート終了により、2026年以降に向けて対応を迫られた」という受け身的な背景がありました。いわゆる「SAP 2025年問題」への対応が、私に与えられたミッションです。
- ーーPMに着任した当初、どんな課題に直面しましたか。
- 岩月氏 既存の基幹システムの全体像を、誰一人として理解している人がいないことが最大の課題でした。弊社には約1,500人の従業員がいるとはいえ、27年も前に導入したSAP R/3を基盤とするシステムの中身を、現役世代の従業員がすべて理解していることは現実的に不可能です。各自の担当業務に関する断片的な理解しか持ち合わせていないのは、ある意味で当然のことでもありました。
システム全体図や業務フロー図、システム一覧などの基本的な資料も整備されておらず、仮に残っていたとしても、その内容が現状のシステムとどこまで合致するのか不明です。したがって関係者の断片的な知識をヒアリングしながら、ゼロベースで資料を作成する必要がありました。
- ーー新たな基幹システムの基盤として Oracle NetSuite を選定した、決め手となったポイントを教えてください。
- 岩月氏 SAP R/3の機能モジュールごとに、中堅企業向けの領域特化型パッケージシステムを組み合わせる方針を立てました。
合計12社のパッケージシステム会社に問い合わせ、見積書を取得し、検討を行いました。これらの候補の中で、Oracle NetSuiteは「購買・販売・会計」など複数の機能モジュールをまとめて有していることを知りました。その上で、データ連携箇所を大幅に削減できること、ユーザーインターフェースの直感的な見やすさなどが決め手となり、Oracle NetSuiteの導入を決定しました。
- ーープロジェクト最大の難所はどこでしたか。
- 岩月氏 マスター作成プロセスです。「そもそもSAP R/3のマスターは全部で何種類あるのか分からない」という状態から、理屈で考えて必要なマスターとなるデータ項目をリストアップしていきました。
業務部門と情報システム部門から総勢15名を集めた1~2時間の打ち合わせを延べ100回以上実施し、6ヶ月以上の期間を費やしました。この結果、最終的に22種類、約400データ項目に及ぶマスターを整理•完成させました。

- ーー徹底して精度の高いマスター作成にコミットしたことは、どのような効果につながりましたか。
- 岩月氏 序盤で「マスターの全体像の整理」を妥協なく高い精度でやり切ったことが、プロジェクト後半に活きました。データ連携開発・単体テスト・結合テスト・UATといったフェーズで、ほとんどエラーを出さずに済みました。
- ーープロジェクト途中で、導入パートナーをベンチャーネットに交代したと伺っていますが、この理由を教えてください。
- 岩月氏 もともと選定していた導入パートナーに委託していた作業の進捗状況と、弊社側で進めている情報整理や仕様策定のスピードに非常に大きな乖離が生じていました。両社の進捗が噛み合わないことには、プロジェクト全体のスケジュールが遅滞してしまうおそれがあります。
そこでなぜ予定どおりに作業が進まないのか調べてみたところ、このパートナー側のPMの稼働工数が25%ほどであることが判明しました。
改善を求めたのですが、期待した返答は得られず、パートナーの交代に踏み切った次第です。
そして、稼働工数の確保を絶対条件として導入パートナーの再選定にあたったところ、私たちの要求に応えてくれたのが、ベンチャーネットだったのです。結果的にこのパートナー交代が奏功し、プロジェクトの進行スピードはギアが一段上がりました。
プロジェクト成功を導いた主要メンバーの活躍と貢献
【情報システム部】
部長 吉田 真幸氏:部門管理、スケジュール管理
基幹システム導入期間は2年近くに及びましたが、情報システム部のメンバー全員が計画的にプロジェクトを遂行するため尽力してきました。私も管理責任者として、進捗状況を適切にモニタリングし、必要に応じて助言を行うなど、スケジュール遵守を徹底しました。導入パートナーであるベンチャーネット様にも多大なサポートをいただいた結果、予定どおり2025年 10月1日に新システムをカットオーバーできたことは、情報システム部のメンバー全員の誇りであり、組織全体の成長につながったと考えています。
山田 樹氏:データ移行リーダー
Oracle NetSuiteへのデータ移行を進めるためには、現行のSAP R/3システムの詳細な分析が不可欠です。しかし、同システムは私が生まれる前に導入されたものであり、当時の設計者はすでに退職しています。当時の設計書は一部残存していたものの、内容が不十分で、現在では実現困難な要件も多くありました。そこでシステムに精通した複数のメンバーと連携し、既存のプログラムから直接データ構造を解析し、移行に必要なデータ抽出•加工を行うという方法を取りました。今後のOracle NetSuite活用に向けては、業務マニュアルや設計書を体系的に整備し、次世代にも円滑に業務を引き継ぐ体制を構築していきます。
山田 洋久氏:アドオン開発リーダー
弊社が自社開発した自販機の販売管理•自販機本体管理のシステムである「WINGS」とOracle NetSuite間の双方向のデータ連携を担うアドオンを主に開発しました。ベンチャーネットが作成した仕様書に基づいて作業を進めたのですが、途中で発生した不明点の確認なども非常にスムーズに対応をいただき、おかげで思った以上のペースで開発が進んだと感じています。最も苦労したのは大量データの処理でしたが、それでもテスト段階で目標時間をクリアできることを確認し、そのまま本番環境に導入することができました。
菊地 康人氏:部門マスター・アカウント管理
部門マスターの作成•登録およびプロジェクトメンバーのアカウント管理を担当させていただきました。新基幹システムが運用を開始した以降は、エンドユーザーとして仕訳帳や未払金の入力業務などを行っています。SAP R/3からOracle NetSuiteへの切り替えに伴い新たに習得すべき事項が多く不安もありましたが、実際に操作したところOracle NetSuiteは直感的でとても使いやすいと感じています。現時点ではまだ一部の機能しか利用できていませんが、今後も積極的に学びながら業務効率の向上に努める所存です。
玉井 綾美氏:楽楽明細連携・RPA担当
私がプロジェクトに参加したのはほぼ最終段階でしたが、主にOracle NetSuiteと楽楽明細との間のデータ連携および帳票発行プロセスを連携する部分を開発しました。情報システム部では、支社ごとに明細書を作成して印刷し、仕分け、発送する作業を担っています。新基幹システムが稼働を開始した現在は、月次で発生するこの業務が自動化され、手作業はなくなりました。結果として、業務効率を大幅に改善するとともに、ヒューマンエラーをなくすことで信頼性も向上しています。
【商品調達部】
勝 友恵氏:リーダー、在庫アイテムマスター担当

今回のプロジェクトを通じて個人的に得た最も大きな収穫は、これまでの業務内容を整理し、「なぜこの仕事を行っているのか」と考え直したことです。以前は与えられた業務をそのままこなしていましたが、業務をシンプルに捉えて改善する発想が身についた点が、自分自身の新しい発見でした。
Oracle NetSuiteについては、自分の手を加えなくても思い描いた資料が 出せるのが本当に素晴らしいです。従前は複数画面を遷移して情報を確 認していましたが、現在は同一画面で仕入先•在庫•価格を一覧確認でき、業務効率が格段に向上しました。今後はAIの導入によって、さらに明るい未来が開けるという期待があり、商品調達などの業務にも活用を広げていく可能性があると感じています。
木崎 智津子氏:業務フロー整理
従来は多くの業務をアドオンで実装していたため、そのプログラムを分解し業務プロセスを再整理する作業は困難が伴いました。しかし、新基幹システムはシンプルな設計を徹底しており、初めて実行した請求書の月次処理でもその利便性を実感できました。これまでは取引先ごと個別にメール送付していましたが、現在は楽楽明細との連携によって、ファイルをドラッグ&ドロップするだけで一括処理が可能となり、業務改善が図られています。今後もOracle NetSuiteとの統合活用を進めることで、自社に最適な業務プロセスを確立し、一層使い勝手の良いシステムに発展できると考えています。

【業務企画部】
部長 逆井 慎太郎氏:予算編成・損益管理

新基幹システムの導入によって大きく変化した点として挙げられるのは、勘定科目や会計の考え方そのものが大きく刷新され、管理会計から実態 会計へ近づいていることです。こうした変化により、物事の本質的な姿がより明らかになると感じています。従来は誤ったデータを基に判断してしまうケースもありましたが、その問題が解消されたことで、経営陣のより正確な意思決定ができるようになると思います。
三宅 美樹氏:楽楽明細導入リーダー

拠点の事務支援や業務改善に取り組み、最近は帳票管理も担当していますが、新基幹システムの導入を機に、請求書•支払明細書•商標などの紙 書類が電子化され、業務効率化が進みました。商品調達部•機材調達部•財務経理部の業務も対象となり、私自身はオブザーバーとしてプロジェクトに参加しましたが、導入途中で楽楽明細の導入にあたり、全国80拠点への展開をリードしました。Oracle NetSuiteとの連携によって、大幅なコスト削減とともに、事務職や営業担当者の作業負担にも貢献できました。
【財務経理部】
永山 涼子氏:リーダー、勘定科目マスター担当
私の業務は主に棚卸資産管理に関わるもので、新基幹システムの導入後は全商品がアイテム単位で一元的に管理されるようになりました。これにより、従来手作業で実施していた外部倉庫商品の再評価等の月次・四半期業務が不要となり、業務効率の向上を実感しております。また、「まとめ入金登録」や「売掛金勘定の区分」といった従来整備が不十分だった運用面についても、Oracle NetSuite上で正確な設定が求められるため課題が可視化され、結果として運用体制の適正化が図られている点を高く評価しています。
【機材調達部】
山瀬 高広氏:リーダー、業務フロー整理
新基幹システムの導入後、機材調達部の業務では社内メールを用いて Excelの添付ファイルでやり取りしていた購買依頼について、転記作業が不要となり、業務効率化につながりました。一方、部品センター業務では、従来はアドオンによって自動化されていた部分がOracle NetSuiteの標準機能に置き換わったことからデータの加工が必要となり、以前より手間を要している側面もあります。この点は今後の改善点と考えています。
【導入パートナー;株式会社ベンチャーネット】
持田 卓臣氏:代表取締役

新基幹システムの導入プロジェクトは一通り完了しましたが、活用につい てはこれからが本番です。十分に整備された高品質なデータがOracle NetSuite上に蓄積されていくに従い、3年の歳月が経過した時点では、競 合他社に対する優位性は指数関数的に拡大していくことが予想されます。 AI技術の導入によって、その差はさらに急速に広がります。正確なデータ を効率的に収集•管理できる基盤を持ち、AI連携が可能な統合型経営システムを構築する企業こそが、業界の覇者になると私たちは考えています。
篠原 礼樹氏:プロジェクトマネージャー
今回の新基幹システム導入プロジェクトで、あらためて重要性を実感したのは、「プロジェクトに対する関係者全員の共通認識」です。アペックス様が弊社との共同プロジェクトと位置付け、役割分担とタスク管理をしっかり行っていただいたことで、非常にスムーズに進めることができたと実感して います。複雑性の高い課題を扱う場面も多くありましたが、そのたびに弊 社からの提案を導入のプロフェッショナルの見解と受け止めていただき、信頼関係を醸成しながら進められたことが、オンスケジュールでリリース できた大きな要因だったと感じています。今後に向けてもOracle NetSuiteの活用範囲をさらに広げ、スピード感のある経営判断にまでつなげられるように、運用・保守でもご支援を続けさせていただければと考えています。
筒井 のぞ美氏:コンサルタント
今回のプロジェクトの成功要因は、3点あると考えています。1つ目は、岩月様のリーダーシップです。覚悟を持って、時には厳しく、常にアペックスの未来を考えて動かれていました。2つ目は、アペックスの各部門のリーダーの皆様の貢献です。積極的にプロジェクトに参加し、それぞれの専門分野の高い能力を発揮してくださいました。そして3つ目が、Oracle NetSuiteというプラットフォームの優秀さです。シンプルでありながら強力な機能を備えています。ドリルダウン機能や統合マスターをはじめ、クラウドネイティブな機能が業務改革を後押ししました。

【プロジェクトマネージャー】
岩月 大器氏

今回の新基幹システム導入プロジェクトをPMとして主導するにあたり、次の3つの原則を守ってきました。
原則1は、コミュニケーションコストの最小化です。システム導入プロジェクト、とりわけ規模が大きく関係者が多い場合には、プロジェクトの成否は、最終的にコミュニケーション効率の問題に収斂すると考えております。し たがって、限られたプロジェクト期間において膨大なコミュニケーション量を管理可能な水準まで最適化/最小化することが、円滑なシステム導入プロセスの成否を左右すると考えられます。

原則2は、リーダーの生産性重視です。会議やメールでは、「一人の送り手が、多くの受け手に情報を伝える」コミュニケーションが多く見られます。 例えばWeb会議で画面を共有しながら議論を進める場合、その役割はリーダーが担います。リーダーのPC操作力やタイピングスピード、議論の進行や論点・結論の言語化能力が低いと、その場にいる全員の時間効率が下がってしまいます。つまり、リーダーの生産性がそのままチーム全体の生産性に直結します。そこで今回のプロジェクトでは、従来のような役職に基づく割り当てではなく「ITシステム導入において特に重要な能力である、リーダーシップ・言語化能力・作業スピードといった観点から最も優れた能力を持つ人にリーダーをお願いする」という方針で各部門から適任者を抜擢しました。そうした背景・プロセスを踏まえて決定された、各領域ごとのリーダーには、安心して権限移譲をすることができ、結果としてプロジェクトの推進スピードを向上させることができました。
原則3は、周囲に対して感謝の気持ちを伝えることです。本プロジェクトは、各部門のエース級が参画しており、元々仕事に対するモチベーションが高い方が多かったです。その上で、プロジェクトの複雑性や緊急度も相まって、終盤ではかなり高負荷な状況が続きましたが、そこでもリーダー・メンバーの皆さんにはハイパフォーマンスを続けていただきました。今回のような大規模・複雑プロジェクトは、1人だけが頑張って何とかなるような仕事ではなく、チームで一丸となって取り組む必要があります。マスタや業務フローの作成など、地味で目立たないが正確さ・緻密さが要求される重要な仕事を各プロジェクトメンバーの皆さんが丁寧に進めて下さりました。大きな成果が出る前の、そういった途中プロセスや仕事への取組み姿勢に対しても、折に触れて全員宛のメールで具体的な称賛を送り、感謝や敬意を示すことを心掛けておりました。会社では頻繁に褒められたり感謝されたりする機会は少なく、多くの人材が「報われた」と感じるのは昇進や賞与など特別な時に限られるのではないでしょうか。私自身にプロジェクトメンバーに対する人事権はありませんが、称賛や感謝を言葉で伝えることはできます。こうした日々の感謝や配慮も、長丁場のITシステム導入プロジェクトにおいて、各プロジェクトメンバーが働く上での根本的なモチベーションになると考えていますし、プロジェクトの成功に欠かせない要素だと考えております。
また今回、途中からアペックスの新基幹システム導入プロジェクト支援のためご参画頂いたベンチャーネット様は、アペックスにとってまさに救世主であり、ベンチャーネット様の参画後に、一気にこのプロジェクトが「勝ち戦」に変わりました。社内が一丸となることの重要性に加えて、「強力なNetsuite導入パートナーの存在」という、「勝てる座組•プロジェクト体制」がプロジェクト成功の最大の要因だと考えております。アペックスの窮地を救ってくださったベンチャーネット様には感謝してもしきれません。

【経営者】
石原 豊史氏:代表取締役社長 最高開発責任者 石原 豊史
27年間運用したSAPからの移行は、想定を上回る困難を極めるプロジェクトでした。
このアペックスの発展に必須であるプロジェクトを、予定通りの稼働を実現したプロジェクトチームの奮闘に深く敬意を表します。
私は長年、商品や自販機の開発という「モノづくり」の現場に身を置いてきましたが、良い商品をお届けするためには、それを支える社内業務の基盤も大切だと痛感しています。
NetSuite導入により、現場の事務負担が大幅に軽減され、社員がより創造的な業務に向き合える環境が整いました。
今回の基幹システム刷新では、帳票作成•送付にかかるコストの大幅な削減など、目に見える大きな成果が出ました。当社のような自動販売機オペレーターにとって、Netsuiteの導入によりシステム基盤が整ったことで生まれた業務の負荷軽減や効率化は、今後、さらなる「最高の一杯」の開発や、お客様へのサービス向上へと還元していく原動力となります。今後のNetsuiteのさらなる活用とアペックスのビジネスのさらなる繁栄に大いに期待しております。

