その数字を出すのに、あちこち探していませんか
「先月の利益、すぐ出ますか」。
そう聞かれて、即答できる中小企業は多くありません。
売上は販売ソフト。在庫は別のシステム。原価は経理のExcel。
ひとつの数字を出すのに、あちこちを開いて、つなぎ合わせる。
担当者の頭の中にしか、全体像がない。そんな会社も少なくないはずです。
データが、社内のあちこちに散らばっている。
今日お話しするのは、この「散らばり」とどう向き合うか、という話です。
いま話題の「データファブリック」とは何か
散らばったデータを、ひとつにまとめたい。
このニーズに応える新しい考え方として、いま注目されているのが「データファブリック」です。
データファブリックとは、社内外に散らばったデータを、移動させずに、仮想的につないで扱う仕組みのことです。
ファブリックは「布」という意味です。
あちこちにあるデータを、一枚の布のように覆ってつなぎ、どこにあっても同じように使えるようにする。そんなイメージです。
データを一か所に集め直すのではなく、置いたまま、つなぐ。
ここがポイントです。大企業のIT分野で、ここ数年よく聞かれるようになった言葉です。
でも、それは「大企業の事情」から生まれた
ではなぜ、大企業はこの仕組みを必要とするのでしょうか。
理由は、これまでの歴史にあります。
大企業は長年、部門ごと・拠点ごとに、別々のシステムを導入してきました。
その結果、社内には数えきれないほどのシステムが乱立しています。
しかも拠点は国内外に分散し、データの形式もバラバラです。
ここまで散らかると、いまさら全部を一か所に集め直すのは、現実的ではありません。
時間も費用も、膨大にかかってしまうからです。
だから「移さずに、つなぐ」というデータファブリックの発想が要るのです。
言い換えれば、これは「散らかりすぎた後で、なんとか繕うための技術」です。
中小企業の前提は、ここが違います。
システムの数は、まだ数えるほど。拠点も限られています。
つまり、大企業ほど散らかりきってはいないのです。
中小の現実解は「散らかす前に、一つにまとめる」
ここに、中小企業の勝ち筋があります。
中小企業の強みは、身軽さです。
規模が小さいうちなら、最初から一つの箱にデータを寄せることができます。
その「一つの箱」が、クラウドERPです。
クラウドERPとは、販売・在庫・会計などの業務を、ひとつのデータベースで扱う基幹システムのことです。
ここに寄せておけば、データはそもそも散らかりません。
散らかってから繕うより、散らかす前にまとめる方が、ずっと簡単で、費用も抑えられます。
大企業が大金をかけて取り戻そうとしている「データの一元化」を、中小企業は最初から手に入れられる、ということです。
図:大企業は散らかった後でデータファブリックで繕う。中小企業は、散らかす前に単一のクラウドERPへまとめられる。
そして、この「一つにまとまったデータ」こそ、経営を見える化し、わかる化し、儲かる化していく土台になります。
ひとつ、付け加えておきたいことがあります。
データを整えるのも、その数字を見て判断するのも、最後は人です。
仕組みやAIは、それを支える側に回ります。何を大事にして決めるかは、社長の手に残ります。
よくある誤解に答えます
Q. うちもデータファブリックを入れるべきでしょうか。
多くの中小企業には、まだ必要ありません。
データファブリックは、システムが散らかりすぎた大企業のための繕い策です。
それより先に、自社のデータを一つの箱(クラウドERP)にまとめる方が、現実的で効果も早く出ます。
Q. ERP・データウェアハウス・データレイクとは何が違うのですか。
かんたんに整理します。
ERPは、業務をひとつのデータベースで回す「箱」です。
データウェアハウスやデータレイクは、分析のためにデータをためておく「倉庫」です。
データファブリックは、それらが散らばったときに、移さずつなぐ「層」です。
中小企業がまず手をつけるべきは、いちばん土台にあるERP(単一DB)です。
Q. まず、何から手をつければいいですか。
いきなりシステムを選ぶ前に、やることがあります。
自社のデータが「いまどこに、いくつ散らばっているか」を書き出すことです。
その全体像が見えて初めて、どれを一つの箱に寄せるかを決められます。
まとめ:まずは「1枚にまとめる」から
流行りの言葉に飛びつく前に、まず確かめたいことがあります。
自社のデータは、いまどこに、どう散らばっているのか。
そして、毎日見たい数字を「1枚」にまとめるとしたら、何が要るのか。
そこから始めるのが、中小企業にとっていちばん確実な一歩です。
具体的な始め方は「バラバラのデータを、毎朝1枚に」の記事でくわしくお伝えしています。
データを一つの箱に寄せる全体像は、単一DBの記事や、全体最適の記事をご覧ください。
月次決算を早める話も、あわせて読んでいただけます。
とはいえ、本当の勝負どころは、ERPという箱を入れること自体ではありません。
「どの業務を、どの順でつなぐか」という設計のほうです。
ここを誤ると、せっかくまとめても「使えない箱」になりかねません。
自社にとって何が散らかりで、どこからまとめるべきか。これを一人で見極めるのは、なかなか難しいものです。
ベンチャーネットは、その整理と設計を、一緒に考える伴走者でありたいと思っています。
まずは、自社のデータがどこに散らばっているか。そこを書き出すところから、始めてみてください。

