「NetSuiteの勢いが落ちていると聞いた。うちは大丈夫か」
2026年に入り、こうした相談が、NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットに届くようになりました。
海外のコンサルタント向け掲示板でも、似た投稿が話題になっています。
「顧客の価格への抵抗が強まり、中堅企業は安いERPへ、大企業はOracle Fusionへ流れている」という内容です。
NetSuiteの成長が鈍っているのは、事実です。
ただ、原因を「値段が高いから」と読むのは正確ではありません。
起きているのは、ERPに求められる価値が「システムの中」から「システムの外にあるAI」へ移り始めた、という構造の変化です。
NetSuite×AIの時代に、経営者が投資すべきなのは「見える化」ではありません。
何が問題かを決める「わかる化」と、数字が動くまでやり切る「儲かる化」です。
では、なぜ見える化にはもうお金をかけなくてよいのか。
この記事で分かること
- NetSuiteの成長鈍化を、Oracleの決算の数字で確かめられる
- 鈍化の本当の原因が「値段」ではなく「価値の移動」であること
- 見える化・わかる化・儲かる化の3段階で、AI時代に投資すべき場所
- NetSuite×AIの投資でよくある失敗3つと、その避け方
- 自社が「記録・判断・実行」のどの段階にいるかの自己診断
NetSuiteの成長は鈍っている|数字で確かめる
NetSuiteの売上の伸び率は、この1年でゆるやかに下がっています。
Oracleは、四半期ごとにNetSuiteの売上を公表しています。
2025年9月発表の四半期(Oracle 2026年度第1四半期)は、NetSuite Cloud ERPの売上が10億ドルで、前年比16%増でした。
2026年3月発表の四半期は11億ドル、14%増です(為替の影響を除くと11%増)。
2026年9月10日の最新の決算では、Oracle自身がこう説明しています。
「NetSuiteは前年度に意思決定サイクルの長期化があり、成長率は他のクラウド製品より少し低い」。
同じ四半期のクラウドアプリケーション全体は、10%増でした。
| 発表時期 | NetSuite売上 | 前年比(ドル建て) |
|---|---|---|
| 2025年9月 | 10億ドル | +16% |
| 2026年3月 | 11億ドル | +14%(為替除く+11%) |
| 2026年9月 | 個別開示なし | クラウドアプリ全体+10%。NetSuiteは「他より低い」と説明 |
出典:Oracle投資家向け発表(2025年9月・2026年3月・2026年9月)
目を向けたいのは、Oracle全体との対比です。
2026年9月の決算で、クラウド基盤(IaaS)の売上は121%増の約74億ドルに達しました。受注残は6,640億ドルです。
Oracleの主役は、AI向けのデータセンター事業に移りました。
NetSuiteは年間40億ドルを超える大きな事業ですが、Oracleの中では「急成長の事業」から「安定の事業」へ、置かれる位置が変わっています。
それでも、これは「NetSuiteが危ない」という意味ではありません。
NetSuiteは、世界220地域・44,000社以上が使い、190通貨・27言語に対応するクラウドERPです。
使う会社がこれだけあれば、ノウハウも人材も連携の道具も、市場に豊富にあります。
成長率の鈍化と、製品としての信頼性は別の話です。
鈍化の原因は「値段」ではない|価値がERPの外へ移った
海外のコンサルタントの投稿は、鈍化の理由を「ライセンスが高いから」としています。
現場の実感としては正しいのですが、経営者が見るべき原因は、もう一段深いところにあります。
3つの変化を先に図にすると、次のとおりです。
「見える化」の価値が下がった
かつてERPを入れる最大の理由は、「経営の数字がリアルタイムに見えること」でした。
売上・在庫・原価が1つの画面で見える。それだけで、大きな投資が正当化されました。
2026年のいま、この価値は急速に下がっています。理由は生成AIです。
データさえ整っていれば、ダッシュボードや分析のレポートはAIが数分で作ります。
「見える化」は商品ではなく、前提の条件になりました。
値段が高く感じられるのは、NetSuiteが値上げしたからというより、払ってきた対価の一部(見える化)が無料に近づいたからです。
「ERPを買わない」選択肢が現実になった
もう1つの変化は、中堅企業に「ERPを買わない」という選択肢が生まれたことです。
オープンソースのOdoo。複数のSaaSをつなぐ方法。AIを使って、要る業務システムを自社で作る方法。
どれも数年前なら現実的ではありませんでしたが、いまは検討の対象に入ります。
AI時代に何が消え、何が残るかは、「消えるシステム」と「残るシステム」が参考になります。
ベンチャーネットは、NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。
姉妹サイトとしてOdooの教科書も運営しています。
製品を売るためではありません。選択肢が増えた時代に、製品ありきではない立場で相談に乗るためです。
その立場から見ても、中堅企業向けERPとしてのNetSuiteの完成度は変わっていません。
変わったのは、「NetSuiteだけで完結する時代ではなくなった」という点です。
導入の工数そのものが縮んでいる
3つ目は、あまり語られない変化です。
生成AIによって、設定・データ移行・テスト・連携開発といった導入作業の工数が縮み始めています。
現場のコンサルタントが「値下げの圧力」と感じているものの一部は、実はこれです。
同じ成果を、以前より少ない工数で出せるようになった。
その分、従来の「人月」でお金をいただく形が合わなくなってきています。
経営者にとっては朗報です。
ただし、「工数が減った分、何にお金を払うのか」を考え直す必要があります。
Oracle自身の答え|NetSuiteを「AIの土台」に置き直す
Oracleは、この変化にどう応えているのか。
2026年9月の決算で語られた2つの動きに、その答えが出ています。
1つ目は「NetSuite Next」です。
中堅企業向けのエージェント型ERP(AIが業務の一部を自律的に進めるERP)として、一般提供が始まりました。
AIエージェントが業務を進め、人が判断と承認をする方向です。
2つ目は「NetSuite AI Connector Service」です。
NetSuiteのデータを、ChatGPTやClaudeなど利用者が選んだAIアシスタントに安全につなぐ仕組みです。
Oracleによれば、すでに1万社以上が使い、NetSuiteの歴史で最も速く普及した機能の1つです。
仕組みと始め方は、NetSuite AI Connector Serviceの解説にまとめています。
🌏 日本での提供状況:AI Connector Serviceは、日本の企業でも利用が始まっています。NetSuite Nextは北米から順に提供され、日本での提供時期は2026年9月時点で公表されていません。導入の時点で、最新の状況をご確認ください。
2つに共通するのは、「NetSuiteの中でAIを完結させようとしていない」ことです。
NetSuiteは信頼できるデータの置き場所で、そこに自社で選んだAIをつなぐ(Bring Your Own AI)ことで価値を出す。
純正のAIと外部のAIの使い分けは、組込型AIと外部AIの比較で扱っています。
経営者にとって、これはいちばん大きなメッセージです。
NetSuiteは「AIで経営を加速するための土台」として選ばれ続ける、という宣言だからです。
見える化・わかる化・儲かる化|AI時代に投資の重みはこう変わる
ベンチャーネットは創業以来、ERP導入の目的を「見える化・わかる化・儲かる化」の3段階で説明してきました。
AIの時代になり、3段階の重みは大きく変わりました。
AIを両利き経営のエンジンに据える考え方は、AIクラウドERPとはをご覧ください。
| 段階 | 何をすること | AIが担える度合い | 経営者が投資すべきか |
|---|---|---|---|
| 見える化 | 数字を1つの場所で見られる状態にする | 高い(ダッシュボード・分析はAIが作る) | データを整える最低限だけ。人手をかけない |
| わかる化 | 何が問題で、どこから手をつけるかを決める | 中くらい(説明は得意、優先順位づけは苦手) | 投資する。中立の判断が価値になる |
| 儲かる化 | 業務が変わり、数字が動くところまでやり切る | 低い(実行の一部は担えるが、責任は負えない) | 最も投資する。結果に責任を持つ相手を選ぶ |
見える化:AIに任せて、ほぼ無料にする
見える化は、AIが担う領域になりました。ここに人手と費用をかけるべきではありません。
NetSuiteのデータを、AI Connector Serviceでつないだとします。
「先月の粗利が落ちた理由を製品別に教えて」と聞けば、その場で答えが返ってきます。
見える化に投資するとしたら、「AIがすぐ読める状態にデータを整えておくこと」だけです。
販売・在庫・会計が1つのデータベースにある状態の価値は、「一冊の帳簿」の記事で説明しています。
わかる化:中立の判断が価値になる
数字が見えても、「何が問題で、どこから手をつけるか」は、経営者1人では決めきれません。
ここで要るのは、製品や自社の都合ではなく、経営の側に立った判断です。
AIは数字を説明できます。
けれども、その会社の事情、業界の慣行、社員の温度感を踏まえた優先順位づけは、まだ人の仕事です。
わかる化は、これからも経営者がお金を払う価値のある領域です。
儲かる化:結果に責任を持つ
経営者が最後に求めるのは、儲かる化です。
導入して終わりではなく、業務が変わり、数字が動くところまで。
正直に言えば、この責任を負えるパートナーは、日本の中堅ERPの市場に多くありません。
「導入プロジェクトの完了」を成果としてきた業界の慣行が、それを難しくしています。
最適化の効く領域に集中して投資する考え方は、価値創造経営の第一歩で扱っています。
NetSuite×AIの投資でよくある失敗3つ
相談の場で繰り返し見る失敗が、3つあります。
どれも、先に知っていれば避けられます。
見える化にもう一度投資してしまう
現象:AI活用の第一歩として、ダッシュボードやレポートの整備に予算と人手をかける。
構造の原因:ERP導入のときの成功体験が「数字が見えた」ことだったため、AI時代でも同じ場所に投資してしまう。ダッシュボードはAIが作る側に回っており、そこにかけた費用は回収しにくい。
避け方:見える化は「AIが読めるデータの状態」を整えるところまでに絞る。予算の重心は、わかる化(優先順位の判断)と儲かる化(業務を変える実行)に置く。
記録が散らばったまま、AIを入れてしまう
現象:ChatGPTやClaudeを契約し、社員に使わせる。けれども「うちの数字」については何も答えられない。
構造の原因:AIが学んでいるのは世の中の平均で、自社の事実ではない。売上や在庫の記録がExcelや複数のシステムに散っていると、AIは照合も集計もできない。順序は「記録が先、実行が後」。この順序の考え方は、ERPは記録し、人は判断し、AIは実行するで述べています。
避け方:AIを入れる前に、記録の一元化を終える。NetSuiteのような単一のデータベースのERPが「AIの土台」と呼ばれるのは、この順序を満たせるからです。
「導入完了」をゴールにしてしまう
現象:AI連携の設定が終わり、デモでは動いた。けれども3か月後、誰も使っていない。
構造の原因:ゴールが「動くこと」に置かれている。「どの数字を、誰が、どの会議で、どう使うか」が業務に組み込まれず、検証(PoC)で止まる。PoCで止まる構造は、なぜAI導入はPoC止まりで終わるのかで分析しています。
避け方:最初から「効果の測定」までを計画に入れる。導入の完了ではなく、「経営会議の議題が変わった」「発注の判断が速くなった」といった業務の変化をゴールに置く。
ベンチャーネットならこう見る|FDE型伴走と、知見を資産にするバンドル
儲かる化に責任を持つために、ベンチャーネットは2つの仕組みを整えています。
2つの仕組みのつながりを図にすると、次のとおりです。
FDE型伴走支援|「課題定義→実装→定着→効果測定」を一貫して担う
FDE(Forward Deployed Engineer)は、技術者が顧客の現場に入って伴走するモデルです。
課題定義→実装→定着→効果測定までを、一貫して担います。
米国のAI企業が実践して注目された考え方ですが、本質は「現場に人を送ること」ではありません。
現場で解いた課題を知見として溜め、次の顧客には、より少ない工数で同じ成果を届ける。
人を売るFDEではなく、知見を溜めるFDEです。
FDEの定義と、SES・コンサルとの違いは、FDEとは何かで説明しています。
NetSuiteとAIの組み合わせは、この進め方に向いています。
AI Connector Serviceをつないだだけでは、何も変わりません。
「どの数字を、誰が、どの会議で、どう使うか」まで業務に組み込んで、はじめて経営が加速します。
契約は、請負契約に対応しています(準委任も相談可)。
ベンチャーネットオリジナルバンドル
FDEで得た知見は、NetSuiteに足す部品として資産にしています。
日本の商習慣に要る機能、国内のSaaSとの連携、AIを使った業務の自動化。
これらを「ベンチャーネットオリジナルバンドル」として、NetSuiteに組み込む取り組みを進めています。
連携の設計・開発や、入金消込など足りない機能の開発は、ベンチャーネットの支援メニューとして提供しています。
NetSuiteは年2回アップデートされます。
バンドルの部品は、AIを使ったテストの自動化で、アップデートへの追随を続ける方針です。
費用の考え方は、シンプルにする方針です。
ベンチャーネットからNetSuiteのライセンスを購入したお客様には、バンドルを無償で提供します。
他社経由でNetSuiteを導入済みのお客様には、開発費用の保守という位置づけで、保守サポート契約の中で提供します。
NetSuiteのライセンス費用と、二重に費用をいただく形にはしません。
提供の範囲と時期は、相談の際に個別にご案内します。
| 比べる点 | 従来型の導入(工数で見積もる形) | FDE型伴走 | FDE型伴走+バンドル |
|---|---|---|---|
| ゴールの定義 | 本番稼働日 | 業務の変化・効果の測定 | 業務の変化・効果の測定 |
| 費用の重心 | 導入工数(人月) | 導入工数を縮め、定着・効果の測定へ | 導入工数をさらに縮める。部品は保守の中で提供 |
| 2社目以降の工数 | 毎回ほぼ同じ | 知見の再利用で減る | 部品の再利用でさらに減る |
| AIとの親和性 | 別に設計が要る | AI Connector Serviceを業務に組み込む設計まで担う | AI連携・自動化の部品を組み込み済み |
| 向いている企業 | 要件が固まり、社内に推進の体制がある | 社内にERP専任がいない中堅企業 | 国内SaaSとの連携や日本固有の要件が多い |
自己診断|あなたの会社は「記録・判断・実行」のどこにいるか
自社の現在地を確かめる表です。当てはまる行を1つ選んでください。
| 段階 | 当てはまる状態 | 今日できること1つ |
|---|---|---|
| 記録の前 | 売上・在庫・会計が別々のシステムやExcelにある | 「今月の粗利は」と聞かれて、誰が何分で答えられるかを測る |
| 記録はある | NetSuiteなどに一元化されているが、数字は月次で眺めるだけ | AI Connector Serviceで、経営会議の議題を1つAIに要約させてみる |
| 判断に使っている | 数字をもとに優先順位を決め、会議で議論している | 「判断の結果、何がどれだけ変わったか」を測る指標を1つ決める |
| 実行を任せ始めた | 照合や下書きなど、実行の一部をAIが担っている | 次にAIに渡す業務を1つ選び、承認の境界を決める |
段階が上がるほど、「何に投資すべきか」の答えは儲かる化に近づきます。
今日できることは、どの段階でも1つで足ります。
よくある質問
Q1. NetSuiteは高いと聞きますが、続ける価値はありますか
続ける価値はあります。ただし、「何に払っているか」は見直す価値があります。
見える化の対価は下がりましたが、記録が一元化されたデータベースの価値は、むしろ上がりました。AIの燃料はデータだからです。
NetSuiteの費用は、「AIの土台の費用」として捉え直すと判断しやすくなります。
導入費用には幅があります。
ベンチャーネットが支援したNetSuite導入の費用には、4つの事例があります。
小さいほうは3名程度・1.5か月で150万円程度、大きいほうは100名程度・1.5年で2億円程度(うち開発約7割)でした。
差を生むのは、機能範囲・開発(特に外部連携)・社内の体制・ユーザー数の4つです。
価格の目安と4つの事例は、NetSuiteの料金にまとめています。
Q2. Odooなど安いERPに乗り換えるべきでしょうか
乗り換え自体は否定しません。
ライセンス費用は下がります。
ただ、日本固有の要件(締め請求・インボイス制度・電子帳簿保存法など)が多い会社ほど、作り込みで総額の差は縮みます。
ベンチャーネットはOdooも扱っているため、どちらが合うかを製品ありきではなく判断できます。
比べる論点は、OdooとNetSuiteの比較をご覧ください。
Q3. AI Connector Serviceを入れると、何が変わりますか
「うちの数字」についてAIに聞ける状態になります。それだけでは、経営は変わりません。
変わるのは、その答えを「誰が、どの会議で、どう使うか」を業務に組み込んだ後です。
設定は短時間で終わります。時間をかける価値があるのは、定着の設計です。
Q4. バンドルの費用はどう考えればよいですか
ベンチャーネット経由でNetSuiteを購入した場合は無償です。他社経由で導入済みの場合は、保守サポート契約の中で提供します。
ライセンス費用との二重取りにはしません。
提供の範囲と時期は、個別にご案内します。
Q5. まだNetSuiteを使っていない会社でも相談できますか
できます。むしろ「記録の前」の段階からの相談のほうが、遠回りが少なくなります。
NetSuiteが合わない場合は、Odooやスクラッチ開発を含めて、製品ありきではない選択肢を提案します。
まとめ:NetSuiteを「AIの土台」として使い切る
NetSuiteの成長鈍化は事実です。
けれども、製品が弱くなったからではありません。ERPに期待される価値が、AIの側へ移ったからです。
Oracle自身も、NetSuiteをAIとつなぐ土台として位置づけ直しています。
- 見える化には、もう費用をかけない。AIが読めるデータの状態だけ整える
- わかる化には投資する。中立の判断が価値になる
- 儲かる化に最も投資する。結果に責任を持つ相手を選ぶ
経営者が決めるのは、「NetSuiteを続けるか、やめるか」ではありません。
「NetSuiteに溜まったデータとAIをつないで、わかる化・儲かる化まで進めるか」です。
まずは第7章の表で、自社の段階を1つ選ぶところから始めてください。
もう少し詳しく知りたい方へ
自社の「記録・判断・実行」の段階を、一度整理してみたい。
そう感じた方は、ご相談ください。製品ありきではない立場で、次の一手を一緒に考えます。
