資金繰りとは?将来の資金不足を防ぐ資金繰り表の作成・管理とNetSuite活用

「黒字なのに、なぜか手元にお金が残らない」。

そんな不安を感じたことはないでしょうか。利益が出ていても、現金が足りなくなれば、会社は立ち行かなくなります。これが「黒字倒産」です。

資金繰りとは、将来の資金の過不足を予測し、手元資金が不足しないように管理することを指します。過去の実績を見るだけでは足りません。大切なのは、これから先の資金を見通すことです。

本記事では、黒字倒産を防ぐ資金繰り表の作り方から、よくある失敗パターン、そしてNetSuiteを使った効率化・自社仕様化の方法までを、わかりやすく解説します。

目次

資金繰りとは?キャッシュフローとの違い

資金繰りとは、将来の資金の過不足を予測し、資金が不足しないよう管理することです。よく似た言葉に「キャッシュフロー」がありますが、両者は目的が異なります。

資金繰りは「これから先」を見るための考え方です。3か月後、半年後に、手元の現金が足りるかどうかを予測し、足りなくなる前に手を打ちます。

一方、キャッシュフロー(現金の流れ)は、主に「過去から現在まで」の現金の動きを把握するものです。決算書の一部であるキャッシュフロー計算書で示されます。

両者の違いを整理すると、次のようになります。

観点資金繰り表キャッシュフロー計算書
主な目的将来の資金過不足を予測し対策する過去〜現在の現金の動きを把握・分析する
時間軸未来志向(これから)過去志向(実績)
作成義務任意(経営管理のためのツール)上場企業等は決算書類として必要
主な使い手経営者・財務担当(資金ショート回避)経営者・投資家・金融機関(財務分析)
見る単位日次・月次など細かく通常は会計期間(年次・四半期)

資金繰り表とキャッシュフロー計算書は、対立するものではありません。実績を正しく把握するキャッシュフローと、将来を見通す資金繰り。この2つはお互いを補完する関係にあります。

過去から現在の現金の流れを把握する方法については、関連記事「キャッシュフローとは?黒字でも資金が尽きる理由と、NetSuiteで現金の流れを見える化する方法【2026年版】」もあわせてご覧ください。

なぜ資金繰り管理が重要なのか〜黒字倒産を防ぐ

資金繰り管理がなぜ重要なのか。理由は、企業の存続に直結するからです。

利益が出ていても、現金が尽きれば会社は倒れます。これが黒字倒産です。決して珍しいことではなく、倒産する企業の中には、帳簿上は黒字だった会社も少なくありません。

なぜ黒字でも倒産するのか。それは、利益と現金が同じタイミングで動かないからです。

  • 売上が立っても、入金は数か月先になることが多い
  • その間に、仕入れや給与の支払いは先に来る
  • 結果、帳簿は黒字でも、手元の現金が足りなくなる

特に近年は、物価高や仕入れコストの上昇が続いています。コストの増加を価格に転嫁しきれず、現金が回らなくなる企業も増えています。だからこそ、日々の資金管理が経営の安定を左右します。

資金繰りを管理することで、次のことが可能になります。

  • 黒字倒産という最悪の事態を回避できる
  • 収支のバランスを取り、計画的な経営ができる
  • 資金が不足する時期や原因を、早めに特定し対策できる

資金繰り管理は、守りの経営の土台です。

資金繰り表の作り方と主な項目

資金繰りを管理するには、資金繰り表の作成が欠かせません。資金繰り表とは、一定期間の収入と支出を予測し、資金の過不足を把握するための表です。

ポイントは、過去の記録ではなく「これから先の予測」を書くことです。今後の入金予定と支払予定を並べ、月末にいくら現金が残るかを見通します。

資金繰り表は、大きく次の区分で整理します。

  • 営業収支:本業による現金の出入り(売上の入金、仕入・経費の支払いなど)
  • 財務収支:資金調達に関わる出入り(借入れ、返済など)
  • 経常外収支:設備投資や税金の支払いなど、本業以外の大きな出入り

これらを合計すると、その期間に現金がいくら増減するかがわかります。期首の現金残高にこの増減を足せば、期末にいくら残るかが見えてきます。

作成の手順は、次のように進めると整理しやすくなります。

  1. 期首の現金残高を確認する
  2. 今後の入金予定を、入金時期ごとに書き出す
  3. 今後の支払予定を、支払時期ごとに書き出す
  4. 差し引きで、各月末の資金残高を計算する
  5. 資金が不足しそうな月を見つけ、早めに対策を打つ

大切なのは、4と5です。資金繰り表は、作って終わりではありません。「いつ資金が足りなくなりそうか」を見つけ、手を打つために使う表です。

資金繰り管理でよくある失敗パターン

資金繰りは、やり方を少し間違えるだけで、足元をすくわれます。

ここでは、資金繰りでよくある4つの失敗パターンをお伝えします。NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットが、財務管理の現場で見てきたものです。

これは、NetSuiteを売り込みたいから書くのではありません。「資金が足りない」という事態を、一社でも避けてほしいから書いています。資金繰りの失敗は、事前に知っていれば防げるものがほとんどです。

失敗①:実績だけ見て、将来を予測しない

よくある現象

  • 月次の試算表は見るが、資金繰り表は作っていない
  • 資金の確認が「月末に通帳の残高を見る」だけになっている
  • 3か月先に、いくら現金が残るか読めていない

なぜ失敗するか

試算表や決算書は、あくまで「過去の実績」です。

過去を振り返るだけでは、将来の資金ショートは防げません。気づいたときには、支払いに間に合わない。これが資金繰りで最も多いつまずきです。

どう回避するか

3〜6か月先を見通す「資金繰り表」を持つことが第一歩です。

NetSuiteのようなシステムなら、受注や請求のデータをもとに、将来の入金・支払いの見通しを立てられます。過去ではなく、未来を見る習慣が資金繰りを安定させます。

失敗②:どんぶり勘定で、資金の出入りを把握しきれない

よくある現象

  • 売上は見ているが、入金のタイミングは見ていない
  • 売掛金・買掛金の「サイト(入金・支払までの期間)」の差を意識していない
  • 黒字なのに現金が足りない理由を、説明できない

なぜ失敗するか

利益と現金は、別物です。

売上が立っても、入金は数か月先。その間に支払いが先に来れば、黒字でも現金は尽きます。これが「黒字倒産」の正体です。

どう回避するか

「いつ・いくら」入って、「いつ・いくら」出ていくのか。入金・支払のタイミングまで含めて、資金を捉えることが大切です。

そのためには、売上・仕入・経費のデータが一か所に集まっていることが前提になります。データの一元化が、どんぶり勘定からの脱却につながります。

失敗③:部門・事業別に、資金を分解できない

よくある現象

  • 資金を「全社の合計」でしか見ていない
  • どの事業が資金を使っているのか、わからない
  • 投資の判断が、数字ではなく感覚になっている

なぜ失敗するか

全社の合計だけでは、「どこを絞り、どこに回すか」の判断ができません。

伸ばすべき事業に資金が回らず、止めるべき事業に資金が流れ続ける。こうした判断ミスは、合計値しか見ていないことが原因で起こります。

どう回避するか

部門別・プロジェクト別に、資金の流れを分解して見ることが重要です。

NetSuiteでは、部門・クラス・ロケーションといった分類で資金を分けて把握できます。どこにコストが集中しているかを正確につかむには、配賦の考え方も役立ちます。

失敗④:Excel運用が属人化し、更新が止まる

よくある現象

  • 資金繰り表を、特定の担当者しか触れない
  • 更新が手作業のため、つい後回しになる
  • 担当者が不在だと、どれが最新版かわからない

なぜ失敗するか

属人化した表は、いつか更新が止まります。

古い数字のまま経営判断をしてしまう。担当者が異動・退職すると、引き継ぎの段階で資金繰りの管理そのものが断絶する。Excel運用には、こうしたもろさがあります。

どう回避するか

業務データと連動し、自動で最新の数字に更新される仕組みが理想です。

属人化を外すことは、担当者を守ることでもあります。ベンチャーネットでは、こうした「仕組みで回す資金管理」への移行を、一緒に考えながら支援しています。

これら4つの失敗は、どれも「事前に知っていれば防げる」ものばかりです。

もし「うちもこのパターンに当てはまるかも」と感じた方がいれば、お気軽にご相談ください。御社にとって無理のない進め方を、一緒に考えさせてください。

NetSuiteで資金繰り管理を効率化する方法

クラウドERPであるNetSuiteを活用すると、資金繰り管理を効率化できます。NetSuiteは、会計・販売・在庫・購買などの業務データを1つのシステムで管理するため、資金の出入りを横断的に把握しやすいのが特長です。

NetSuiteの主な機能を、経営上の意味とあわせて整理すると次のようになります。

機能何ができるか経営上の意味
キャッシュフローレポート一定期間の現金の増減を自動で集計資金の現状を、手作業なしで把握できる
資金繰り表の自動集計営業・投資・財務の区分で現金の動きを算出表作成の手間が減り、最新の数字で判断できる
予測・シミュレーション実績と予測を比較し、将来の傾向を分析将来の資金不足を、早めに察知できる
部門・プロジェクト別の集計分類ごとに資金の流れを分解どこに資金が集中しているかが見える
会計データとの連動資金の動きが財務諸表に自動で反映二重入力がなくなり、数字のズレを防げる

これらに共通するのは、「手作業を減らし、最新の数字をいつでも見られる」という点です。

資金繰りの数字が常に最新で、誰でも同じ画面で確認できる。この状態が、先ほどの失敗パターン(属人化・どんぶり勘定)を防ぐ土台になります。

標準機能で足りるケース/自社仕様のカスタマイズが必要なケース

ここで、よくいただく質問にお答えします。「資金繰り表は、NetSuiteの標準機能だけで作れるのか」という点です。

結論から言うと、多くの企業は、まず標準機能から始めるのがおすすめです。

ベンチャーネットが大切にしているのは、「完璧を最初から目指すより、まず動かして磨いていく」という考え方です。最初から自社専用に作り込もうとすると、コストも期間もふくらみます。まずは標準機能で資金繰り管理を回し、運用しながら本当に必要な要件を見極める。この順序が、結果的に成功への近道になります。

その上で、どうしても自社固有の様式や要件が必要な場合には、カスタマイズという選択肢があります。NetSuiteは、自社に合わせた資金繰り表やレポートを構築することも可能です。

どちらが向いているかの目安を整理しました。

観点標準機能で足りるカスタマイズが活きる
資金繰り表の形式一般的な区分で足りる自社固有の区分・様式が必要
業務の特殊性標準的な商習慣で運用している特殊な入金条件・複雑な資金移動がある
既存の帳票標準レポートで代替できる既存の独自フォーマットを踏襲したい
まず取るべき一歩標準で運用を始める標準で始め、要件が固まってから相談する

大切なのは、いきなりカスタマイズに走らないことです。

まず標準で運用してみて、「ここだけはどうしても自社のやり方に合わせたい」という箇所が見えてきてから、カスタマイズを検討する。この進め方なら、無駄な投資を避けられます。

自社仕様の資金繰り表やレポートの構築をご検討の場合は、NetSuiteの開発・カスタマイズを支援する「NetSuiteリブートサービス」もご相談いただけます。

よくある質問(FAQ)

資金繰りとNetSuiteについて、よくいただく質問にお答えします。

Q1. 資金繰りとキャッシュフローは何が違うのですか?

資金繰りは「将来の資金を予測する」もの、キャッシュフローは「過去から現在の現金の流れを把握する」ものです。

資金繰りは、これから先に資金が足りるかどうかを見通し、不足を未然に防ぐために使います。一方、キャッシュフローは実績としての現金の動きを示します。将来を見る資金繰りと、実績を見るキャッシュフロー。両方を押さえることで、守りと分析の両面から経営を支えられます。

Q2. 黒字なのに資金が足りなくなるのはなぜですか?

利益と現金が、同じタイミングで動かないからです。

売上が立っても、実際の入金は数か月先になることが多くあります。その間に仕入れや給与の支払いが先に来ると、帳簿は黒字でも手元の現金が尽きてしまいます。これが黒字倒産です。入金と支払のタイミングを管理することが、回避の鍵になります。

Q3. 資金繰り表はExcelとNetSuiteのどちらで作るべきですか?

事業規模が小さいうちは、Excelでも十分管理できます。

ただし、Excel運用は更新が手作業になり、特定の担当者に依存しやすいという弱点があります。事業が大きくなり、部門が増え、更新が追いつかなくなってきたら、システムでの管理を検討するタイミングです。NetSuiteなら、業務データと連動して資金の動きを自動で集計できます。

Q4. NetSuiteで自社専用の資金繰り表は作れますか?

標準機能でも、多くの資金繰り管理はカバーできます。

その上で、自社固有の様式やレポートが必要な場合は、カスタマイズで対応することも可能です。ただし、最初から作り込むのではなく、まず標準機能で運用し、必要な要件が固まってからカスタマイズを検討する進め方をおすすめしています。ベンチャーネットでは、その見極めから一緒に考えています。

まとめ:資金繰りは経理の作業ではなく、経営そのもの

資金繰りは、経理担当者だけの作業ではありません。会社の存続を左右する、経営そのものです。

大切なのは、過去を振り返るだけでなく、これから先の資金を見通すことです。資金繰り表で将来の不足を早めに察知し、手を打つ。この習慣が、黒字倒産を防ぎ、安定した経営につながります。

そして、その管理を「仕組み」で回せるようにすること。属人的なExcel運用から脱却し、最新の数字を誰もが見られる状態をつくることが、次の一歩です。

ベンチャーネットは、中堅・中小企業の経営管理を支援しています。「うちの資金繰りは、今のままで大丈夫だろうか」と感じた方は、お気軽にご相談ください。御社に合った進め方を、一緒に考えさせてください。

ベンチャーネットのNetSuite関連サービスの詳細を見る

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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