資金繰りとは?将来の資金不足を防ぐ資金繰り表の作成・管理とNetSuite活用

「黒字なのに、なぜか手元にお金が残らない」

経営者から、よく聞く悩みです。

資金繰りとは、将来の資金の過不足を予測し、手元の資金が不足しないように管理することです。

過去の実績を見るだけでは足りません。

これから先の現金を見通して、はじめて資金繰りになります。

利益が出ていても、現金が尽きれば会社は立ち行かなくなります。

これが「黒字倒産」です。

では、利益が出ているのに、現金はどこで減っていくのか。

答えは、資金繰り表を3か月分作ると見えてきます。

目次

この記事で分かること

  • 資金繰りとキャッシュフローの違い
  • 資金繰り表の区分と作り方(架空の数字の例つき)
  • 資金繰りでよくある3つの失敗
  • Excelで足りる段階と、システムが要る段階
  • 資金繰りの先にある「守り→攻め→次へ」

言葉の整理:サイトは、売上や仕入から、実際に入金・支払するまでの期間です。

黒字倒産は、帳簿の上では利益が出ているのに、支払の現金が足りずに倒産することです。

資金繰りとキャッシュフローの違い

資金繰りは「これから先」を見る考え方です。

3か月後、半年後に現金が足りるかを予測し、足りなくなる前に手を打ちます。

キャッシュフロー(現金の流れ)は、主に「過去から現在まで」の現金の動きをつかむものです。

決算書の一部であるキャッシュフロー計算書で示されます。

観点資金繰り表キャッシュフロー計算書
目的将来の過不足を予測し、手を打つ過去〜現在の現金の動きを分析する
時間軸未来(これから)過去(実績)
作成の義務任意(経営管理の道具)上場企業など、有価証券報告書を出す会社は必要
主な使い手経営者・財務の担当経営者・投資家・金融機関
見る単位日次・月次など細かく会計期間(年・四半期)

(作成の義務の出典:e-Gov法令検索「財務諸表等規則」第1条、2026年9月確認)

2つは、対立するものではありません。

実績をつかむキャッシュフローと、将来を見通す資金繰りは、補い合う関係です。

キャッシュフローは、キャッシュフローとは?黒字でも資金が尽きる理由で詳しく扱っています。

なぜ黒字でも現金が足りなくなるのか

利益と現金は、同じ時期に動きません。

  • 売上が立っても、入金は数か月先になることが多い
  • その間に、仕入や給与の支払が先に来る
  • 結果、帳簿は黒字でも、手元の現金が足りなくなる

物価や仕入のコストが上がる局面では、この差がさらに広がります。

コストの増加を価格に移しきれないと、現金が回らなくなるのです。

資金繰りを管理すると、次のことができます。

  • 資金が足りなくなる時期と原因を、早めに見つける
  • 借入や支払の時期を、計画的に決める
  • 投資の判断を、現金の見通しにもとづいて行う

資金繰り表の作り方

3つの区分

資金繰り表は、一定期間の収入と支出を予測し、資金の過不足をつかむ表です。

大きく次の3つに分けます。

  • 営業収支:本業による現金の出入り(売上の入金、仕入・経費・給与の支払など)
  • 経常外収支:設備投資や税金の支払など、本業以外の大きな出入り
  • 財務収支:借入れ、返済など、資金の調達に関わる出入り

作る手順

  1. 月初の現金の残高を確かめる
  2. 入金の予定を、入金の時期ごとに書き出す
  3. 支払の予定を、支払の時期ごとに書き出す
  4. 差し引きで、各月末の残高を計算する
  5. 不足しそうな月を見つけ、早めに手を打つ

表の本当の仕事は、4と5にあります。

作って終わりにせず、いつ足りなくなりそうかを見つけて手を打つ。

そのための表です。

例で見る|売上が伸びているのに現金が減る

架空の会社の、3か月分の資金繰り表です(単位:万円、数字はすべて架空)。

項目4月5月6月
月初の残高1,000850450
営業の入金(売掛金の回収)8009001,000
営業の支払(仕入・経費・給与・賞与)9009501,300
営業収支−100−50−300
経常外収支(税金・設備)0−3000
財務収支(借入の返済)−50−50−50
月末の残高850450100

入金は毎月増えているのに、月末の残高は減り続けています。

5月の税金と、6月の賞与。

年に数回の大きな支払が、続けて来たためです。

この会社が「月末に300万円は残す」と決めていたとします。

6月末は100万円で、その線を下回ります。

4月の時点で表があれば、借入の相談や、入金を早める交渉を前もって始められました。

入金は増えても、月末の残高は減る(架空の例) 架空の会社で、入金は4月800万円・5月900万円・6月1,000万円と増える一方、月末の残高は850万円・450万円・100万円と減り、6月末に最低の残高の線300万円を下回る。 入金は増え、残高は減る 架空の例(単位:万円) 4月 入金 800 月末残高 850 5月 入金 900 月末残高 450 税金の支払 6月 入金 1,000 月末残高 100 賞与の支払 最低の残高の線 300を下回る 4月に気づけば、借入の相談が間に合う
入金は増えても、月末の残高は減る(架空の例)

自社の数字をどう見るか

資金繰り表ができたら、次の3点を見ます。

見る点見ること手の打ち方の例
最低の残高の線月末に最低いくら残すかを決めているか線を下回る月の2〜3か月前に動く
サイトの差入金までの期間と、支払までの期間の差入金の条件、支払の条件を見直す
大きな支払の月税金・賞与・設備の支払が重なる月借入や投資の時期をずらす

最低の残高の線は、業種や支払の構造で変わります。

自社の毎月の支払の大きさをもとに、顧問の税理士や金融機関と相談して決めてください。

資金繰りでよくある失敗3つ

失敗1:実績だけを見て、将来を予測しない

起きること:気づいたときには、支払に間に合わない。

原因:月次の試算表は見ているが、資金繰り表を作っていない。試算表は過去の実績にすぎない。

避け方:3〜6か月先を見通す資金繰り表を持ち、毎月更新します。

失敗2:売上は見ているが、入金の時期を見ていない

起きること:黒字なのに現金が足りない理由を、説明できない。

原因:売掛金・買掛金のサイトの差を意識していなかった。

避け方:「いつ・いくら入り、いつ・いくら出るか」を、取引先ごとの条件まで含めて見ます。

売上・仕入・経費のデータが1か所に集まっていれば、この作業はぐっと軽くなります。

失敗3:Excelの表が属人化し、更新が止まる

起きること:古い数字のまま判断し、担当者が替わると管理そのものが途切れる。

原因:更新が手作業で、特定の担当者しか表を触れなかった。

避け方:入金・支払の予定を、業務のデータから自動で集める仕組みに変えます。

資金を全社の合計でしか見ていないなら、部門・事業ごとに分けて見ることも役立ちます。

どこにコストが集中しているかは、配賦の考え方が参考になります。

Excelで足りる段階と、システムが要る段階

判断の物差し

状況Excelで足りるシステムが要る
取引先の数少なく、入金・支払の条件もほぼ同じ多く、条件が取引先ごとに違う
更新の手間月に1回、短時間で終わる転記に時間がかかり、つい後回しになる
見たい単位全社の合計で足りる部門・事業・拠点ごとに見たい
担当者替わっても引き継げる特定の担当者しか分からない

右の列が2つ以上当てはまれば、システムで回すことを考える時期です。

移る時期の見極めは、ExcelからNetSuiteへ移行すべきタイミングでも扱っています。

表の右の列を、確かめる形にすると次のとおりです。

資金繰りをシステムで回す時期のサイン 取引先が多く条件が取引先ごとに違う、転記に時間がかかり後回しになる、部門・事業・拠点ごとに見たい、特定の担当者しか分からない。2つ以上当てはまれば、システムで回すことを考える時期。 システムで回す時期のサイン いまの自社に当てはまるものに印をつける 取引先が多く、条件が取引先ごとに違う 転記に時間がかかり、後回しになる 部門・事業・拠点ごとに見たい 特定の担当者しか分からない 2つ以上当てはまれば システムで回すことを考える時期
資金繰りをシステムで回す時期のサイン

ほかの選択肢と比べる

選択肢合う条件注意点
Excelで作る(いまは入れない)取引が少なく、担当者が決まっている更新が止まりやすい。取引が増えたときの移行を見込む
会計ソフト+Excel会計は整っていて、予定だけを表で足したい予定のデータを手で集める
資金繰り・予算の専用ツール資金の予測を細かく回したい販売・購買のデータとの連携が要る
NetSuite(ERPのデータから作る)販売・購買・会計を1つで持ち、予定も同じデータで見たい資金繰り表の形は、設定や開発で作る

NetSuiteで資金繰りを回す考え方

実績は標準のレポートで

NetSuiteは、会計・販売・在庫・購買のデータを1つのシステムで管理するクラウドERPです。

資金の出入りを、業務をまたいでつかみやすいのが特長です。

実績の現金の動きは、キャッシュフロー計算書で見られます。

日本向けには、日本の形式のキャッシュフロー計算書が用意されています。

テンプレートは英語と日本語の2つです。

(出典:Oracle NetSuite公式ヘルプ「Japan Help Topics」、2026年9月確認)

将来の予定は、業務のデータから集める

資金繰り表は、将来の予定を並べる表です。

過去の実績を示すキャッシュフロー計算書とは、形も目的も違います。

NetSuiteには、受注・請求・発注・支払の予定のデータがそろっています。

これを集め、入金と支払の予定を月ごとに並べる。それが基本の考え方です。

使うものできること経営の上での意味
キャッシュフロー計算書期間の現金の増減を集計実績を手作業なしでつかめる
請求・支払の予定のデータ入金・支払の予定を月ごとに集める資金繰り表の「予定」を自動で埋められる
部門・クラス・場所の分類資金の流れを事業ごとに分けるどこに資金が集中しているかが見える
予算の機能予算と実績を比べる予定とのずれを早く見つける
会計データとの連動取引が財務諸表に反映される二重入力と数字のずれを防ぐ

データの集め方はNetSuite保存検索の作り方、予算はNetSuiteで予算管理を効率化で扱っています。

これから選ぶ会社と、いま使っている会社

これから選ぶ会社

システムを選ぶ前に、次の3つを書き出します。

  1. いまの資金繰り表で、手で集めている数字はどれか
  2. 資金を分けて見たい単位(部門・事業・拠点)
  3. 金融機関などへ出す、決まった様式があるか

3つめがあれば、その様式をどう作るかも選定の論点に入れます。

いまNetSuiteやほかのERPを使っている会社

ERPを入れていても、資金繰り表だけはExcel。

そういう会社は少なくありません。

Excelに転記している数字が、ERPのどのデータから来ているかを一覧にしてみてください。

保存検索やレポートで置き換えられる行と、置き換えられない行に分かれます。

置き換えられない行は、様式の問題か、データがない問題かを見分けます。

ベンチャーネットならこう見る|3つの選択と、資金繰りの先

NetSuite認定パートナー(Solution Provider)であるベンチャーネットは、資金繰り表の相談も受けています。

NetSuite・Odoo・AIスクラッチ開発を扱い、SAPからのリプレイスにも対応しています。

型1:標準で出す/開発する/Excelに残す

最初に、いまの資金繰り表を1行ずつ見ます。

各行の数字が、どの業務のデータから来ているのか。

そのうえで、行ごとに3つのどれかに決めます。

  • 標準で出す:保存検索・レポート・予算の機能で埋まる行。まずここで回す
  • 開発する:金融機関へ出す様式など、形が決まっている行はアドオン開発(NetSuiteリブート)で作る
  • Excelに残す:件数が少なく、手で足しても負担にならない行

変わる点も、先にお伝えします。

いまのExcelの様式が、そのままの形でシステムから出るとは限りません。

全部を自社専用に作り込むと、費用も期間もふくらみます。

標準で回してみて、どうしても合わない行が見えてから作る。この順が無駄の少ない進め方です。

新しい機能の日本での提供状況は、アカウントの担当に確認してください。

型2:守り→攻め→次へ

資金繰り表が業務のデータから出るようになると、その先が開けます。

ベンチャーネットは、稼働後の歩みを3段で考えます。

  • 守り(業務が回る):販売・購買・会計を1つにし、入金と支払の予定が自動でそろう
  • 攻め(データで打つ):事業ごとの資金の動きを見て、条件の見直しや投資の時期を決める
  • 次へ(経営が変わる):KPI、管理会計、上場に向けた内部統制に進む
定着の先の3段階:守り→攻め→次へ 守りは業務が回ること、攻めはデータで打つこと、次へは経営が変わること。 定着の先の3段階守り|業務が回る在庫・販売・会計を1つにし、日々の業務を安定させる攻め|データで打つ売れ筋・在庫の分析、営業作業の自動化、生成AIでの集計次へ|経営が変わるKPI、管理会計、上場に向けた内部統制
定着の先の3段階:守り→攻め→次へ

資金繰り表を手で作っているうちは、守りの段階にいます。

転記から解放された時間が、攻めと次への原資になります。

今日できること|3か月先の月末残高を出す

第3章の例の表を使い、自社の3か月分を埋めてみてください。

  1. 今月初の残高を通帳で確かめる
  2. 3か月の入金の予定を、請求の一覧から書き出す
  3. 3か月の支払の予定を、仕入・給与・税金・返済から書き出す
  4. 月末の残高を計算し、最低の残高の線と比べる

線を下回る月があれば、今日がその対策を始める日です。

手で集めるのに時間がかかった数字が、仕組みにする候補になります。

よくある質問

Q1. 資金繰りとキャッシュフローは何が違うのですか

見る時間の向きが逆です。

資金繰りは将来を、キャッシュフローは過去を見ます。

資金繰りは、これから先に資金が足りるかを見通し、不足を防ぐために使います。

キャッシュフローは、実績としての現金の動きを示します。

Q2. 黒字なのに資金が足りなくなるのはなぜですか

利益と現金が同じ時期に動かないからです。

売上が立っても、入金は数か月先になることが多くあります。

その間に支払が先に来ると、帳簿は黒字でも現金が尽きます。

Q3. 資金繰り表の区分は何ですか

営業収支・経常外収支・財務収支の3つが基本です。

本業の出入り、税金や設備などの大きな出入り、借入と返済に分けて整理します。

Q4. 資金繰り表はExcelとNetSuiteのどちらで作るべきですか

取引が少ないうちはExcelで十分です。

取引先が増え、更新が追いつかなくなったら、システムで回すことを考えます。

NetSuiteなら、業務のデータから入金・支払の予定を集められます。

Q5. NetSuiteの標準で資金繰り表は出ますか

実績はキャッシュフロー計算書で出せます。

将来の予定を並べる資金繰り表は、保存検索やレポートで作るのが基本です。

自社の様式が必要な場合は、開発で作ることもできます。

Q6. 何か月先まで見ればよいですか

まず3〜6か月先から始めます。

税金・賞与・設備など、年に数回の大きな支払が入る月まで見通せる長さにします。

まとめ

  • 資金繰りは、将来の資金の過不足を予測し、不足しないように管理すること
  • 資金繰り表は、営業収支・経常外収支・財務収支に分けて月末の残高を見通す
  • 売上が伸びても、大きな支払が重なれば現金は減る
  • 最低の残高の線、サイトの差、大きな支払の月の3点で自社の数字を見る
  • システムに移すときは、行ごとに標準で出す/開発する/Excelに残すを決める

「黒字なのにお金が残らない」の答えは、3か月先の月末残高にあります。

まず、自社の3か月分を1枚の表にしてみてください。

もう少し詳しく知りたい方へ

いまの資金繰り表の数字を、どこまで業務のデータから出せるか。

表の形と数字の出どころを一緒に確かめるところから、ご相談をお受けしています。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

持田 卓臣(もちだ たくおみ)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役

ヒューレット・パッカード社でITコンサルタントとして従事した後、2005年に株式会社ベンチャーネットを設立。
Oracle NetSuite Solution Provider Partner として、中堅・中小企業向けクラウドERP「NetSuite」の導入・運用支援を提供しています。
SEO・広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で培ってきたデジタルマーケティング領域の業務知見を活かし、NetSuiteを軸とした経営DXを支援しています。
著書:『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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