ERP導入はなぜ失敗するのか|リプレイスで同じ轍を踏まないための進め方

「ERPを導入したが、結局使われていない」「想定以上にコストが膨らみ、効果が出ないまま老朽化を迎えた」。こうした経験から、ERPのリプレイスを検討している企業担当者は少なくありません。本記事では、ERP導入がなぜ失敗するのかを整理したうえで、リプレイスを成功させるためのポイントを解説します。

目次

ERPへの不満とリプレイス検討の増加─なぜ今、基幹システムの見直しが必要なのか

2024年の調査によると、従業員1000人以下の中堅・中小企業において、導入しているERPの満足度は42.9%と半数を下回っています※1。つまり、過半数の企業が「期待どおりではなかった」と感じているわけです。
内容としては、人件費を含めた保守コストの高騰や、EOS/EOLへの対応、業務プロセスに合わせたシステム設計のためのIT人材確保といった課題が挙げられています。

レガシーシステム問題は依然として深刻

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で提起された「2025年の崖」という言葉を覚えている方も多いでしょう。
あれから8年が経過した現在も、状況は大きく改善していません。
JUASの調査によれば、企業の約8割がレガシーシステムを抱えており、そのうち約7割が「デジタル化の足かせになっている」と回答しています。また、このままレガシーシステムが維持された場合、導入年数が21年以上経過したレガシーシステムは全体の6割になるとも指摘されています※3。
2025年6月に経済産業省が発表した最新のレポートでも、レガシーシステムが最新のデジタル技術導入の足枷となっている現状が改めて指摘されています※4。

なぜ「今のERPでは限界」と感じてしまうのか

現状のERPに不満を感じる背景には、いくつかの理由があります。
1つ目は、システムの老朽化です。機能的な不足感や保守コストの増大、あるいはベンダーのサポートが終了間近というケースが該当します。
例えばSAP ERPのECC6.0世代(オンプレミス型の最後の世代)を利用している企業では、2027年末のサポート終了(いわゆる「2027年問題」)への対応が喫緊の課題となっています。

2つ目は、業務とのミスマッチです。導入当初の業務フローが事業拡大や業態変化によって変化し、現在のシステムと合わなくなってしまったケースですね。
このケースでは、業務の一部をスクラッチ型の独自システムや手入力でカバーしながら、半ば強引にシステムを動かしていることが少なくありません。

3つ目は、運用負荷の高さです。オンプレミス環境では、度重なるアドオン開発によるシステムの複雑化が起こります。その結果、「特殊なオペレーション」がいくつも発生し、情シス担当者の負担が非常に高くなります。
限られた人員でレガシーシステムを維持し続けることは、ますます困難になっています。
一方で情シス人材は慢性的な人手不足です。採用も育成も簡単ではありません。

ERP導入が失敗する4つの根本原因

では、そもそもなぜERP導入は失敗するのでしょうか。
多くの失敗事例を分析すると、根本原因は大きく4つに集約されます。

原因①:目的が曖昧なまま進めた

最も多い原因が「目的の曖昧さ」です。
「業務効率化のため」「DX推進のため」といった目的は一見すると正しいのですが、「具体性」が欠けていると失敗につながりやすいです。
ERP導入・リプレイスはあくまでも「手段」であり、それが結果として経営・事業にどういうインパクトがあるのかを想定しておかなくてはなりません。
たとえば、「在庫回転率を1.5倍にする」「月次決算を5営業日短縮する」といった具体的な目標がないまま導入を進めると、本当に必要な機能の判別ができません。
その結果、ベンダーの提案を丸ごと受け入れ、使わない(使えない)機能に多額の投資をしてしまうことになります。

原因②:「現行踏襲」でブラックボックスをそのまま移植した

2つ目の原因は、「システムだけ」を入れ替えたケースです。
「現行踏襲」を守りすぎるあまり、非効率なロジックや属人的な運用をそのまま移植してしまいます。
さらに深刻なのは、現行システムの仕様書やドキュメントが残っていないケースです。
「なぜこの機能・ロジックが必要なのか」を誰も説明できないまま、「とにかく今と同じ動きをするように」とカスタマイズを重ねた結果、新システムはさらに複雑で使いにくいものになってしまいます。いわゆるブラックボックスの再生産です。
「ブラックボックスが再生産される=真の業務課題はそのまま残る」ということですから、どこかで成長は止まってしまいます。

原因③:「アドオン開発による独自機能」を作りすぎている

3つ目の原因は、いわゆる「過剰な造りこみ」です。
日本企業は伝統的に、「業務にシステムを合わせる」という考え方が強いです。
ERPベンダーの大半は外資系企業ですから、日本企業の細かな業務プロセスには対応していません。その結果、アドオン開発によって独自機能を大量に実装するという悪しき慣習が生まれました。
確かに業務への適合度は上がるのですが、拡張性や柔軟性は失われますから、年月を経るごとに使いにくいシステムになっていきます。
また、過剰な造りこみによって不具合が頻発したり、改修が困難になったりといったデメリットもあります。
こうしたリスクを減らすために、近年は「Fit to Standard」や「クリーンコア」といった考え方が注目されています。
「Fit to Standard」はパッケージを最大限活用するために「業務をパッケージの標準機能に合わせる」考え方です。また、「クリーンコア」は、ERPパッケージ本体のカスタマイズや追加開発を最小限に抑えることでシステムの柔軟性、拡張性、保守性を担保することを表しています。
現行踏襲を前提とする場合でも、「必要以上に作りこまない」という近年のトレンドは理解しておくべきかもしれません。

原因④:導入後の「定着」を軽視した

ERPの導入プロジェクトでは、「本番稼働日」をゴールに設定しがちです。
しかし、真のゴールは「システムが現場に定着し、正常に業務が回り始めた日」です。
社員教育の徹底や既存業務の効率化、組織の見直しなど「定着化」を行わないまま強引にカットオーバーを迎えると、ERP自体が「浮いた存在」になってしまいます。
その結果、「新システムは使いにくい」「前のやり方のほうが早い」という声が上がり、Excel併用などのアナログな手法に逆戻りするケースが後を絶ちません。

合わないERPを使い続けるリスク

では「合わないERP」を放置し続けると、どのような問題が起きるのでしょうか。

老朽化が進むほど移行コストは増大する

一般的に、システムは使い続けるほど複雑になります。
特にオンプレミス型の硬直的なERPでは、その場しのぎの改修が積み重なり、全体像を把握できる人がいなくなります。
担当者が退職するたびに、ブラックボックス化が進んでいくわけです。
「リプレイスのために現行システムの仕様調査を開始したが、調査だけで多大なコストがかかることが判明。そしてさらに数年放置される」というケースは非常に多いです。

外部要因による「待ったなし」の状況に対応できない

先延ばしが許されないケースもあります。
代表的な例がベンダーのサポート終了です。
サポートが切れたシステムを使い続ければ、セキュリティリスクは跳ね上がります。
また、保守を担当していたエンジニアの高齢化や退職も深刻な問題です。
COBOLやRPGといった古い言語を扱える技術者は年々減少しており「動かす・治せる人がいなくなった」という事態は想像に難くありません。

ERPリプレイスにおける5つのハードルとその越え方

古いERPや業務に合わないERPは、使い続けるよりも「計画的に入れ替える」、つまりリプレイスのほうがトータルコストで安く済むケースがほとんどです。
一方でリプレイスを決断しても、プロジェクトには多くのハードルが待ち構えています。
そこでERPリプレイスにおける5つの壁と、その乗り越え方を整理します。

①:現行システムの全体像を誰も把握していない

長年の改修でブラックボックス化し、担当者も退職済み。仕様書を探しても、最新の状態を反映したものが見つからない。こうした状況は珍しくありません。
この場合は、実データと現場ヒアリングの突合によって、業務に必要なロジックを導き出します。
また、このタイミングで「本当に必要な業務」と「惰性で続けている業務」を仕分けることが重要です。つまり「業務の廃棄」を進めるのです。

②:意思決定者が明確ではない

経営層は「現場で決めてくれ」と言い、現場は「上が決めてくれないと動けない」と言う。結果として、誰も決断しないまま時間だけが過ぎていきます。
大切なのは、プロジェクト初期に経営層を巻き込み、「目的」「優先順位」「廃棄すべき業務」を明文化することです。
仮に部門間での対立が予想される場合でも、経営層が意思決定者として明確にされているので泥沼に陥る可能性は小さいでしょう。

③:「うちは特殊」に逃げない

現場から「今の業務に合わせてほしい」という要望が噴出し、気づけばカスタマイズだらけ。これでは、新システムも現状と同様の使いにくいものになってしまいます。
対策としては、業界標準の業務プロセスと自社業務を比較し、「本当に特殊な部分」と「変えられる部分」を切り分けていきます。
標準機能でカバーできる範囲を先に確定させ、カスタマイズは最小限に絞る。
この順序とプロセスを遵守することで最小のコストで使いやすいERPが構築できます。

④:担当者が1人もしくは兼任のみでリソースが足りない

中小企業では、専任の情シス担当者を置いていないケースも多いです。
専任の担当者がいる場合でも、いわゆる「ひとり情シス」状態であれば、リプレイスに投下できるリソースは限られています。
こうしたITリソースの不足に対しては、ERPリプレイス後の運用を「1人でも回せる設計」にする前提で要件を決めます。
例えばクラウドERPならば、インフラ運用やパッチ適用の業務はベンダー側が負担します。

⑤:リプレイス後の「定着」をゴールとして見据える

ERPのリプレイスが完了した後も、やるべきタスクは山積した状態です。
例えば以下のようなタスクは、ERPリプレイス後の「定着」として必須になるでしょう。

タスク内容
操作研修の実施部門・役割ごとに、実際に使う機能に絞って教育する
マニュアル・FAQの整備よくある質問をまとめたFAQ形式の整備など、ノウハウの普及と定着を促す
運用ルールの明文化「誰が」「いつ」「どの順番で」データを処理するかを明文化する
定着度のモニタリングログイン状況や入力件数を定期的にチェックし、フォローが必要な箇所を早期に発見する
ERPリプレイス後のタスク

これらを稼働後3〜6ヶ月の計画に組み込み、「定着した状態がゴール」という意識をプロジェクト開始時点から共有しておくことが重要です。

リプレイスを成功させるパートナー選びの視点

ERPリプレイスは、信頼できるパートナーの存在が成功の鍵を握ります。
パートナー選定では、以下の点を確認することをお勧めします。

1.業務理解力
業務理解力とは「ERPと業務の差分を認識する能力」と考えて良いでしょう。
業務理解力に優れたパートナーは、無駄な機能を実装せず、必要な機能に絞って課題解決の提案を行います。

  • 自社の業種・業態の業務フローを理解しているか
  • 業界用語や専門用語が通じるか
  • 現場の課題感を深く理解し、課題の本質を認識できるか

などを初回のヒアリングなどで判断できるとパートナー選びの失敗リスクをかなり小さくできます。

2.同規模・同業種での実績
大企業向けの実績が豊富でも、中堅・中小企業の事情を理解しているとは限りません。
自社と近い規模・業種での導入実績があるかを確認します。

3.導入後の支援体制
「定着フェーズまで伴走支援を提供しているか」「運用開始後のサポート体制が存在しているか」などもチェックしたいところです。
また、要件定義から運用定着まで、一気通貫で伴走できる体制があるかも重要な判断基準です。
フェーズごとに担当者が変わると、情報の引き継ぎロスが発生します。
最初から最後まで同じチームが関わる体制が理想です。

「製品を売りたいベンダー」と「課題を解決したいパートナー」の違い

ERPベンダーの中には、とにかく自社製品を売りたいという姿勢のところもあります。
機能の説明は詳しいが、こちらの業務や課題にはあまり関心がない……という印象を受けたら要注意です。
一方、課題解決を重視するパートナーは、まず「なぜリプレイスが必要なのか」「何を実現したいのか」を深掘りしてきます。製品ありきではなく、課題ありきで提案を組み立てる。この違いは大きいです。

「何でもできます」より「それはやめた方がいい」

要望をすべて受け入れてくれるベンダーは、一見親切に見えます。
しかし、それが本当に良いパートナーでしょうか。
むしろ、「その機能は標準で十分です」「そのカスタマイズ/アドオン開発はお勧めしません」と言ってくれるパートナーのほうが信頼できます。
過剰なカスタマイズを止め、リプレイスを正しい方向に導いてくれるからです。

まとめ:失敗経験を次の成功につなげるために

ERPのリプレイスを自社単独で進めるのは容易ではありません。
現行システムの棚卸し、要件定義、ベンダー選定、業務プロセスの再設計、現場への定着支援など、どのフェーズにも専門的な知見が求められます。
同じ失敗を繰り返さないためには、信頼できるパートナーと一緒に進めることが最善策です。
ベンチャーネットでは、基幹システムのリプレイスに関する無料相談を承っております。

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弊社はAIクラウドERP「NetSuite」に特化した専門家集団です。
「初期導入で失敗した」「古いERPをなんとかリプレイスしたい」といったご要望に対して伴走型の支援を提供しております。

「今のERPに課題を感じているが、どこから手をつければよいかわからない」
「リプレイスを検討しているが、自社に合った進め方を知りたい」

という企業担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

※1 キーマンズネット「ERPの利用状況に関するアンケート(2024年)」
https://kn.itmedia.co.jp/kn/articles/2404/11/news011.html

※2 経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」(2018年)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/DX_report_summary.pdf

※3 KDDI「2025年の崖とは」
https://biz.kddi.com/content/column/smartwork/what-is-2025gake/

※4 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」(2025年5月)
https://www.meti.go.jp/press/2025/05/20250528003/20250528003.html

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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