基幹システムのリプレイスの方法は?流れや注意点を解説

基幹システムのリプレイスは、企業の業務効率化や競争力強化において重要なものです。しかし、その方法や注意点をしっかりと理解していないと、多くの問題に直面することになります。本記事では、基幹システムのリプレイスの必要性からメリット、具体的な流れや注意点まで詳しく解説します。

目次

基幹システムのリプレイスの必要性

基幹システムのリプレイスを検討する際は、その必要性を理解しておくことが大切です。システムの老朽化、機能不足、セキュリティリスクという3つの主要な理由について具体的に解説します。

システムの老朽化

基幹システムは企業の中枢を担うため、老朽化によって動作が不安定になると業務全体に深刻な影響を及ぼします。たとえば、ハードウェアの寿命が近づくと、故障や性能低下が頻発し、システムの安定性が損なわれます。また、ソフトウェアもサポートが終了すると、アップデートやセキュリティパッチが提供されなくなり、脆弱性が高まります。

多くの企業は、サポートが終了したシステムを使い続けることでリスクを抱えています。サポートが終了すると、ベンダーからの技術支援が受けられなくなり、システムトラブルが発生した際の対応が困難になります。製造業にたとえると、サポートが終了した基幹システムのまま運用を続けた結果、重大なトラブルが発生し、生産ラインが停止するという事態が起こることもあり得るでしょう。

機能不足

現代のビジネス環境では、最新技術の導入が競争力の鍵となります。旧システムでは、新しいビジネスモデルやマーケットの変化に対応できないことがあります。たとえば、データ分析機能やクラウド連携機能がないシステムでは、リアルタイムでのデータ活用や柔軟な業務運用が困難です。

流通業にたとえると、最新の基幹システムにリプレイスすることで、在庫管理や物流管理の効率を大幅に向上させることが可能です。その結果、在庫回転率の改善や配送時間の短縮が実現し、顧客満足度が大きく向上することも期待できます。

セキュリティリスク

セキュリティリスクは、企業にとって深刻な問題です。古いシステムには最新のセキュリティ対策が施されておらず、サイバー攻撃やデータ漏洩のリスクが高まります。たとえば、近年では古いシステムを使用していた企業が狙われ、多額の身代金を要求されるケースが増えています。

基幹システムのリプレイスのメリット

企業が基幹システムをリプレイスすることには多くのメリットがあります。ここでは、業務効率化、運用コスト削減、競争力強化という具体的なメリットを例を交えて詳しく説明します。

業務効率化につながる

新しい基幹システムは、最新の技術を取り入れた設計がされており、業務プロセスを自動化し、効率化する機能が豊富です。これにより、手作業によるミスが減少し、業務のスピードと正確性が向上します。

たとえば企業が在庫管理システムを最新のものにリプレイスした場合、バーコードスキャナやRFID技術を活用して、在庫の入出庫をリアルタイムで追跡できるようになります。これにより、在庫の正確性が向上し、過剰在庫や在庫切れのリスクが減少します。また、従業員は手作業でデータを入力する手間が省け、他の重要な業務に時間を割くことができるようになります。

運用コストを削減できる

最新の基幹システムは、クラウドベースのソリューションを採用することが多く、物理的なサーバーの保守やアップデートのコストを削減できます。また、エネルギー効率の高いインフラを利用することで、電力コストも削減されます。

企業がオンプレミスの基幹システムからクラウドベースのシステムに移行することで、サーバーの維持管理費用が削減されます。クラウドサービスはスケーラビリティが高く、必要なときにリソースを追加できるため、繁忙期にはリソースを増やし、閑散期にはリソースを減らすことで、コストを最適化することが可能です。

競争力を強化できる

最新の基幹システムは、データ分析機能やAI技術を統合することができ、リアルタイムのデータ分析や予測モデルの構築が可能です。これにより、迅速な意思決定ができ、競争力を強化できます。

企業が旧システムからAIを統合した新しい基幹システムにリプレイスすることで、顧客の購買履歴や行動データをリアルタイムで分析し、個々の顧客に最適な商品を提案することが可能です。

このパーソナライズドサービスの導入により、顧客満足度が向上し、リピーター率が増加することで、売上の増加と競争力の強化につながります。

基幹システムのリプレイスの流れ

基幹システムの刷新(乗り換え・更新)の流れについて詳しく見ていきましょう。

STEP
刷新プロジェクトの計画

基幹システム刷新プロジェクトの最初のステップは、企業の目標とニーズに基づいた計画の策定です。たとえば、企業が競争力を強化するために最新技術を導入したいと考えている場合、その目標に向けて具体的な要件を定義します。データ処理速度の向上、ユーザーインターフェースの改善、モバイルアクセスの拡充などが挙げられます。

また、リスクアセスメントを行い、プロジェクトの各段階で発生しうる問題を予測し、その対策を講じます。たとえば、データ移行中にデータ損失のリスクがある場合、バックアップ戦略を立て、定期的にデータを保存することで対応します。

STEP
新システムを選ぶ

信頼性と実績のあるベンダーを選定することが重要です。たとえば、過去に成功したプロジェクトの数や、提供するサポートの質などを評価します。実績のあるベンダーは、必要なサポートとトレーニングを行うことで、システム移行の成功をサポートしてくれます。

また、企業の特定のニーズに応じたカスタマイズが可能なシステムを選ぶことも重要です。たとえば、製造業の企業が特定の生産管理機能を必要とする場合、その機能が柔軟にカスタマイズできるシステムを選定します。

さらに、現行システムの問題点を洗い出し、新システムの要件を明確に定義します。たとえば、現行システムで処理速度が遅い場合、その改善を最優先要件として設定し、新システムでの処理速度向上を目指します。

STEP
実装・テスト

新システムの実装段階では、事前に計画した手順に従ってシステムを導入します。システムの設定、ユーザーのトレーニング、初期データの入力などを行います。

新システムへのスムーズな移行と運用開始には、事前のテストが必要です。システム移行前にパイロットテストを実施し、実際の運用環境での動作確認を行います。これにより、潜在的な問題を早期に発見し、対策を講じることができます。

STEP
基幹システム データ移行

データ移行中にデータ損失や不整合を防ぐために対策が必要です。たとえば、データ移行ツールを使用してデータの整合性をチェックし、不整合が発生した場合に自動的に修正する機能を利用します。業務継続性の確保も重要であり、移行期間中の業務への影響を最小限にする方法を検討します。たとえば、段階的なデータ移行を行い、重要な業務が停止しないようにします。

データ移行プロセスとして、まずは現状分析が必要です。データベーススキーマの解析やデータの品質チェックを行いましょう。

また、データの精度と一貫性を確保するためのデータクレンジングも必要です。重複データの削除や欠損データの補完をしましょう。

テスト移行では、実データを使用し、結果を評価します。移行後のデータの整合性やシステムの動作確認を行い、最後に本移行と検証を実施します。

基幹システムのリプレイスの成功のポイント

基幹システムのリプレイスは企業にとって大きなプロジェクトであり、成功させるためにはいくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、基幹システムのリプレイスを成功させるためのポイントについて詳しく見ていきましょう。

業務の一次停止のリスクを理解する

基幹システムのリプレイスに伴う業務の一次停止は、企業の生産性や収益に直接的な影響を及ぼす可能性があります。そのため、リプレイスプロジェクトを計画する際には、このリスクを十分に理解し、対策を講じることが重要です。

たとえば、製造業の企業が基幹システムをリプレイスする際、システム停止期間中に生産ラインが停止することがないように、夜間や週末を利用してリプレイス作業を行うことが考えられます。また、重要な業務プロセスについては事前に手動対応策を準備しておき、システム停止期間中の業務継続性を確保することも有効です。

段階的なリプレイスも視野に入れる

一度に全てのシステムをリプレイスするのはリスクが高いため、段階的にシステムを更新していくことも1つの方法です。各段階で問題を早期に発見し、修正することができます。

たとえば、まずは財務管理システムからリプレイスを開始し、その後人事管理システム、在庫管理システムと順次更新していく方法があります。こうすることで、システムの一部が問題を抱えても全体への影響を最小限に抑えることができます。

移行は「品質を作り込む工程」として捉える

基幹システムリプレイスにおけるトラブルの多くは、データ移行フェーズで発生します。その原因は、データ前提の不統一、属人化した手順、確認観点の不足、短すぎる並行期間、曖昧な切戻し条件などが複合的に重なるケースがほとんどです。

これを防ぐには、データ移行を単なる作業として扱うのではなく、「品質を作り込む工程」として位置付ける必要があります。データ形式・単位・基準日といった前提条件を事前に統一し、移行手順は誰が見ても再現できる粒度で文書化します。

また、移行リハーサルごとに所要時間や発生した不具合を記録し、次回に反映させることで、移行精度と再現性を段階的に高めていくことが重要です。

並行稼働と切戻しは「保険」ではなく「設計事項」

基幹システムの切替は、万全を期しても想定外が起こり得ます。そのため、稼働初期は旧システムと新システムを併用する並行稼働を前提に設計することが欠かせません。数週間から数か月の並行期間を設け、日次・月次・締め処理ごとに件数や金額、計算結果を照合します。

加えて、切替当日に向けては、「どの条件を満たしたら切戻すのか」「最終判断は誰が行うのか」「切戻した場合の再開手順はどうするのか」といった判断基準を事前に合意しておく必要があります。切戻しを“想定外の失敗”として扱うのではなく、計画の一部として組み込んでおくことで、実際のトラブル時にも冷静に対応できます。

統制・法対応は後回しにしない

内部統制や法令対応は、システム稼働後に付け足そうとすると、手戻りや追加コストの原因になりがちです。そのため、要件定義の段階から統制と法対応を前提条件として設計に組み込みます。

具体的には、権限設計や承認フローを明確にし、必要以上に権限を集中させないこと、操作履歴や承認ログを後から追跡できる仕組みを整えることが基本です。インボイス制度、電子帳簿保存法、J-SOXなどの要件についても、帳票・ワークフロー・データ保存方法にどう反映させるかを初期段階で整理しておきます。

稼働後は、定期的な権限見直しやログ確認を運用に組み込み、想定外の事象が起きた際の対応手順まで決めておくことで、システムと業務の安定運用につながります。

リプレイス先のシステムが既存システムとデータ連携できるか確認する

新しいシステムが既存システムと円滑にデータ連携できるかどうかの確認が必要です。データ連携がうまくいかないと、データの整合性や業務プロセスに支障をきたす可能性があります。

たとえば、販売管理システムをリプレイスする際、新システムが旧システムのデータフォーマットと互換性があるかを確認する必要があります。もし互換性がない場合は、データ変換ツールを使用してデータを適切なフォーマットに変換するか、インターフェースを開発してデータ連携を行う必要があります。

システムリプレイスに必要な人材

システムリプレイスを成功させるためには、さまざまな専門知識とスキルを持つ人材が必要です。以下に、主要な役割とその責任について、詳しく解説します。

プロジェクトマネージャー (PM)

プロジェクト全体の進行管理と調整を担当します。プロジェクトのスコープ、スケジュール、予算の管理を行い、各チーム間の調整を図ります。たとえば、リスク管理計画を立て、問題が発生した場合に迅速に対応できるようにします。

システムアーキテクト

既存のシステムと新しいシステムの互換性を確認し、データ移行戦略を策定します。具体的には、システム間のデータフローを設計し、最適な技術スタックを選定します。

データベース管理者 (DBA)

データの移行と管理を担当します。データクレンジング、データ移行、データベースのパフォーマンスチューニングを行います。

システムエンジニア

システムエンジニアは、ハードウェアとソフトウェアのインストール、設定、テストを行います。新しいサーバーの設定や、ネットワークの最適化も行い、システム全体のパフォーマンスを最大化します。

ビジネスアナリスト

ビジネスアナリストは、各部門のニーズをヒアリングし、新システムに必要な機能を明確にします。たとえば、営業部門が求める新機能を整理し、技術チームに伝えます。

システムリプレイスはアウトソーシングがおすすめ

基幹システムのリプレイスは、単なるIT導入ではなく、業務・組織・意思決定を巻き込む大規模プロジェクトです。必要となるスキルや工数は一時的に膨らむ一方、恒常的に社内に抱えるには負担が大きいのが実情です。そのため、多くの企業にとってアウトソーシングを活用する方が現実的かつ合理的な選択となります。ここでは、アウトソーシングを活用する具体的なメリットを3つの観点から解説します。

専門知識と経験豊富なプロの支援を受けられる

システムリプレイスでは、ERP製品の知識だけでなく、要件定義の進め方、Fit to Standardの線引き、非機能設計、データ移行、統制対応など、失敗しやすい論点を横断的に扱える経験が求められます。これらをすべて社内メンバーだけでカバーするのは、現実的には難しいケースが多いでしょう。

アウトソーシングを利用すると、過去に複数のリプレイス案件を経験してきたプロフェッショナルが参画します。たとえば、

  • 要件定義で議論が停滞しやすいポイントを先回りして整理する
  • 現場要望と標準機能の線引きを、経営判断として通すための材料を提示する
  • 過去の失敗事例を踏まえ、リスクを事前に潰す

といった支援が可能です。単に「作業を代行する」のではなく、判断の質そのものを引き上げられる点が、アウトソーシング最大の価値といえます。

コストを最適化できる(固定費を変動費にできる)

システムリプレイスでは、プロジェクト期間中にPM、アーキテクト、移行担当、業務コンサルなど、多様な専門人材が必要になります。しかし、これらの人材を社内で常時雇用すると、プロジェクト終了後には過剰戦力になりかねません。

アウトソーシングを活用すれば、

  • プロジェクト期間中だけ必要なスキルを確保できる
  • 人件費を固定費ではなく変動費として扱える
  • 採用・教育にかかるコストや時間を抑えられる

といったメリットがあります。特に、ERPリプレイスのように数年に一度の大規模案件では、専門人材を内製化するよりも、外部リソースを活用した方がトータルコストを抑えやすくなります。

また、経験豊富なアウトソーシング先を活用することで、手戻りや炎上による追加コストを防げる点も、結果的なコスト削減につながります。

プロジェクトを迅速に立ち上げ、推進できる

社内主導でシステムリプレイスを進める場合、体制構築や役割整理、進め方の検討に時間がかかり、着手までに数か月を要することも珍しくありません。一方、アウトソーシング先は、すでにリプレイスの進め方や型を持っているため、短期間でプロジェクトを立ち上げることができます。

たとえば、

  • 初期フェーズで必要な資料や論点をテンプレート化して提示できる
  • 要件定義・移行・テストの進め方が確立されている
  • 過去案件の知見をもとに、優先順位を明確にできる

といった点により、内部だけでは数か月かかる準備を、数週間で完了させることも可能です。制度対応(インボイス、電子帳簿保存法など)や老朽化対応など、期限が決まっているリプレイスでは、このスピード感が大きな差になります。

基幹システムのリプレイスの導入パートナーの選び方

ERERPリプレイスを「どの製品を選ぶか」という製品選定プロジェクトとして捉えると、プロジェクトはつまずきやすくなります。実務の現場では、同じERP製品を採用しても、成功する企業と失敗する企業が明確に分かれるのが実情です。その最大の分岐点となるのが、導入パートナー(ベンダー/SIer/コンサル)の選び方です。

ERPリプレイスの難所は、設定作業や移行作業そのものではありません。
判断が難しい局面で、

  • どこまでを標準に寄せるのか
  • どこで例外を認めるのか
  • どの水準で品質を担保するのか

といった線引きと合意形成を、いかにブレずに進められるかにあります。以下では、導入パートナーの力量が結果を左右する代表的な論点を整理します。

Fit to Standardの線引きを「経営判断」として通せるか

ERPリプレイスでは、Fit to Standard(標準機能優先)が重要だと理解していても、現場要望が積み上がるにつれて方針が揺らぎがちです。「今の業務を変えたくない」「この処理だけは例外にしたい」といった声は、必ず発生します。

このとき、導入パートナーが要望をそのまま受け取るだけの立場だと、作り込みが増え、結果としてコスト増・品質低下・将来の改修困難につながります。一方、経験豊富なパートナーであれば、

  • なぜ標準に寄せるべきなのか
  • 例外を認める条件は何か
  • 将来のコストや統制への影響はどうなるか

といった観点を整理し、経営判断として線引きを行うための材料を提示できます。Fit to Standardを理想論で終わらせず、意思決定として成立させられるかどうかは、パートナーの力量に大きく依存します。

非機能要件を後回しにせず、最初から要件化できるか

ERPリプレイスの失敗例で特に多いのが、機能要件に意識が集中し、非機能要件が後回しになるケースです。性能、可用性、監視、バックアップ、RTO/RPOといった非機能は、稼働後に問題が顕在化しやすく、後戻りが難しい領域です。

経験の浅いパートナーほど、「まずは動くものを作る」「本番で調整する」と判断しがちですが、これはリスクを先送りしているに過ぎません。実績のあるパートナーは、

  • どの業務がピーク負荷になるのか
  • どこまでを要件として保証すべきか
  • 障害時に誰が・何分で判断するのか

といった点を要件定義段階で具体化し、PoCや検証計画に落とし込みます。非機能を設計事項として扱えるかどうかは、パートナーの成熟度を測る重要な指標です。

データ移行・並行稼働・切戻しを「型」で設計できるか

データ移行は、ERPリプレイスで最もトラブルが起きやすい工程です。失敗するプロジェクトの多くは、

  • どこをどう照合するのか
  • 並行稼働をいつまで行うのか
  • どの条件で切戻すのか

といった判断が、当日や直前まで曖昧なまま進んでいます。

優れた導入パートナーは、移行を単なる作業として扱いません。
照合観点(件数・金額・計算結果・締め処理)、並行稼働の期間と判断基準、切戻し条件と最終判断者を事前に合意文書として整理し、関係者の認識を揃えます。この合意形成を主導できるかどうかが、立ち上げ直後の混乱を防げるかを左右します。

仕様変更・追加要望を炎上させずに統制できるか

ERPリプレイスでは、仕様変更や追加要望が発生すること自体は避けられません。問題は「変更が起きること」ではなく、「変更をどう扱うか」です。

統制力のないパートナーの場合、

  • 口頭ベースで変更が進む
  • 影響範囲が整理されない
  • コスト・納期・品質への影響が不透明になる

といった状態に陥り、プロジェクトは徐々に炎上していきます。
信頼できるパートナーは、変更管理のルールを明確にし、変更理由・代替案・影響範囲・判断者を整理したうえで、プロジェクト全体として可否を判断します。変更を前提にしつつ、統制された運営ができるかは、必ず見極めるべきポイントです。

基幹システムのリプレイスの成功事例

基幹システムのリプレイスは、「老朽化への対処」や「制度対応」といった守りの施策として語られがちですが、実際には経営スピードや事業成長を左右する重要な経営判断です。
どのERPを選んだか以上に、「どの課題をどう解決し、どこまで業務や意思決定を変えられたか」によって、リプレイスの成否は大きく分かれます。

ここでは、事業成長・老朽化脱却・業務効率化という異なる背景を持ちながらも、クラウドERPを軸に基幹システムを刷新し、明確な成果を上げた企業の事例を紹介します。いずれのプロジェクトにおいても、ベンチャーネットは導入パートナーとして構想設計から導入・定着支援までに関与し、業務・経営の両面からリプレイスを推進してきました。

株式会社キュリエ:事業拡張フェーズに耐える“攻めの経営基盤”を再設計

株式会社キュリエは、プリンター用の互換インク・トナーといったオフィスサプライの輸入・卸売を主軸に成長してきた企業です。
近年は販売の重心をECへと移し、楽天市場・Amazonなどの主要モールでの展開を加速。複数回にわたり楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、オンライン販売分野でも確かな実績を築いてきました。

こうした既存事業の成長に加え、同社は2024年、新規事業「スマラピ」を立ち上げました。従来とは異なる顧客層・商流を見据えたこの取り組みは、事業ポートフォリオの拡張と次の成長ステージへの布石として位置付けられています。

課題

事業の多角化と規模拡大が進む一方で、社内の情報管理は必ずしも成長スピードに追いついていませんでした。
販売管理、在庫管理、会計データはそれぞれ別のシステムで管理され、一部はExcelに依存する運用が続いており、データは部門ごとに分断されていました。

この状態では、全社の業績を横断的に把握するまでに手間と時間がかかり、経営判断に必要な数値をリアルタイムで確認することが困難でした。
特に、既存事業と新規事業で管理ルールや粒度が異なっていたため、事業別の利益構造や在庫の健全性を同一の視点で把握できない点がボトルネックとなっていました。

さらに、将来的にIPOを見据える中で、特定の担当者に依存した管理体制や属人的な判断を改め、全社共通で再現性のある経営基盤を構築する必要性が明確になっていました。

結果

こうした課題に対し、同社はクラウドERP「NetSuite」を採用。販売・在庫・会計といった基幹データを単一のプラットフォームに集約し、業務と数字を一体で管理できる体制へと移行しました。

その結果、経営数値をリアルタイムで把握できるようになり、状況変化に即応した意思決定が可能になりました。
在庫領域では自動化が進み、適正在庫の維持とSKU単位での詳細分析を両立。売上動向と在庫状況を結びつけた販売戦略の立案が可能となっています。

また、NetSuiteを営業・マーケティング領域にも展開することで、リード管理や商談進捗の可視化を実現。展示会後のフォローなど、これまで手作業に依存していた業務を削減し、現場の運用負荷を大きく軽減しました。

新規事業「スマラピ」においても、売上予測や在庫管理の精度が向上し、市場の反応を踏まえた柔軟な戦略修正が可能な体制が整っています。
今後は、NetSuiteを中核とした管理会計・KPI分析をさらに高度化し、持続的な事業成長とIPO実現に向けた経営基盤の強化を進めていく方針です。

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株式会社アペックス::27年続いたSAP R/3運用から脱却し、クラウドERPへ舵を切った全社刷新プロジェクト

株式会社アペックスは1963年の創業以来、コーヒーを中心としたカップ式自動販売機事業の草分け的存在として、日本の飲料市場を支えてきた企業です。
飲料商品の企画・開発から原料選定、自動販売機そのものの開発、設置後の運営・管理までを自社で一貫して担うビジネスモデルを構築し、長年にわたり高い評価と信頼を獲得してきました。

同社では1998年から基幹システムとしてSAP R/3を利用し、販売・購買・会計などの中核業務を支えてきました。しかし、SAP社による保守サポート終了、いわゆる「2025年問題」を目前に控え、基幹システムを今後どうするかという経営判断が避けられない状況となりました。
これを機に、同社は単なる延命ではなく、基幹システムそのものを見直す全面刷新を決断します。

課題

SAP R/3は長年にわたり安定稼働してきた一方で、その運用は紙帳票を前提とした業務フローに強く依存していました。
結果として、業務プロセスは複雑化し、担当者ごとのノウハウに依存する属人的な運用が各所に残っていました。

また、手作業による入力や確認作業が多く、業務効率の面でも改善余地が大きい状態でした。こうした環境では、今後のデジタル活用やAI連携といった取り組みを進めることが難しく、中長期的な成長の足かせになる懸念がありました。

SAP S/4 HANAへの移行も選択肢として検討されましたが、機能が過剰であることや導入・運用コストの高さに加え、既存の複雑なアドオンや業務プロセスをそのまま引き継いでしまうリスクが課題として浮上しました。
そこで同社は、過去の制約に縛られない形でERPを再選定する、いわば“ゼロベース”での見直しに踏み切ります。

結果

複数のERP製品を比較・検討した結果、同社が選択したのがクラウドネイティブERPである Oracle NetSuite でした。
NetSuiteの導入により、販売・購買・在庫・会計といった基幹業務を単一のプラットフォーム上で統合管理できる体制が整いました。

帳票業務では電子化と自動化を徹底し、請求書や支払明細書の送付にかかる外部委託コストを約73%削減。あわせて、社内で発生していた作業工数も約80%削減するなど、定量的にも大きな効果が現れています。

財務領域では、月次決算後の分析に要していた時間が大幅に短縮され、ドリルダウン機能を活用した詳細な数値確認が即座に行えるようになりました。
これにより、経営層・管理部門双方にとって、スピードと精度を兼ね備えた財務分析が可能となっています。

さらに、統合マスター管理の仕組みにより、仕入先情報、在庫データ、価格情報などを1画面で把握できるようになり、業務効率とデータの整合性が大きく向上しました。
同社は今後、NetSuiteに蓄積されたデータをAIと連携させることで、より高度な分析や予測に基づくデータドリブン経営を推進していく方針です。

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株式会社南海エクスプレス:NetSuiteを軸に受発注・在庫情報を統合し、物流現場の非効率を根本から解消

株式会社南海エクスプレスは、1950年に前身企業が創業して以来、南海電鉄グループの一員として国際物流事業を担ってきた企業です。
現在では単なる物流オペレーターにとどまらず、顧客である荷主企業に対して、物流業務の設計支援や情報システムの提案・運営支援までを含めた、付加価値の高いサービスを提供しています。

同社は、輸入食品の販売事業を展開する顧客企業の業務改善を目的に、クラウドERPである Oracle NetSuite を活用し、受発注業務および在庫管理の刷新プロジェクトに着手しました。
物流事業者としての知見を活かしながら、荷主企業と物流現場双方の課題を同時に解消する取り組みです。

課題

対象となった顧客企業では、従来オンプレミス型の販売・在庫管理システムを利用していましたが、事業拡大に伴い運用面での限界が顕在化していました。

本部側では、各店舗から寄せられる出荷依頼や欠品連絡を電話やメールで受け取り、担当者が手作業で取りまとめたうえで、納期調整や配送手配を行っていました。
この運用は特定の担当者に依存しやすく、業務負荷が高いだけでなく、処理の遅延やミスが発生しやすい状況でした。

店舗側でも課題は深刻でした。物流センターや他店舗の在庫状況をリアルタイムで確認できる仕組みがなく、在庫確認は電話やメール、Excelによる個別管理が常態化していました。
売れ筋商品の注文が集中するタイミングでは、店舗間での在庫調整が頻発し、現場の対応負担が大きくなっていました。

さらに、南海エクスプレス側においても、顧客企業からの配送依頼を受けた後、物流管理システムへの在庫引当や各種データ登録を手作業で行っており、取扱商品数やトランザクションが増えるにつれて、将来的な運用継続に不安が生じていました。

結果

既存の物流管理システムを NetSuite に置き換えたことで、受発注・在庫・配送に関わるデータが一元化され、本部・店舗・物流センター間で情報をリアルタイムに共有できる環境が整いました。

顧客企業の本部では、店舗からの注文をシステム上で直接受け付ける運用へと移行したことで、従来必要だった注文の取りまとめ作業が不要となり、業務工数を大幅に削減しています。

店舗側では、自店舗に限らず、他店舗や物流センターの在庫状況をNetSuite上で即座に確認できるようになりました。
これにより、欠品確認や在庫調整のための電話・メール対応が解消され、現場負担の軽減とともに、販売機会の損失抑制にもつながっています。

南海エクスプレス自身も、発注データや在庫移動情報をAPI連携によって自動化したことで、従来行っていた手作業による引当処理やデータ入力が不要となりました。
その結果、業務の正確性と処理スピードが向上し、取扱量増加にも耐えられる運用体制が確立されています。

加えて、海外からの仕入れや賞味期限管理といった食品特有の要件にも対応できる在庫管理基盤が整備され、今後の事業拡大や取引量増加を見据えた、持続可能な物流・業務基盤が構築されました。

まとめ

基幹システムのリプレイスは、業務効率化や競争力強化に向けた重要なことです。成功させるためには、計画的なアプローチと専門的な人材の活用が不可欠です。

また、専門知識と経験を持つ企業にリプレイスを任せることで、プロジェクトの成功率を高めることができます。リプレイスがもたらす多くのメリットを最大限に引き出し、企業の成長と競争力の向上を実現しましょう。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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