【中小企業向け】情シスアウトソーシングの限界と、止まらないIT基盤の作り方

「ひとり情シス」状態を解消するため、アウトソーシングを検討する中小企業が増えています。
しかし、ヘルプデスクやキッティング作業を外注しただけでは、あまりメリットを体感できないかもしれません。基幹データの分断や属人化リスクは解消されませんし、担当者が辞めれば業務が止まってしまうからです。
本記事では、情シスアウトソーシングの基本を押さえたうえで、「外注しても解決しない課題」を明確にし、中小企業の真の目的である「人がいなくても止まらないIT基盤」の作り方を解説します。

目次

情シスアウトソーシングとは?外注できる業務の範囲

情シスアウトソーシングとは、企業の情報システム部門が担う業務の一部または全部を、外部企業に委託することです。社内にIT人材を抱えることが難しい中小企業を中心に、近年徐々に広がりを見せています。

アウトソーシングできる業務範囲

一般的なアウトソーシングの範囲は、以下のような定型業務が中心です。

ヘルプデスク、キッティング対応

ヘルプデスク対応では、社員からのPC操作に関する問い合わせ、ソフトウェアの使い方、アカウント設定のサポートなど、日常的に発生する技術的な質問に対応します。
またキッティング業務では、新入社員や部署異動に伴うPC・スマートフォンの初期設定、必要なソフトウェアのインストール、アカウント発行などを代行します。
いわゆる「雑用」に近い領域ですが、IT業界以外では社員のITリテラシーにバラつきがあるため、実は多大なリソースを消費する業務でもあります。

運用監視業務、セキュリティ対策

運用監視業務では、ネットワークやサーバーの稼働状況を監視し、異常が発生した際の一次対応や報告を行います。
セキュリティ対策では、OSやソフトウェアのセキュリティパッチ適用、ウイルス対策ソフトの管理、基本的なセキュリティポリシーの運用支援などが含まれます。
また、アカウント管理業務として、社員の入退社に伴うアカウントの作成・削除、権限設定の変更などを担当することもあります。
これらは「ノンコア業務」と呼ばれ、企業の競争力に直接貢献するものではありませんが、日常業務を円滑に進めるために欠かせない作業です。

中小企業が情シスアウトソーシングを検討する背景

中堅・中小企業において情シスアウトソーシングの検討が進む背景には、「もはや社内では対応しきれない」という切実な状況があります。

情シス人材の採用難

需要の拡大に伴い、情シス人材の採用難が続いています。
株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)が2025年6月に公表したアンケート結果によれば、約8割の企業が「人材不足を実感」と回答。
さらに人材補充が十分と回答した企業は全体の3割にとどまるなど、「不足しているうえに採用が難しい」という実情があるようです。※1
また、大企業が積極的に情シス人材を採用する中で、中小企業は資金面で不利を強いられます。
情シス人材に求めるスキルセットと予算(想定給与)のギャップが大きく、採用活動そのものが成立しないことも珍しくありません。

※1:出典:情シス・DX関連部門における人材不足の実情と課題が明らかに~IIJ調査
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/2019713.html

「ひとり情シス」の限界──離職すれば業務停止

いわゆる「ひとり情シス」状態では、複数名で担うべき業務を1人で背負うことが負担となり、離職に至るケースも珍しくありません。
一方で情シス担当者の離職は、「ITシステムの機能不全」を招いてしまいます。
高度に情報化が進んだ現在、ITシステムの停止は事業の停止につながりかねません。
予算不足ゆえのひとり情シス、ひとり情シスゆえの高負荷と離職、そして離職が事業の停止につながるというリスクがあるわけです。
つまり事業停止へのリスクヘッジとして、情シスアウトソーシングが選ばれています。

経営層がIT課題の深刻さを認識しづらい構造

中小企業の経営層は、営業・製造・財務といった事業の中核業務に関心が向きやすく、ITは「動いていれば問題ない」と捉えられがちです。
情シスの負荷や属人化リスクは、表面化するまで見えにくく、経営課題として優先順位が上がりにくいのです。
こうした状況を打開するための現実的な選択肢として、情シスアウトソーシングが検討されるようになっています。

部分的な外注は意味がない?情シスアウトソーシングの「よくある失敗パターン」

社内のIT関連業務を「すべて」「丸ごと」外注できれば、確かに生産性は向上するでしょう。
しかし、一般的な情シスアウトソーシングでは、「肝心な部分」にリーチしていないことが大半です。
肝心な部分とは、「基幹システムの運用」「セキュリティ対策」などの高度な業務分野です。
つまり、情シスアウトソーシングを導入したとしても、「基幹システムは誰も触れない」「データの整合性は社内で管理しなければならない」「重要な設定変更は結局自社でやるしかない」という状況になりがちです。
結果として、本質的なIT課題(データの分断、運用業務の属人化、セキュリティリスク)は解消されないまま残ってしまうのです。
特に以下のようなパターンでは、アウトソーシングがあまり意味のないものになってしまいます。

ヘルプデスクを外注したが、基幹システムは誰も触れない

最も多い失敗パターンが、「ヘルプデスク業務だけ外注して満足してしまう」ケースです。
このケースでは、日常的な問い合わせ対応やPC設定は任せられるものの、ERPの運用は手つかずのまま残ります。
つまり、「Excelが開けない」といった軽微なトラブルには対応できても、「月次決算のデータが合わない」といった業務の根幹に関わる問題には誰も対処できないのです。

属人化した業務フローがそのまま残り、引き継ぎ不能

外注先に業務を引き継ぐ際、「現状の業務フローをそのまま委託する」ことがあります。
しかし、業務フロー自体が属人的な知識と経験、暗黙知に依存している場合、外注先では再現できません。
結局「前任者に聞かないと分からない」状態が継続し、省力化や属人性の解消につながらないことがあります。

複数のSaaSにデータが散逸し、統一されていない

多くの中小企業では、部門ごとに異なるSaaSツールが導入されていることがあります。
これらが連携しないまま運用されていると、データの一元管理ができず、経営判断に必要な情報を集めるだけで膨大な手間がかかります。
ヘルプデスクやキッティングを外注しても、こうした部門間のデータ分断は解消されません。

外注先が変わるたびにゼロからやり直し

アウトソーシング先の企業が撤退したり、契約条件が変更されたりした場合、別のベンダーに乗り換える必要が生じます。
しかし、業務の引き継ぎが不十分だと、新しい外注先はゼロから状況を把握しなければならず、その間に業務が停滞します。

「情シス不在」の本質的課題は「コア業務」が実行されないこと

情シスアウトソーシングの失敗事例に共通するのは、「ノンコア業務は外注できても、コア業務が放置されたまま」という構造です。
中小企業が意識すべき情シスアウトソーシングの成果は、「コア業務の生産性向上」であるはずです。

情シス部門特有のコア業務とノンコア業務とは?

企業の業務を考える上で、「コア業務」と「ノンコア業務」の区別は非常に重要です。
コア業務とは、企業の競争力の源泉となる主要な業務活動を指し、利益を生むための中心的な機能です。
一方、ノンコア業務は、企業の主たる事業活動を支えるためのサポート的な業務です。
この分類は、情報システム部門においても存在します。
そこでまずは「情シスのコア業務、ノンコア業務」を整理しておきましょう。

情シスのコア業務

IT戦略の策定、AIなど新技術の導入、業務プロセスの最適化、基幹データの統合管理、セキュリティポリシーの設計と運用などが考えられます。これらは企業の価値を直接的に高める活動です。

情シスのノンコア業務

運用監視や初期対応、ヘルプデスク対応、PC・スマートフォンのキッティング、日常的なトラブル対応などが挙げられます。これらの業務は重要ですが、企業の競争力を直接的には向上させません。

情シス不在で放置されるコア業務

情シスが不在、あるいはひとり情シス状態の企業では、ノンコア業務に追われるあまり、コア業務へのリソース投下量が減ってしまいます。

基幹データが統一されていない状況では、同じ指標でも部門によって数値が違う状況が生じます。データの裏取りに時間を費やし、締め処理や確定処理が遅れ、経営判断が後手に回ります。
さらにセキュリティ対策の形骸化により、サイバー攻撃や障害発生時に「原因を追えない」「元に戻せない」状態となり、事業継続の観点で深刻なリスクを抱えることになります。
これらはコア業務への注力度が落ちることで発生する問題です。
ノンコア業務にリソースを奪われた結果、本来やるべき戦略的な業務、データ品質の維持、セキュリティ対策といった活動が後回しにされてしまうのです。
ノンコア業務をアウトソーシングしても、コア業務を担う人材がいなければ根本的な課題は何も解決しません。

情シスアウトソーシング先を選ぶ際に確認すべき3つの視点

以上の内容を踏まえつつ、情シスアウトソーシングで失敗しないための視点を整理してみましょう。
情シスアウトソーシングで失敗しないためには、以下3つの視点が必要です。

【視点1】定型業務の代行か、基幹システム運用まで対応できるか

多くの情シスアウトソーシングサービスは、ヘルプデスクやキッティングといった定型業務の代行に特化しています。しかし、それだけでは不十分かもしれません。
アウトソーシング先の選定時には、情シスのコア業務である「ERP運用」「権限管理」「データ品質維持」「システム連携の設計・運用」など任せられるかを確認する必要があります。
特に、基幹業務を支えるERPの運用保守を担当できるかどうかが、アウトソーシングの実効性を左右します。

【視点2】担当者が変わっても継続できる体制か(チーム体制があるか)

アウトソーシング先でも「担当者がひとり」である場合、結局はそれまでの「ひとり情シス」と同じ状況になることがあります。なぜなら、外注先の担当者が退職・異動すれば、再び引き継ぎの問題が発生するからです。
重要なのは、「1人の担当者に依存せず、チーム体制でサポートできるか」という点です。
また、万が一パートナー企業が事業から撤退した場合でも、別のパートナーに移行できる仕組みがあるかも確認しておきましょう。

【視点3】将来のDX推進・AI活用まで見据えているか

現代の企業は、すでにIT活用を半ば強制されている状態です。
データ活用によるデータドリブン経営、AIなど先端技術による自動化、DX推進まで伴走できるアウトソーシング先であれば、自社によって大きなプラスになる取引になるはず。
将来の成長を見据えたIT基盤の構築を支援できるパートナーかどうかが、アウトソーシング先選定の鍵となります。

アウトソーシング+クラウドERPで「止まらないIT基盤」を作る

弊社では、従来の「ヘルプデスク+キッティング」にとどまらず、さまざまな経営課題の解決に寄与する「情シスBPO」サービスを提供しています。
情シスアウトソーシングの限界を超えるには、クラウドERP導入と情シスBPOを組み合わせるアプローチが有効です。

なぜクラウドERP × 情シスBPOなのか

すでに述べたように情シス部門の本質的な課題は「ノンコア業務に追われ、コア業務が実行されない」ことにあります。
ノンコア業務を外注しても、基幹システムの運用、データ品質の維持、セキュリティ管理といったコア業務は放置されたままです。
この問題を解決するには、2つのアプローチを同時に実行する必要があります。

第一に、クラウドERPによる基幹データの統合です。バラバラに存在する会計・販売・在庫データを一元管理することで、「部署ごとに数字が違う」「Excelで手作業調整」といった非効率を排除し、データ品質を担保します。情シスが日々行っていたデータ整合性の確認作業から解放されます。

第二に、情シスBPOによってコア業務の一部を外部化することです。
基幹システムの運用、権限管理、ログ監視、セキュリティ対策といったコア業務を専門チームに任せることで、「誰もシステムを理解していない」「属人化で引き継げない」といったリスクを回避できます。

この組み合わせによって、ノンコア業務を省力化し、コア業務も専門チームが担う体制が整います。結果として、企業は「止まらないIT基盤」を手に入れ、DX推進や事業成長といった戦略的な取り組みにリソースを振り向けることができるのです。

ベンチャーネットの「NetSuite × 情シスBPO」

ベンチャーネットでは、AIクラウドERP「NetSuite」の導入と、NetSuite専門チームによる情シスBPOサービスを組み合わせて提供しています。
ベンチャーネットの「NetSuite × 情シスBPO」サービスの詳細は、以下をご覧ください。

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情シスBPOチームがAI Cloud ERP「NetSuite」の導入から運用までをサポートし、計画フェーズでの業務整理、導入時のデータ移行・権限設計、運用開始後の問い合わせ対応、運用定着後のAPI連携改善まで、すべての段階で伴走します。
NetSuiteには、AIによる予測・異常検知機能が標準搭載されており、売上予測、在庫最適化、異常値検知など、「人では追いきれない部分」を自動補完します。
情シスBPOチームがAI機能の設定・運用をサポートするため、社内で専門人材を抱える必要はありません。
また、弊社以外のOracleパートナーを自由に選べる仕組みにより、ベンダーロックインを回避できます。
もちろん別のOracleパートナーへの乗り換えた場合でも、導入済みのNetSuiteはそのまま使用できます。
さらに、万が一の際はOracle本体(ACS)が最終のサポートラインとして控えているため、事業継続性が担保されます。

まとめ|情シスを「人」ではなく「仕組み」で持つ時代へ

中堅・中小企業では、専任の情シス人材を確保することが難しくなっています。
採用できない。育てられない。続かない。
それでも、基幹システムは止められず、業務データは守り続ける必要があります。
ベンチャーネットは「NetSuite導入×情シスBPO」で、情シス不在企業のIT課題をまとめて解決します。
情シスを「人」ではなく、「仕組み」で持つ時代へ。
初回ヒアリングは無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

持田 卓臣のアバター 持田 卓臣 株式会社ベンチャーネット代表取締役

株式会社ベンチャーネット 代表取締役
2005年に株式会社ベンチャーネットを設立後、SEOをはじめとするデジタルマーケティング領域のコンサルティングサービスを展開
広告・SNS・ウェブ・MA・SFAと一気通貫で支援を行っています
著書に『普通のサラリーマンでもすごいチームと始められる レバレッジ起業 「バーチャル社員」があなたを救う』(KADOKAWA、2020年)

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