これからの働き方

2018年4月6日、今国会の目玉ともいわれる「働き方改革関連法案」が、ようやく閣議決定されました。阿部首相は数年前から「働き方改革の実現」を公言しており、平成28年9月には、厚生労働省の加藤大臣とともに「働き方改革実現推進室」の開所式を行うなど、「働く人の視点に立った働き方改革の意義」をアピールしてきました。 その後およそ1年半にわたり、政府は多くの有識者会議や、総理と現場との意見交換会などを行ってきました。しかし、そうすんなりとは「閣議決定」には至らなかったのです。当初の予定では、平成30年の2月には、閣議決定まで持ち込みたい意向だったようですが、元々の予定から2か月もずれ込んでしまったのには、いくつか理由があるようです。では、その「理由」も含め、知っているようで詳しくは知らない、「働き方改革」について、見ていきたいと思います。

働き方改革とはどのような「改革」なのか

ではまず、「働き方改革」が日本で唱えられるようになってきた背景について、見ていきましょう。もっとも大きいと思われる背景は、世界一のスピードで進むともいわれる「日本の少子高齢化の進行」にあります。

確かに、日本の高齢化の進展は、他の先進国よりもかなり急速に進行していることが分かりますね。これをアジア地域だけに限ってみても、やはり日本の高齢化率はトップ。2020年以降くらいからは、韓国やシンガポールが日本よりも早いスピードで高齢化が進みそうな勢いではあるのですが、それでも2060年の時点は、やはり日本がトップであるという推計が成されています。 すると、日本はどうなるのか。 少子高齢化の進行に伴い勃発するであろう問題として「労働力の供給が需要に追い付かない」ということがあります。厚生労働省がとりまとめた「平成27年度雇用政策研究会報告書」によると、2014年の時点では、15歳~60歳以上までの全年齢層を合計すると、およそ6251万人の労働者がいたことになります。しかしこのまま、経済成長に労働参加が追い付かない場合は、2030年頃には全国の労働者は5561万人、2014年と比較すると790万人減となるのだそうです。しかし、経済成長と労働参加が適切に進めば、2030年頃の労働者は6169万人となり、2014年と比較し182万人減で済む、となっています。 では、どうすれば「経済成長と労働参加が適切に進む」ことになるのか。そこに登場するのが、「女性」と「高齢者」による労働力の確保です。 日本はずっと昔から、男尊女卑という考え方が深く根付いている国です。男性は外で働くもの、女性は家をまもるものとして、戦後の経済成長期を支えてきた「過去の経験」もあり、そもそも女性のライフスタイルに合わせた働き方ができるところは、まだまだ少ないといえるでしょう。そのため、日本では出産や育児を機に「労働」から退出してしまう女性が多く、年齢区部別の就業率をみると、いわゆる「M字カーブ」を形成しています。諸外国では、韓国が日本よりもよりM字に近いカーブを形成しますが、その他の先進国ではむしろ逆、逆U字のカーブを描くのです。 そこで政府が目を付けたのが、外で働きたいけど働いていない「潜在的労働力」です。

女性の労働力確保に関する課題は山積み?

日本では、女性の就業率を年齢層で区切ってみていくと、いわゆる「M字カーブ」となることが分かっています。推計上は、25歳~44歳女性の中に、136万人の「就業希望者」がいるとされており、年齢層の枠をもう少し広げると、274万人の「就業希望者」がいるとされています。では、彼女たちはなぜ就業しないのか。そこには「出産・育児」という、女性にとっての大きなライフサイクルの変化があります。 実際、ある調査によると、第1子出生後に育児休暇等を利用して就業を継続できているのは、女性全体の28.3%です。それに対し、出産とともに退職している女性は33.9%、出産前から就業している女性のうち、半数以上の53.1%が、出産を機に仕事を辞めている計算になります。「今すぐはムリでも、いずれ(子どもの手がかからなくなったら)就業したい」と願う女性を、どうやって「労働力」として活かすのか、ここに「働き方改革」の一つの狙いがあります。

高齢者だって働きたい?

ではもう一つの日本の課題、「高齢者の労働力を活かす方法」についてです。 日本には「定年」という制度がありますので、定年後も何らかの形で就業出来ている人、65歳以上の就業率は男性で50%、女性で30%程度です。しかし、平成25年に内閣府が行った「高齢者の地域社会への参加に関する意識調査」によると、およそ7割以上の人が「65歳を超えても働きたい」と考えていることが分かりました。 就業形態の希望としては
  • フルタイムの社員・職員:24.2%
  • パートタイム(短時間勤務など)の社員・職員:53.9%
  • 農林漁業を含む自営業、フリーランスなど:15.9%
  • 在宅就労:2.1%
などとなっています。 この割合がそのまま推移すると仮定し、単純に計算していくと、平成27年の60歳以上人口はおよそ4,223万人だったわけですから、そのうちの7割、およそ2,956万人が「労働力」として期待できることになります。 政府が「日本の労働力」として、高齢者の力を活かそう!という意図が、見えてきますよね。

日本人は働きすぎ”という通説は、本当なのか

かつて、日本の「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助氏は、日本人のことを「勤勉にして誠実な国民性」と表現しました。この表現通り、日本人は戦後の「敗戦」という大きな打撃から這い上がり、世界有数の経済大国となったのです。世界地図で見れば、ごくごく小さな島国なのに、です。その背景にあったのは、やはり「勤勉にして誠実」こういう国民性があったのかもしれません。では、実際に現代の日本人の働きぶりは、どうでしょうか。2017年に労働政策研究・研修機構が行った「データブック国際労働比較2017」によると、確かに日本人は「働きすぎ」な傾向は、あるようです。
このグラフをみると、必ずしも「世界一働き過ぎている」というわけではない、という風にもとれます。日本は2015年では年平均労働時間が1,719時間ですが、1990年は2,000時間を超えていました。ただしこの時は、韓国が2,100時間を超えていましたので、やはり「世界一」というわけではないように見えますね。 それでも、一カ月あたりにすると143.25時間、1日8時間労働とすると18日間くらいはフルタイムで働いていることになります。このデータには、パート労働者も含まれていますので、長時間労働を強いられている人は、かなりの人数になると想定されています。実際に、週に40時間以上働く日本人は59%、週に49時間以上働く日本人は20%以上いるという統計データもあります。 勤勉なのは良いのですが、働き過ぎであることは、確かなようです。

賃金水準はどうなのか

労働に対する対価として考えるべきなのが、「賃金水準」ですね。では前出の「データブック国際労働比較」の2016年版から、フルタイム労働者の賃金に対する、パート労働者の賃金水準をみてみましょう。
アメリカを除く諸外国が7割以上を維持していますが、この中に入ると日本の賃金水準は6割未満ですから、非常に低いように見えます。仮にフルタイム勤務の労働者が10万円分の働きをしたとすると、パートタイム労働者の場合は、同じだけの仕事をしても6万円も手にできないことになります。この点も「働き方改革」の根底にある背景といえそうです。 ※現在続きを執筆中です。