MBO(目標管理)とは?OKRとの違いやメリット・デメリットから設定のポイントを解説

MBOは、企業の目標を達成するために取り入れたい指標の1つです。正しく運用しなければ、間違った方向へ進んだり、かえって売上が低下したりする恐れがあるため注意が必要です。ここでは、MBOとは何か、そのメリットとデメリットから設定のポイントまで詳しくご紹介します。

目次

MBOとは

MBO(Management by Objectives)は日本語で「目標管理」のことで、個人やチームごとに設定した目標の達成度を管理する手法です。P.F.ドラッカー氏が1954年に出版した「現代の経営」で提唱したことで話題を呼び、日本でも多くの企業がMBOを導入しています。

MBOは、目標達成のために必要なタスクにかけた時間や成果を可視化して、業務効率化やモチベーションアップに寄与します。

それでは、MBOが日本企業にどれぐらい導入されているのか、またOKRとの違いについて詳しくみていきましょう。

MBOは日本企業にどれぐらい導入されている?

MBOは、従業員数300人以上の日本企業のうち約9割が導入しているといわれています。日本企業の風土とMBOは相性がよく、適切に運用することで収益力の強化に繋がります。

MBOが日本で普及し始めたのは1960年代初頭です。その後、バブルの崩壊によって到来した不況を乗り越えるべく、1980~1990年代に急速に普及しました。

MBOとOKRの違いは

MBOとOKR(Objectives and Key Results)は混同されやすい手法です。OKRは日本語で「目標と主要な結果」を意味しており、個人の能力を引き出すことを目的として会社全体が取り組みます。対してMBOは個人やチームごとに目標を設定し、評価制度として機能します。

OKRは60~70%で目標達成としますが、MBOは100%が達成基準となります。OKRなら、高めの目標を設定することで個人の能力を引き出せますが、MBOは現実的に達成できる数値を100%に設定するため、そのような効果は得られません。

その代わり、MBOの達成度をそのまま給与に反映できます。

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MBOを設定するメリット

MBOを設定することで結果的に企業の収益アップが期待できます。これは、MBOに次のようなメリットがあるためです。

「やらされ感」がなくなる

MBOを設定すると、個々が達成すべき目標が明確化され、個人と組織のベクトルが合うようになります。その結果、個人の目標と組織の目標をリンクできて、自分がなぜこの業務を遂行する必要があるのかを個々が理解できるのです。

上司から指示された業務だけを遂行するのではなく、組織の目標を達成するためにやるべきことを自覚できるようになり、「やらされ感」がなくなります。そして、個々が意欲的に目の前の業務に取り組むようになり、新たなアイデアの創出にも繋がります。

コミュニケーションが活性化する

目標達成に対して意欲的になると、周囲の人にアドバイスを求めたり、フィードバックしたりする頻度が増え、コミュニケーションが活性化します。個々の従業員が刺激を受けることでお互いを高め合えて、競争性が高まることが期待できます。

コミュニケーションが活性化すれば、認識の違いによるトラブルが起こりにくくなるほか、業務効率も各段に上がるため、結果的に企業の収益アップを見込めるのです。

社員が自ら育つ環境を作れる

業務に意欲的に取り組むようになれば、自己成長に対するモチベーションが上がり、社員が自ら育つようになります。教育係は自分の業務に割けるリソースが増え、チーム全体の業務効率が格段に上がるでしょう。

社員を適切に評価できる

目標を達成できたかどうかが明確になるため、そのまま評価制度や賃金制度に反映できます。社員としても、数値化された結果が評価や賃金に反映されると、待遇に対する納得感が増し、モチベーションが上がります。

自分の成果を客観的に評価できる

MBOの達成度には、評価者の感情が組み込まれていません。そのため、誰が評価しても同じ評価になります。社員としても、自分の成果を客観的に評価できるため、自分の課題が明確になるでしょう。課題が明確になると同時に「やらされ感」がなくなることで、スキルアップに積極的に取り組めるようになります。

MBOのデメリット

MBOは、適切に運用しなければマイナスの効果が生まれる恐れがあります。MBOのデメリットと注意点をあわせてみていきましょう。

結果だけで評価されることでモチベーションが下がる場合がある

MBOは目標に対する成果が明確になるからこそ、待遇への反映だけに注目され、仕事の過程や意欲などが評価されない傾向にあります。確かに、成果にだけ注目すれば一時的に業績が上がることが期待できます。

しかし、社員としては高い結果を出さなければ待遇が改善しない状況に疲弊して、モチベーションが下がる恐れがあるのです。目に見えない部分に貢献している社員もたくさんいるため、数字の結果だけで社員を評価してはいけません。

評価する人物の負担が大きい

MBOは評価者の負担が大きいうえに、適切に評価するためのマネジメント力が求められます。このような人物を育成するのにも時間がかかるため、MBOをすぐに適切に運用できるようにはなりません。

リーダーは、アドバイザーやサポート役として社員の能力を引き出せるように取り組む必要があります。ただし、何もかも指導するスタイルでは社員は成長しないため、具体的な行動計画は自ら立案させることが重要です。

MBOの3つのタイプ


MBOには、「組織活性型」と「人事評価型」、「課題達成型」の3つがあり、自社に合ったタイプを選ぶことが重要です。MBOのタイプ別の特徴を詳しくみていきましょう。

組織活性型

「組織活性型」は、社員が自分で目標を設定して自主性を引き出すことが狙いです。社員が自分で目標を決めることで自己責任の要素が強くなり、目標達成に対する責任感を与えられます。その結果、個人とチームが活性化し、企業全体に良い影響を与えるのです。

ただし、目標達成のために必要な行動や達成度を確認する評価方法が不明瞭になりやすく、運用が難しい方法と言えます。

人事評価型

「人事評価型」は、MBOを評価基準とするタイプの手法で、年功序列制度から脱却したい多くの企業に採用されています。個々の課題を年度目標に設定して、随時評価しながら個々のスキルアップを図ります。また、個々の課題は社員それぞれが自ら設定します。

なお、個々の課題の性質によっては、目標を達成しても企業の収益は上がりません。

課題達成型

「課題達成型」は、企業の目標を達成することを最終目標として、個人の目標を設定する手法です。例えば、年間売上を部門ごと、チームごとに分けて、社員それぞれの目標に落とし込みます。これにより、個々の目標を達成できればチーム、部門の目標が達成できて、最終的に企業の目標が達成されるのです。

MBOの目標設定のポイント

MBOの目標設定を誤ると、メリットを享受できません。MBOの目標は次のように設定しましょう。

明確かつ定量的な目標設定

MBOの目標は明確でなければなりません。例えば、「顧客満足度を上げて個人売上を伸ばす」といった漠然とした目標では、何をもった目標達成とするのか、どれだけの努力が必要なのかがわからないでしょう。

「個人売上20%増加」など具体的な数字の目標を掲げれば、具体的な目標達成基準が一目でわかります。また、現在の売上を踏まえて、20%の増加に必要な営業量を予測できるでしょう。明確かつ定量的な目標設定は、社員が自主的に業務に取り組むために欠かせません。

目標レベルを正しく設定する

目標レベルの設定を誤ると、社員のモチベーションが低下する恐れがあります。例えば、「1ヶ月以内に売上を倍にする」などといった目標を設定すると、努力しても達成できないためにやる気を失うでしょう。頑張っても評価されない状況は、従業員のモチベーションを大きく低下させ、離職率さえも高めてしまいます。

社員それぞれのスキルや経験を踏まえて、現実的に達成可能な目標を定めることが大切です。例えば、「翌月までにアポイント獲得数を30%増やす」といった目標であれば、努力することで達成できる可能性があります。

また、アポイント獲得数を目標に掲げる場合、増やすべきは新規営業数です。このように、目標達成に必要な行動についてもリーダーがアドバイスした方がよいでしょう。

時間軸を設定する

目標は、月単位で設定する必要があります。期間を決めずに目標を掲げても、目標達成に必要な行動量を設定できません。また、いつか達成できればいい目標を掲げても、従業員は意欲的に取り組まないでしょう。

目標達成期日を1ヶ月後に設定すれば、社員は目標達成に向けて毎日努力するはずです。ただし、努力すれば何とか1ヶ月で達成できる目標を設定する必要があります。

目標を達成するために必要な業務の明確化

目標達成に必要な業務の内容と量は、社員が自ら考えることが大切です。しかし、最初は社員だけでは正解にたどり着かない可能性があるため、リーダーがサポートしましょう。目標を達成するために必要な業務の種類と量を自分で導き出せるようになれば、論理的思考が身につきます。

社員とリーダーが密にコミュニケーションをとる

MBOを設定さえすれば、社員が自然に育つとは限りません。MBOの設定に加え、リーダーと社員が密にコミュニケーションをとりながら、目標達成を目指すことが大切です。それによって、コミュニケーション能力や情報収集力などが身につきます。

また、リーダーはマネジメント力が高まるため、効率的な人材育成方法になり得るのです。

SFAで目標管理する

SFA(営業支援ツール)は、社員それぞれの目標を管理できます。さらに、商談フェーズや前回の商談からの日数など、効率的かつ効果的な営業を行うために必要な機能が搭載されています。

SFAのような便利なITツールを導入して、MBOの運用効率を高めることも重要です。リーダーは個々の目標管理が楽になり、社員は目標達成に必要な行動を分析しやすくなります。

まとめ

MBO(目標管理)は、社員それぞれに目標を設定することでモチベーションを高めたり評価制度に役立てたりできる手法です。MBOを設定せずにやみくもに業務を遂行しても、人材は成長しません。MBOを設定し、リーダーと社員が密にコミュニケーションをとりながら目標達成に向けて業務を遂行することで、スキルアップが期待できます。

MBOは多くの日本企業に採用されているため、自社でも導入を検討してはいかがでしょうか。

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