バーチャル経営とは?注目されている背景・構成要素・ミッション・ビジョンを解説

バーチャル経営とは、固定費(≒人件費)を増やさず売上を伸ばす経営のことです。コロナ禍から脱出しつつある2023年においても、リソース確保とコスト調整に奔走する経営者は少なくないでしょう。一方、少子高齢化の波によって「従業員」と「顧客」の減少を招き、容易に売上が伸びない時代でもあります。

このように「コロナ禍」と「少子高齢化」という2つの大きな壁を前に心がけるべき方針が「バーチャル経営」です。

この記事では、バーチャル経営の特徴や注目されている背景・構成要素、ミッション・ビジョンなどについて詳しく解説します。

目次

バーチャル経営とは

バーチャル経営とは、「固定費(≒人件費)を増やさず売上を伸ばす」ための施策を体系的にまとめた経営手法です。

サッカーや野球のプロチームに例えるとイメージしやすいでしょう。サッカーと野球は、どちらも一軍登録選手の数が決まっており、その中で価値(チームとしての総合力)を最大化させるべく様々な施策を講じます。

バーチャル経営でも、固定費としての人件費を増やさす、「いかにプロフェッショナルなチームを組成するか」が重要なテーマとなっています。

バーチャル経営の目的

バーチャル経営の根底には、会社の「図体」はそのままに、「成果」だけを伸ばそうという考え方があります。「バーチャル」は「仮想」と「本質」をあらわす言葉です。バーチャル経営は、ICTによってリアルな経営資源を「仮想化」するとともに、本当に必要な資源を効率よく調達し、組み合わせながら生産性を伸ばす「本質化」を推進します。

経営の世界では、長い間「ヒト・モノ・カネ」が経営の3要素として挙げられてきました。これに加え、近年は「情報」の資産価値が重視され、経営の4要素とも呼ばれるようになりました。バーチャル経営では、これら経営の4要素を踏まえ、「人がやるべき仕事」と「システム・ツールに任せる仕事」を切り分け、仕事の廃棄とともに自動化していきます。

具体的な構成要素は以下のとおりです。

  • ICTツールを用いた業務廃棄と自動化
  • バーチャル社員の活用による人的リソースの確保
  • 会計的な指標に基づいた生産性・付加価値のベンチマーク

こうした要素を組合せ、「最小のコストで最大の効果(=売上)をあげる」ことがバーチャル経営の目的です。つまり、「高効率かつ高付加価値型の経営」がバーチャル経営の本質と言えます。

これまでリアルな世界にのみ存在していた経営資源を、ICTで仮想化・本質化し、ロスなく価値の連鎖を起こすことで、生産性・付加価値を上昇させ、最終的に「売上」「利益」の増大を目指します。

バーチャル経営は、大資本を持たない中堅・中小企業が激しい環境変化に立ち向かい、生存し、成長していくための処方箋のようなものと考えてください。

バーチャル経営が注目されている背景

労働人口の減少

現在の日本は「少子高齢化」の影響によって「労働人口の減少フェーズ」に突入しています。正確には「生産年齢人口の減少」が、日本全体の課題として横たわっている状態です。以下は、経済産業省による将来人口と生産年齢人口の推移予測です。

出典:経済産業省 「2050年までの経済社会の 構造変化と政策課題について」

(平成30年9月、https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/pdf/001_04_00.pdf

少子高齢化の原因は「高齢者の増加」と語られることがありますが、本当の課題は「15歳~64歳の人口減少」です。上の図では水色と赤色の部分が急速に小さくなっていることがわかります。

この状況が続くと、「人材を探そうにも、そもそも人がいない」という状態が深刻化します。優秀な人材ほど大手・大企業に集中するため、中堅・中小企業が従来の「正社員雇用=無期専属契約」で有能な人材を確保する難易度は上がり続けます。

コロナ禍以前も人材不足が叫ばれていましたが、今後はそれが常態化・深刻化していくわけです。

特に「デジタルマーケティング」「ICT活用」などの分野でスキルを持つ人材については、「いつ、どこを探しても目にかなう人がいない」という状況が予測されます。このような時代に、旧来の正社員雇用=無期専属契約だけを想定していては、いつまでたっても「駒」が揃わず、事業を回すことができません。

EC化とオンラインシフト

コロナ禍では、着々と「オンラインシフト」が進んでいます。人々は感染リスクを少しでも低くするための行動をとり、「不要不急のものはオンラインで済ます」から「急を要する、もしくは必要不可欠なものも、徐々にオンラインへ移行する」ようになっています。

ここ数年、EC市場がBtoC、BtoBを問わず順調に伸びていることは、あまり知られていません。

経済産業省 商務情報政策局の調査によると、日本のBtoC EC市場は2019年度ベースで前年比8.09%増、EC化率は6.76%となっています。金額としては19兆3609億円と20兆円に迫る勢いです。

出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)報告書」P.7

(令和2年7月、 https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf

また、BtoB分野はBtoCよりもEC化が進んでおり、市場規模は2019年度ベースで352兆9602億円(前年比2.5%増)、EC化率は実に31.7%(前年比1.5ポイント増)にまで達しています。

出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)報告書」P.10

(令和2年7月、 https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdf

このようにコロナ禍以前からEC化が進んでいた日本の産業は、今後ますますオンラインへの依存度が高くなるでしょう。コロナ禍はEC化を推進する起爆剤であり、トリガーでもあります。ECは「インターネットを介して行われる価値の交換」とも言い換えられますから、企業にはICT活用を含めたDX対応が求められます。ICT活用によるDXは、バーチャル経営の「本質化」と非常によく似ており、バーチャル経営が求められる理由のひとつと言えるわけです。

DX対応の本格化

ここ数年で一気に市民権を得た「DX(デジタルトランスフォーメーション)=デジタルによる事業変革」は、実現化フェーズに突入しようとしています。

DX対応は高付加価値、高効率経営の核であり、さらに掘り下げていくと「業務廃棄」と「自動化」が要であることがわかります。

バーチャル経営はICTを活用した業務廃棄や自動化を含むため、DX対応と親和性が高い方法論です。

バーチャル経営の鍵「バーチャル社員」とは

バーチャル社員とは、組織・雇用・勤務形態に依らず、純粋に「仕事の遂行」に必要な能力を持った「本質的な」人材のことです。「人材不足」に対する処方箋として、バーチャル経営では「バーチャル社員活用」を提唱しています。

主にオンライン上でのやり取りで「必要な時に」「必要なスキルを」提供してもらいつつ、長期的な関係を構築することが、バーチャル社員活用の要旨です。

世間にはさまざまな事情から、一定以上のスキル・能力を持ちながらも「正社員雇用=無期専属契約」を結べない人たちがいます。こうした人材のリソースを上手く活用し、プロフェッショナルなチームの一員にしていくわけです。

バーチャル経営と既存の戦略・経営方針との共通点

バーチャル経営は「大資本を持たない中堅・中小企業」におすすめできる考え方です。中堅・中小企業の生存戦略としては、もはや古典ともいえる「ランチェスター戦略」やコーポレートトランスフォーメーションのベースともなった「両利きの経営」があります。

ランチェスター戦略

戦争の法則とも呼ばれ、企業が持つ資源(ヒト、カネ、ノウハウ)などを戦力におきかえて、生存のための戦略を導きだす考え方。弱者の戦略と呼ばれる第1法則と、強者の戦略と呼ばれる第2法則が土台となる。

両利きの経営

新規事業の開拓(探索)と既存事業の強化(深化)の両輪が、企業の成長力・生存力を高めると説く経営理論。すでに利益を上げている事業の利益率を高めつつ、積極的に「転身」の可能性を探ることにより、環境変化や破壊的イノベーションへの対応力を強化する。

これら2つの経営戦略は、いずれも有限な資源を最大限に活用し、生産性と付加価値を高めることにつながります。この点はバーチャル経営も全く同じです。

バーチャル経営の基本的概念

バーチャル経営の基本的概念は以下のとおりです。

  • 大資本を持たない中堅・中小企業が激しい環境変化の中で生存し、成長し続けるための処方箋
  • 固定費を伸ばさず(=人件費と会社の規模を変えず)売上を伸ばす
  • 限られた人件費の中でプロフェッショナルなチームを組成する
  • DXなど企業改革のベースとなる
  • バーチャル経営の構成要素
  • ICTツールを用いた業務廃棄と自動化
  • バーチャル社員活用による人的リソース確保
  • 会計的な指標に基づいた生産性、付加価値のベンチマーク

これらはバーチャル経営の骨子ともいえるものですが、その上段には「ミッション」と「ビジョン」があります。経営者の方は当然ご存じだと思いますが、経営には「手法」よりも先に、ミッション・ビジョンがあるべきです。

バーチャル経営のミッション・ビジョン

ミッションとは「社会に対してどのような価値を提供したいか(すべきか)」を定義したものです。「企業の存在意義」と言い換えることもできます。例えば「世界から○○を無くす」「多様な働き化の実現に寄与する」など、抽象的かつ視座の高い内容が多いでしょう。

これに対してビジョンとは、「ミッションを達成することで経営者が成し遂げたい”将来像”」や「ミッションを達成するための行動指針」を指します。目標や方向性と言い換えても良いかもしれません。

大企業の場合、ミッションやビジョンは「社会への貢献」や「生活、文化の創造」などが多いと思います。しかし、ミッションやビジョンがそのまま経営手法に反映されているかといえば、疑問が残ります。企業規模の大きさゆえに、「看板」には大多数の公約数的な内容を含む必要があるため、致し方ないことかもしれません。

中小企業も基本的には同じですが、中小企業の場合、経営者の思想・視野・視座がリアルに社内に浸透しやすいという違いがあります。したがって、ミッション・ビジョンと経営手法・ビジネスモデルのつながりは、大企業よりも強いといえます。

では、実際にバーチャル経営におけるミッション・ビジョンを紹介していきます。バーチャル経営では、以下のようなミッション・ビジョンを掲げています。

バーチャル経営のミッション

  • 従業員の物心両面の幸福を実現する
  • 場所と時間の制約を超え、個性が光る新しい働き方を提案する
  • 自社と顧客を成功に導くチームを組成し、新しい価値を提供し続ける

バーチャル経営のビジョン

  • 先端技術+自動化による新規事業創出「プロジェクトドライブ」の浸透
  • 新規事業構築のアウトソースの提案と浸透、またその分野の先駆者となる
  • 成長力を維持できる人材の獲得
  • ペイフォワード(見返りを期待しない親切の提供とその連鎖)に参加できる人材の集団を目指し、次世代への貢献を目指す

これらは、ベンチャーネットのミッション・ビジョンを踏襲しつつ、バーチャル経営で重視する施策を組み合わせたものです。例えば、バーチャル社員やバーチャルチームは、ミッションの内容(物心両面の幸福、場所と時間の制約を超えるなど)が色濃く反映されています。

これからバーチャル経営を読み進めていく中で「単なるICTを使った効率化対策では?」と感じることがあるかもしれません。しかし、これについては明確に否定しておきます。

単なる効率化であれば、人件費を含む固定費だけを下げる仕組みを徹底するのが最も手早く、即効性があるでしょう。しかし、バーチャル経営は固定費を減らすことだけが目的ではありません。新しい働き方であるバーチャル社員とともに、チームを組み、プロジェクトを走らせ、付加価値を生み出し、企業の成長を精緻にコントロールしていこうという思惑が込められているのです。

バーチャル経営のミッション・ビジョンの根拠

バーチャル経営では、今後の日本を襲う「混乱と衰退」を乗り切るために、このようなミッション・ビジョンを掲げました。

混乱とは、具体的に言えば「トレンドと市場の発生および消滅が予測できない様子」を指します。現代のビジネストレンドは、市場の発生と必ずしもリンクしておらず、市場が明確に発生しないうちにトレンドだけが先行し、いつの間にか消滅しているケースが増えています。

こうした中で、迅速かつ的確にビジネスを立ち上げるには、既存の雇用や事業部といった考え方では不十分なのです。もっと有機的で、素早く、付加価値を生み出すことを念頭に置いた体制が必須になってきます。

また、「衰退」についてはすでに多くの方がご存じのように、日本の人口減少や市場の縮小が挙げられます。人口減少と市場の縮小で、挑戦の機会自体が少なくなる中で、できる限り成功の確率を上げ、失敗のダメージを減らしていくことが企業の生存力を左右するでしょう。

経営者には、いついかなる環境でも生存・成功・成長が求められます。混乱と衰退の中にあっても、事業を営む以上、これらから逃れることはできません。

バーチャル経営では、混乱と衰退の海を船長(経営者)が船員(社員)とともに渡りきるための、羅針盤を提供したいと考えています。

バーチャル経営の構成要素

バーチャル経営は「仮想化と本質化」を主としつつ、「人(≒固定費)を増やさずに売上を伸ばす」ための手法を体系化したものです。「何か難しいことをやるのでは?」と感じるかもしれません。しかし、その本質は従来の経営理論を一部踏襲しています。

つまり、経営者であれば当たり前に気にかけていることに対し、これまでとは異なるアプローチで解決を試みているわけです。

従来の経営理論は、経営の3要素「ヒト・モノ・カネ」に「情報」を加えた「4大経営資源」の運用方法が大半を占めています。経営戦略の古典ともいえる「ランチェスター戦略」、次世代の経営戦略のお手本ともいえる「コーポレートトランスフォーメーション」や「両利きの経営」も、突き詰めれば経営資源の運用方法を解説したものなのです。

バーチャル経営もこの点は何ら変わりがありません。ただし、バーチャル経営では、これら経営の4大資源を、ICT(通信技術を活用したコミュニケーション)によって仮想化・本質化していくことで、生産性と付加価値を高めようという試みを提案しています。

また、「大資本を持たない中小・中堅企業がいかに組織を肥大化させず、プロフェッショナルチームを組成するか」という視点も大切にしています。

「優秀な正社員」「潤沢な資金」「ブランド力」が無い状態から、いかに高付加価値な企業へ変革していくか。バーチャル経営には、これを実現するための工夫が詰め込まれています。

ここまで解説した前提を踏まえ、バーチャル経営の構成要素を見ていきましょう。

バーチャル経営の構成要素は次の4つです。

  • 人と労働力の「本質化」
  • 会計的数値による「資金、生産性、付加価値の計測」
  • デジタルマーケティングによる「販促と集客」
  • 高効率で価値の連鎖を生む「自動化」

人材と労働力の本質化

前回の記事でも紹介したように、日本は「労働力の減少フェーズ」に突入しました。バーチャル経営では「できる人材との専属契約が難しい時代」に、人材と労働力を効率よく確保するため、以下のような施策が必要だと考えています。

バーチャル社員

バーチャル社員とは「本質的な能力を持った人材」のことです。雇用形態や勤務地などに依存せず、「必要なときに、必要なスキルを提供してもらう人材」を確保し、なおかつ中長期的な関係を築くことがバーチャル社員活用の肝です。バーチャル社員を上手く活用することで、固定費(≒人件費)をできるだけ抑制しつつ、ハイパフォーマンスなプロフェッシュナル部隊の組成が可能になります。

クラウドソーシング活用

クラウドソーシングは、発注者(特定のタスクを発注したい企業)と受注者(時間、スキルを提供して報酬を得たい人材)をインターネット上でマッチングし、アウトソーシングを成立させる仕組みです。近年は専門的なスキルを持つ人材の登録が増えており、バーチャル社員候補を発掘する場としても役立ちます。

RPA

RPAは、「ロボット・プロセス・オートメーション」の略称で、作業ロボットによって単純作業を自動化するツールを指します。データ入力と出力・ドキュメント作成といったバックオフィス部門の雑務が自動化できるため、業務廃棄によるリソース集中や省人化対策として優秀です。弊社でも国産RPAツール「WinActor」を取り扱っています。

AI-OCR

AI-OCRは、従来のOCR(Optical Character Recognition/Reader)のように画像化された文字情報をテキストに変換する技術ですが、AIとの組み合わせによって認識精度が劇的に向上しています。例えば、帳票の画像データからテキストを抜き出してCSVファイルに自動変換したり、AI-OCRとRPAを連動させ、紙書類の電子化からデータ入力までを自動化したりと、これまでのOCRでは実現できなかったレベルの自動化が可能です。ベンチャーネットでも、AI-OCR「DX Suite AWS版」と国産RPA「WinActor」を連動させた業務自動化ソリューションを提供中です。

会計的数値による「資金、生産性、付加価値の計測」

バーチャル経営では、定量的な指標を用いた資金・生産性・付加価値の計測も推奨しています。なぜこうした指標が重要なのかというと「効率よく稼ぐ力」を上げることに役立つからです。ベンチャーネットでは、以下5つの指標を特に重視しています。

ROA

ROAとは「Return On Assets」の略であり、日本語に訳すと「総資産利益率」です。ROAは、

ROA(%) = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

という指揮で求められます。ROAが高い企業は、「資本を使って効率よく稼いでいる」と言えるため、優良企業の判定基準として使われることが多いです。ます。一般的には「ROA5%」以上が優良企業の基準となりますが、ベンチャーネットでは20%を推奨しています。

経常利益

「従業員1人あたりの経常利益」も「稼ぐ力」を測るための重要な指標です。従業員ひとりあたりの経常利益は「限界利益から固定費を差し引く」ことで求められ、上場企業平均で200万円ほどです。経常利益は「固定費の削減」で増大するため、ICTを使った業務廃棄・自動化がダイレクトに影響する分野といえるでしょう。

付加価値

ここでいう付加価値とは「従業員一人当たりの付加価値額」であり、生産性とも言い換えられます。資本金10億円以上の大企業における生産性(従業員一人あたりの付加価値額)の目安は「1300万円台後半」です。これに対し、中小企業(資本金1億円未満)の場合は、「550万円前後」であり、実に2倍以上の差があります。中小企業が目指すべきゴールは「1000~1300万円前後」にあると言えるでしょう。付加価値を増大させるには、

  • バーチャル社員活用による少数精鋭の体制を確保
  • SFA/MA/SEO/RPAなど先端テクノロジーをフル活用し、顧客課題に応じた柔軟かつ良質なサービス提供

という2つのアプローチが効果的です。

労働分配率

労働分配率とは「付加価値に占める人件費の割合」です。ここで言う人件費には役員報酬も含みます。バーチャル経営では、労働分配率の上限として50%程度(従業員人件費30%、役員報酬20%程度)を推奨しています。

F/M比率と損益分岐点比率

F/M比率は「固定費を粗利で割る」ことで算出され、企業の安定性を評価するための指標です。F/M比率が高いほど安定性の高い企業と言えます。

F/M比率=固定費÷粗利×100

バーチャル経営では、F/M 比率の上限目安として「80%」を推奨しています。

また、損益分岐点比率は「売上全体に占める損益分岐点売上高の割合」です。この数値が低いほど「不測の事態に耐えやすい」と言えます。バーチャル経営では、売上が20%~50%消失しても耐えられるように、損益分岐点比率70%以下を推奨しています。

デジタルマーケティングによる「販促と集客」

デジタルマーケティングは、複数のチャネル・タッチポイントを活用し、消費者行動をリアルタイムに収集・分析しながら「売れる仕組みづくり」につなげる効果を持ちます。
バーチャル経営では、より精緻に「優良顧客となりうる企業」を把握し、リード獲得・ナーチャリングを進めるために以下の施策を推奨しています。

BtoBデジタルマーケティング

BtoB領域におけるデジタルマーケティングは、「コンテンツマーケティング」「SEO」「広告」に加えて、MA・SFAなどのICTツールも活用します。また、「ABM(アカウントベースドマーケティング)」を用いて「得意客になりそうな顧客の選別と適切なアプローチ」を進め、優良顧客と効率よく出会うことも目的としています。

コンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングとは、コラム記事などを通じて「顧客の課題、悩み」にフォーカスした情報を提供するマーケティング手法です。顧客の検索意図やペルソナを理解したうえでコンテンツを作成し、サイト流入とリード獲得を繰り返しながら、LPや商品ページでの成約を目指します。

コンテンツSEO

SEOとは「検索エンジン最適化」のことで、「狙ったキーワードで検索結果の上位表示を目指すための施策」を指します。具体的には自社のコーポレートサイトやオウンドメディア内に、キーワードを意識したコンテンツを配置したり、サイト構成を見直したりといった施策が該当します。もちろん、読みやすく訴求力の高い文章の作成も含まれます。SEOによる集客では、GoogleやYahooなどメジャーな検索エンジンのアルゴリズムやトレンドを理解することが大切です。

インターネット広告出稿

インターネット広告は、ターゲット・用途・目的などに応じて、次のように複数のタイプを使い分けていきます。

  • 検索キーワードに対応したテキスト広告を配信する「リスティング広告」
  • 提携先のWebサイトに広告を掲載してもらう「アフィリエイト広告」
  • 複数媒体に広告を配信する「アドネットワーク広告」
  • 消費者の閲覧履歴から後追いで広告を配信する「リターゲティング広告」
  • SNSユーザーを対象にした「SNS広告」

雑誌やチラシ、マスメディアへの出向に比べて予算と効果のバランスがとりやすかったり、具体化な効果測定がしやすかったりといったメリットがあります。

ホワイトペーパー

ホワイトペーパーは、うまく機能すればリード獲得からナーチャリング、問合せ(商談化)まで効果を発揮するマーケティングツールです。一般的な記事コンテンツとは異なり、リードの「数」よりも「質」に重きを置いていることも特徴です。

ホワイトペーパーの作成では、市場動向やトレンドの分析を中心としながらも、自社製品・サービスの強みを自然に混ぜ込む手法が一般的です。過剰に自社製品・サービスを売り込まないことで、見込み客の課題に寄り添う姿勢を見せ、信頼関係の構築を目指します。

このことが、強いリード獲得につながっていくわけです。また、ダウンロードの条件にメールアドレスや連絡先の記載を求めることで、半自動的に見込み客の名簿を作成できます。

メールマーケティング

メールマーケティングも、ホワイトペーパーと同じく顧客の課題に寄り添った内容を配信し、信頼関係を構築する手法です。ただし、メールマーケティングはホワイトペーパーよりもプロアクティブ(能動的)で、かつ段階的という特徴があります。また、メール送信先リストの構築には、前述のホワイトペーパーや名刺交換などで宛先を収集しなくてはなりません。そのため、施策を実行するまでにはある程度の準備期間が必要です。

LP(ランディングページ)

LPとは直訳すると「着地ページ」であり、検索や広告から流入した訪問者が、最初に目にするページを指します。その目的は「訪問者のアクションを促すこと」であり、自社製品・サービスの訴求を優先することが多いです。コンテンツSEOや広告と組み合わせることで、訪問者の意思決定を促す効果があります。うまく機能すれば「インターネット上の敏腕営業マン」と化すツールです。

SNS

SNSマーケティングは、自社アカウントからの情報発信やコミュニケーションを通じて、顧客の「エンゲージメント(絆)」を高める効果があります。エンゲージメントが十分に高まった顧客は、ロイヤルティの高い「リピーター」「ファン」など、自社に対して長期的に利益をもたらす存在になりやすいため、SNSマーケティングに成功すれば大きな資産となります。また、SNSは「いいね!」や「お気に入り」「拡散」といった反応がリアルタイムに可視化されることから、施策の効果測定が容易なこともメリットです。

動画

テキストベースのマーケティングが徐々に飽和し、動画マーケティングが注目され始めました。動画によるマーケティングは「雰囲気」「ストーリー性」「世界観」などを伝えやすく、昨今の動画共有サイトの人気も相まって急速に広まっています。また、VSEO(動画コンテンツの検索エンジン最適化)を施すことで、動画サイト内での認知拡大効果も期待できるでしょう。ベンチャーネットでもビジネスアニメーションを主体としたYoutube動画作成・VSEOサービスを提供しています。

ウェビナー

ウェビナーの強みは、事前に告知されたテーマに興味を持った参加者を対象とするため、「見込み客に近い良質なターゲットを集めた状態」からスタートできることです。また、ストリーミングや動画ベースであることから視覚的にわかりやすく、潜在顧客層に強くアピールできます。さらに、質疑応答など「双方向型のコミュニケーション」も可能なことから、信頼性を高めやすいというメリットもあります。ただし、単なる対談や資料解説とならないように、企画にはそれなりの労力を投入すべきです。ベンチャーネットでも、ウェビナー企画・チューニングサービスを提供しています。

インサイドセールス

インサイドセールスは、自社WebサイトへのアクセスをMAやCRMなどを用いて分析し、顧客の行動パターンや興味・関心の傾向を特定したうえで、「訪問無し」で営業活動を展開する手法です。人件費や移動コストなどを最小化しつつ、強いリード獲得・商談化率向上といった効果が見込めます。ただし、インサイドセールスの材料となる「アクセスの可視化・具体化」には、既存のWebサイトでは不十分かもしれません。ベンチャーネットでは、匿名ユーザーの中からインサイドセールスの対象を見つけ出すため、マルチエントランス型Webサイトへのリニューアルを推奨しています。

ICTツール活用

これまで紹介したようなデジタルマーケティングによる販促・集客は、ICTツールの活用が前提です。バーチャル経営においてICTツールは「人材と労働力の不足」を補うだけではなく、新たな付加価値を生み出す起点と位置付けています。特に以下4つのツールは、デジタルマーケティングの実行に欠かせません。

  • RPA
  • AI-OCR
  • CRM
  • SFA

高効率で価値の連鎖を生む「自動化」

「人(=固定費)を増やさず売上を伸ばす」ためには、「人とシステムの役割分担」を明確にし、システムの担当分野を可能な限り増やしていくことが重要です。また、システムは「自動化」をゴールとして構築し、積極的に業務廃棄を進めていく必要があります。ベンチャーネットでは、以下4つのソリューションで業務廃棄と自動化を支援しています。

  • The AUTO
  • Payment Automation
  • ABMオートメーション
  • SEOオートメーション

バーチャル経営におけるバーチャルトランスフォーメーションの実践

バーチャルトランスフォーメーションとは、広い意味で言えば「現実世界の変革、仮想世界との融合」です。技術的な要素としては、VRをはじめとしたxR系や、メタバースなどが挙げられるでしょう。また、APIエコノミーやAI活用もバーチャルトランスフォーメーションの構成要素です。

これまでの企業は、事業運営において、製・販・在などを鎖のようにつなぎ、取引コストや人材調達コスト、調整コストを低減させることで付加価値を生み出していました。いわゆる「サプライチェーン」「バリューチェーン」と呼ばれるような存在がこれに該当します。しかし、こうした「価値を生み出す鎖」は、バーチャルトランスフォーメーションによって変わっていくと予想されます。

具体的には複数のICTシステムがAPIで連結され、それに伴って製・販・在が連携され、コストの最適化が進みます。また、サプライヤーやキーとなる人材などは、AIがオンラインでマッチングを担うことにより、適正価格での調達が可能になるのです。

このようにAPIやAIを核として企業内外のシステムが連携・自動化されると、事業自体の仮想化や本質化が進みます。事業所や事業部は仮想空間上のみに配置され、社員間の共同作業(会議、ミーティング)や知的労働はすべてオンラインで完結するかもしれません。さらに物理的なオフィスは本社機能を維持するための存在になることも想定されます。

こうした流れの中で、人件費やオフィスの維持コストなどは大幅に削減され、従来以上の付加価値を生み出しやすい土壌が形成されます。このようにバーチャルトランスフォーメーションは、オンライン上で「知の結集」を促し、企業の本質的な価値を大きく上昇させていく可能性を秘めているのです。

バーチャルトランスフォーメーションは、これら仮想化・自動化関連の先端技術をビジネスに取り入れ、DXをけん引する施策として注目され始めました。

バーチャル経営では、バーチャルトランスフォーメーションの実践において、下記の点が重要だと考えています

バーチャル社員活用

バーチャル社員とは、「組織・雇用・勤務形態に依らず、純粋に”仕事の遂行”に必要な能力を持った”本質的な人材”」です。バーチャル社員活用では、オンラインでのコミュニケーションを基本とし、雇用形態や勤務地といった物理的・法的な制限を取り払い、仕事の遂行に必要な能力を持った人材をアサインします。

また、能力や適性に応じて徐々に権限や裁量を拡大させていき、ゆくゆくはオンライン上で通常の社員と同等以上の仕事を任せていくのです。バーチャル社員は、労働力の仮想化、本質化に向けた施策であり、バーチャルトランスフォーメーションの核であると考えています。

また、バーチャル社員は、メタバースとの相性が極めて良い存在です。メタバースでは、3D仮想空間上で、現実世界と同等以上のコミュニケーション・共同作業が可能だからです。

例えば、アバターをまとってオンライン会議に参加したり、規約やコーディングのレビューを行ったりと、知的生産の大半はメタバース内で完結できてしまいます。もし、バーチャル社員をメタバース上で使うことができれば、勤務地・勤務時間の制限はほぼなくなると考えてよいでしょう。

バーチャルトランスフォーメーションの実践では、「バーチャル社員の活用(本質的人材の活用)」「ICTツール活用」「API連携による全業務のオンライン化(仮想空間シフト)」という3点を意識しながらバーチャル力を高めるべきでしょう。

ICTツール群の運用

SFAおよびCRM

SFAは「営業業務の自動化」を、CRMは「顧客情報の蓄積および営業・マーケティングと他部門との連携」を促すツールです。SFAやCRMは、日々の業務から得られる営業データ・顧客データをリアルタイムに集積します。また、複数のデータを連動させて経営判断の糧にできることも強みです。ベンチャーネットでは、CRMとして「NetSuite」を、SFAとして「Salesforce」を推奨しています。

RPA

RPAは手作業で行っていたアナログな業務を自動化するツールです。一般的には、手作業の自動化ツールとして知られていますが、正しく運用することで業務プロセス全体の自動化も見えてきます。例えば、国産RPAのひとつ「WinActor」を名刺管理サービスと連携させることで、顧客企業の人事異動情報を自社のデータベースに反映させ、常に最新の状態に保つことができます。従来であれば、「営業担当者からアシスタントへ情報を伝え、アシスタントが自社データベースに入力する」といった作業が必要でしたが、これをすべて自動化しているわけですね。業務プロセスがすべて自動化されるため、コミュニケーションコストや人的リソースの削減が可能になります。

MA

MAはマーケティング業務の自動化と、営業部門との連携を目的としたツールです。投入されたデータ(リード)をもとに、ナーチャリングのサポートを行っていきます。さらにSFAとの連動により、属人性を排除しつつ専門性を高めた営業・マーケティング施策「The model」の実行も可能です。The modelは、Salesforce社の躍進を支えた施策で、業務を小さなプロセスに区切り、可視化・数値化を進め、連携を強化することが要諦です。
具体的には、次のようなサイクルの構築が可能です。

  • MA(Eloqua/Pardotなど)がWebから獲得したリード(見込み客)をKPIで選別する
  • MA内部でナーチャリング(育成)フェーズへ移行、SFAへのデータ連携を行う
  • インサイドセールスチームがSFA上で情報を管理しながら、アプローチ・商談化を行う
  • ロス(失注・離脱)については、別バージョンの商品やサービスを代わりに提示すること

で再度ホットリード化を目指す
ベンチャーネットではではMAツールとして「Eloqua」「Pardot」を推奨しています。

SEO

インターネット上への情報公開は、「情報を設置する」だけでは不十分です。つまり、検索エンジンのアルゴリズムや検索意図をとらえつつ、集客につなげるための背策が必要なのです。この背策がSEOです。SEOは既存の情報資産を活用し、広告・宣伝効果を高められるため、実はとても合理的な施策です。専門の広報・広告部隊を持たない企業であっても、安価に広報・広告部隊を形成できる可能性があるからです。

バーチャル力養成

バーチャル経営では、バーチャルトランスフォーメーションを推進する力として「バーチャル力」という考え方を提唱しています。バーチャル力とは、「バーチャル社員を既存組織へ柔軟に組み込み、ITツールを素直に・的確に使いこなす組織風土を高めながら、改革の下地(有機的で柔軟性に富んだ新陳代謝の活発な組織)を構築する力」です。
これまで紹介したバーチャル社員活用やICTツール運用は、すべて「バーチャル力」があってこそ効果を発揮します。バーチャル力は具体的なスキルではありません。しかし、企業内部に、「変革を受け入れる土壌」を形成するものです。バーチャル力を高める方法は企業によって異なりますが、「ICTツール群を正しく運用し、成果を出す」ことである程度は高められると思います。

まとめ

バーチャル経営は「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源を、仮想化と本質化によって高効率に運用し、売上を伸ばしていくための手法です。今回、解説した内容を参考にバーチャル経営に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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