時代により変わってきた「在宅ワーク」の意義

働き方改革に伴い、広まってきた在宅ワークやリモートワーク。
いつでもどこでも働けるため、育児や介護を行う労働者の強い味方になります。

しかし、元々サテライトオフィスやリモートワークがスタートした理由は、全く別の要因も絡んでいるよう。
引用記事に載っている「会社以外での働き方事情」を見てみると、現在まで続く日本の労働問題が浮かび上がってきます。

まずリモートワークやサテライトオフィス、コワーキングスペースがいつから登場したのか?ですが、意外に歴史は古く昭和時代、80年代半ばにはサテライトオフィスが登場。

ただしこの時代のオフィスは、多分に実験の意味合い。
実施したのはNECやNTTなどIT時代を担っていく企業です。
インターネット普及など考えられもしない時代ですが、「情報通信技術を使って、離れた場所でも仕事をする。」という考え方自体は、かなり早くからできていたのですね。

この時代に、こういった実験がスタートした背景には「地価の高騰」があります。
バブル期の都心の地価はかなりの高額。
オフィスを置いておくだけで、かなりのお金がかかります。また当然都心に家は買えない。
つまり企業もそこで働く社員も、郊外で働くメリットが大きいということで、始まった仕組みなのです。

この時代には、大学や企業の研究所などの都心離れが進んでいます。
物理的に一極集中がきつくなってきた時代、インフラを整備して複数の場所で仕事ができないかという模索が始まったのです。
ただし、この時代はまだまだそれに伴う技術が追い付いていません。

また当時は、給与所得が高かった時代、郊外地に住むことが「逆にオシャレ」という余裕もありました。
「リゾートオフィス」と呼ばれるものですが、この流れが今の「ワークライフバランス」につながっているのですね。

現在のワークライフバランスは必要に迫られて、また自分の将来を考えてといった堅実なものですが、当時は「仕事一辺倒はダサい。新しい生き方もアリ」といった側面が強かった。
同じことを行うのでも、姿勢が「攻めであった」という特徴があります。
バブル経済崩壊と共に、この余裕は消滅。リゾートオフィスはしばらくなりを潜めます。

顕在化してきた「地方衰退」

一極集中を回避する過程で見えてきたのが「地方の過疎化」です。
すべてを東京本社にすることで、地方都市から人が流出。こういった状況を防ぐためにも、サテライトオフィスなどを地方に設ける必要性が出てきました。

この流れの1つとして「リゾートオフィス的な発想も都会人にはアリ」、という考え方も残っていったよう。
そして、この流れを後押ししたのが、阪神淡路大震災を筆頭とする災害。
皮肉なことに、災害により現実に通勤がままならない状況ができました。
そして神戸のような大都市では、都市機能がマヒする損失も大きい。

「やむにやまれぬ事情」で行った在宅ワークなど「会社外で働く」という方法が、意外に有効なことが判明。
また阪神淡路大震災の頃から、大規模災害が日本をたびたび襲うようになります。
災害対策の一環として、サテライトオフィスや在宅ワークなど「「出社しない働き方」を整備しておくことが有効。
リスク管理として捉えられるようになったのです。

地方の衰退は現在、地方内での格差などがよけいに広がりつつある状態。
また災害はいつ起きてもおかしくない状態。この2点を踏まえたうえでの労働環境作りは、現在進行形と言えますね。

就業事情の変化

そして現在、特定の会社がいつまでも続く状態ではなくなっており、副業が「働き方のリスク回避」とも言われています。
この状況が特定の企業の支所である「サテライトオフィス」だけでなく、万人が利用できる「コワーキングスペース」などに発展。
より時間、場所共に柔軟性を持てる状況になった代わりに、まだまだ終身雇用制の価値観が残ったままの部分もある。
そのため、個人が自由に働く環境整備ができているとは言い難い状況が続いているというわけです。

サテライトオフィスや災害時のリスク回避策を取るのは企業。
主に企業や自治体といった大規模組織の事情に伴い進んできた「通勤しなくて済む就業」ですが、ここに個人の多様な働き方が参加。
両方がブレンドされた状態が平成最後の姿というわけです。

個人の多様な働き方がまだまだ社会で認められていない、給与や社会保障など、労働者の権利が伴っていないというのが現状。
現在の課題は、個人の多様な働き方をどう守るかという点です。

「出勤しない働き方の物理的な整備は、かなり長い時間をかけて進んでいますが、育児や介護、副業など労働者個人の事情に合わせて整備されているとは言い難い。
それと同時にサテライトオフィスを作ってきた大企業が、これからどんな形になっていくのかも未知数です。

個人の働き方、大企業のあり方、地方創生、ここに災害時のリスク回避を加えた4つの要素が今後の在宅ワークやリモートワークの課題と言えそうです。