改革の骨子をおさらい

2019年4月より、いよいよ働き方改革関連法案がスタート。
長時間労働是正を筆頭に、日本の労働環境が大きく変わろうとしています。
あらためて、引用記事をもとに、改革の骨子とその問題点を見ていきましょう。

まず最大の改革点は「長時間労働の是正」。
従来の労働基準法も「残業フリー」ということではなく、時間の規定はありました。
しかし例外を設けることが可能で、罰則もないことから「過重労働」が問題に。
また「長時間労働が当たり前」という風潮では、子育て中の女性などが、労働市場に参加しづらいという問題点もあります。

単純に「過重労働」を減らす意味もありますが「無駄な残業をカット」することで、会社重視ではない働き方ができる。仕事や家庭、趣味のどこに力点を置くのか、労働者の裁量が大きくなります。

しかし、その反面、すでに「ノー残業デー」を実施している企業も多いですが、有形無実になっている企業も少なくない。
17時以降は社屋の外で仕事をしている、翌日に仕事が繰り越されているといった逆効果も見られます。

過重労働を法律で禁止したことには大きな意味がありますが、肝心の作業内容が追い付いてない、10のものを10やるのではなく、8行い、2は繰り越される。すると、翌日の労働効率が落ちるなどの問題が出始めています。

かといって、労働量自体を8にすると、企業の生産量自体が落ちる。
10の量を、8をこなす時間で行う方法が必要。
そのためRPAなどITの導入も大きなポイントになってきます。
大企業の場合は、まず動線を整理して、企業全体の作業を把握すること。そのうえで各部署に有効なシステムを組むことが大事。

当然、このシステム管理責任者も必要になります。ITの知識だけでなく、実際の運用現場をきちんと知っている人間であることが重要。
また中小企業の場合、元々分業システムではありません。
1人が何でも屋をやっている分、作業の仕分けが難しい。大企業と同じ理屈でITを導入しづらいというハンデがあります。

また企業の大小も問わず、リスク管理も大事になります。すべての労働者にもそういった意識をもってもらう仕組みつくりも重要。

また「長時間労働是正」のためのIT導入は、どちらかというと「守り」の導入。
働き方改革の目玉の1つに「生産性向上」がありますが、「守り」だけでは従来の無駄を省くレベルで終わってしまいます。当然、収益改善はどこかで打ち止めになる。

企業の生産性を上げるには、ITを活用した「攻め」の発想が必要。
これが今後の大きな課題と言えそう。

専門職を育てる壁

また今回の働き方改革で問題視されているのが「高プロ」制度。
一定の収入がある専門職には、労働時間を規制する法律を適用しないというもの。
当然過重労働が懸念されます。

また本来この制度に適用される労働者は、かなり大きな裁量を持っていなくてはいけません。
よく大学の教員について言われることですが、目先の利益を出すことが必ずしも有益とは言えない。
近年日本人ノーベル賞受賞者が多いのは、30年程度前の基礎研究の成果と言われています。

先ごろ、抗がん剤として話題になったオプジーボのような薬を作り出すには、その程度の時間がかかるということ。

またオプジーボもまだ臨床現場に登場したばかり。
どんな患者さんに有効なのか、また副作用の問題など、臨床での問題は山積しています。薬1つとってもこれだけの時間と手間がかかる。

目先の利益だけを追う考え方では、こういった世界に通用する商品が生み出せなくなる可能性があります。そういった状況下での高プロ対象者は「体のよい労働時間規制対象者」としか見られない可能性も高くなる。
せっかくの専門職の専門性が活かされないばかりか、労働者として使い捨てにされるという2重の問題が待っています。

長期スパンで生産性を高めるという考え方は、長時間労働の是正のような「労働者側の視点」の話ではなく「企業の視点」での改革。
双方の視点から、高プロ制度を見て行くことが大事になりそうです。

そして今回の改革の目玉の1つが、正規非正規雇用の格差是正。「同一労働同一賃金」です。
一見いいことのように思えますが、両方を同じ扱いにしようとすると、正社員の格が落ちるということも考えられます。
引用記事では、そもそも「ジョブ型雇用」をもう少し取り入れるべきと書かれています。
ジョブ型とは、会社に終身雇用されるような働き方ではなく、1つの場所で1つの目的のために働く雇用方法。

会社のためとなると、転勤や一定時間の労働が必要になる。また横並びの社員が増えますが、ジョブ型の場合、1つのプロジェクトで結果を出せればよい。
働き方自体かなり多様な選択が可能になります。
そして生産性向上にもつながっていくのです。

こうして見て行くと、働き方改革を円滑に進めるには「結果を求める、そのためのプロセスは労働者に任せる」ことが大事。
それと同時に「目先の結果を求めないこと」という矛盾する2つの要素が必要なことがわかります。

この2つの両方に共通するのが「失敗は成功の元」。
結果を出す人間を育てるのには、それ相応の時間がかかります。労働者のやる気をどれだけ引き出せるかが、大きな鍵になります。