女性の意見が反映されない国、日本

男女共同参画基本法の制定から今年で20年、しかし世界の性別格差を評価した2019年のジェンダーギャップ指数は、調査対象153か国中121位。
前年よりさらに低い数値を記録、過去最低の数字になってしまいました。

この数値は、単純に男女の格差を比較しているもの。
労働率は、70番台とマシなものの、管理職の割合や、女性議員の割合が圧倒的に少ない日本。
そのため大きく順位を落としていると思われる。

つまり、日本の場合、企業においても政治においても、大変女性の意見が反映しにくい状況になっているといえる。
現在、働き方改革で男女共同参画をさらに進めているとはいうものの、そのための方針自体が、男性目線での考えられたものといえる。
まず、管理職や政治家の女性の数自体を増やす。それでこそ女性の社会進出は進み、多様性のある職場ができるのではないか。

そういった発想で企業改革を行っている会社、それが資生堂です。
2017年資生堂はUN Womenというジェンダーの平等などを目標とする国連機関と提携を結び、ジェンダーの平等を推し進める企業として、日本社会の性別格差をなくそうとしています。

実は、こういった立ち位置を持つ前の資生堂は「女性に優しい企業」として、有名でした。
デパートのカウンターなどに多くの女性社員を置く資生堂は、早くから育児休暇や時短など「女性に優しい」制度を導入。
女性にとっては、大変働きやすい職場として知られていました。

しかし、2014年、資生堂は「育児休業時の夜勤」など、女性への「優しさ」を返上したのです。
当時、この資生堂の方針転換は「資生堂ショック」と呼ばれ、日本の労働現場に衝撃を与えました。
女性を綺麗にするため、女性に優しい働き方を推進していた資生堂が手のひらを返した、そう思われたのです。女性ユーザーからの批判の声も上がりました。

なぜ、こんなことが起きたのか。
女性の育児などに配慮があるのはよい。しかし、単純に休暇をあげたり、夜勤から解放するだけで、女性の労働者は真価を発揮していると言えるのか。
この期間に、女性は管理職になる機会を失っているかもしれない。
女性を特別視することが、女性を尊重するということなのか。

男性社員にも、育児や介護、その他プライベートな事情は存在します。
そういった社員と同列に扱い、プライベートな事柄に対応していく。
そうして初めて、ジェンダーの平等といえるのではないか。

資生堂はそこに気づき、「女性へのお手盛り」という企業方針を返上したのです。
ですから、現在も資生堂は「事業内保育所を置く」など、女性が働きやすい風土は維持しています。
でもそれは女性へのお手盛りではない、労働者への配慮にすぎないのです。

商品を使うのは誰か

現在、資生堂では、UN Womenとの提携活動の一環として、中高生向けのワークショップを開催しています。
まず「ジェンダーとは何か」そこからどんな問題があるのか、どう解決していけばいいのかを、これから社会に出ていく若手に考えさせるイベントです。

今の若い世代は、性同一性障害という言葉を当たり前に耳にしている。
見た目の性と本人の意識が違っていたり、また恋愛感覚も違っていたりということが当たり前の世代なんですね。
それと同時に、自分たちの住む国が、女性であるというだけで、管理職や政治家の道が遠ざかる社会であることも知っている。

それをどう解決していけばよいのか。
ヒントは資生堂の化粧品を使う顧客は誰なのか?にあります。

資生堂ショック以前の、資生堂ユーザーは「若い女性」をターゲットにしてきた。
若々しい女性タレントが、新作メイクをしている。それに憧れる若い女性が商品を買いに来る。
そして「結婚しても、資生堂では仕事を時短にできるらしい」となる。

これではメーカー自ら、女性の生き方という枠を勝手に決めていることになります。

美しくありたい男性はどうするのか。また高齢者や障がい者の中にも資生堂の商品を愛する顧客は大勢います。
そして、そういった顧客の中には、男性でも女性でもない意識を抱えて、高齢になったという人もいるかもしれない。
そういった人たちが、資生堂に求めるもの、それは等しく「美しさ」です。

男だから女だから、こういった綺麗さをという時代は終わりました。
資生堂のユーザーは、例えば「若さ」や「女性」と言った属性を持つ「人間」なのです。

平等とは機会が平等であること

とはいえ、妊娠出産が可能なのは女性だけ。
また心が女性であっても、肉体的に男性である場合、男性的な肌の特徴を備えています。高齢者にも同じことが言える。

人間の意識とは別に、肉体的なカテゴリーというのは存在します。
全ての人たちが平等に社会参加をしようと思うと、こういったカテゴリーの当事者に話を聞かなくてはいけません。
そのため企業や政治などの集団には、いろいろな属性を持つ人材が必要になる。

資生堂は、女性へのお手盛りから脱却し、「男性女性共に生きていく社会」を作るため、現在、相対的に声が小さくなってしまう女性を応援しているのです。

こういった考え方を企業に活かすのは、現在の日本社会では難しいことも多い。
しかし社会は確実に、こういった方向へ価値観を変えていっているのです。