慣習を破る

働き方改革の大きな目玉である「長時間労働の是正」。
残業時間に法的な罰則規定を設けたことで、一定の効果が見込まれる反面、持ち帰り残業が増えている、仕事の量を減らさざるを得ないなど弊害も多く見られます。

残業が多い仕事といえば、IT業界。
24時間いつでもどこでもつながるインターネットという仕事の性質上、仕事の時間自体が長くなりがち。
しかし、そんなIT業界でも残業を無くした会社があります。それがSCSK株式会社。

SCSKも当初は、長時間労働が当たり前の会社でした。
IT企業という性質上、いつでも顧客からの要望に対応しなくてはいけない。
また24時間頑張り続けることで、ほかの業界を自分たちが支えている、そんな価値観が蔓延している会社でもありました。

しかし、これでは労働量が増える一方。自分たちを犠牲にしてまで、お客様の要望に応え続けることが、果たして会社のためになるのか?
そういった疑問をSCSK社は感じるようになったのです。

そもそも24時間インターネットが使えるのは何のためか。
人々を疲弊させるためではありません。隙間時間を使って、ネットで連絡をする、
買い物をする、そうすることで他の時間を遊びに使ったり、休みを取ったりすることができる。
ユーザーの生活の質を上げるツール、それがインターネットです。
しかし、それを支える会社の社員は、非人間的な働き方をしている、それでいいはずがない。
支えている人間がネットに殺されているようでは「インターネットっていいですよね。」と言えるはずもありません。

そう感じた会社は、残業削減に乗り出します。
まず残業時間の削減、有給休暇の取得率アップに乗り出します。
それが「スマートワーク・チャレンジ20」。残業時間を20%カット、そして有給休暇を20日取得すること。それを目標にするのが、この取り組みです。

当然、裁ける仕事の量、対応できる時間も減ります。残業時間が減る分、給与も減額になります。
しかし、SCSKの役員は、残業代で浮いた金額を給与として還元することを決定。事実上給与は減らず、休みは増えました。

しかし、仕事の量が減っては、給与自体が払えなくなるのではないか。
実はこの活動に取り組むにあたって、SCSKは、ある程度の業績悪化は覚悟するということにしたようです。

そして役員自らが顧客に手紙を出し「長時間労働の是正のため、すべての案件に対処できるわけではない。」ことをお断り。
主旨を述べ、丁寧に説明をすることで、顧客離れを最小限にとどめるようにしたのです。

その結果、同業者でも主旨に賛同し、同じ方針を取ろうとする会社も出て来たようです。
IT業界だからといって、馬車馬のように働く必要はない、そういった姿勢を会社トップが見せようとした。これがSCSKの長時間労働改善における大きな特徴です。

誰のための仕事なのか

何かを変えられない理由を述べる時に「でも、だって」という言葉を使うことがあります。
しかし、そういったことは思い込みであることも多々ある。

日本のIT業界はブラック企業と思われやすい。
その結果人材が集まらず、会社がうまく回らなくなる。他国に後れを取る。
そういった方向性を変えなくては、結局業界自体が縮小していくことになります。

それよりは、社員を大事にする会社を作り、IT業界で自分を活かせるという風潮を作った方がよい。
それを会社幹部が、バックアップしているのがSCSKです。

その結果、過重労働してこそIT業界社員という意識を変えることになり、今では、在宅ワークやテレビ会議など、業務の効率化を進めるアイディアが社員の方からどんどん出始めてきているのです。

そもそも、便利で快適なのがITを利用した社会。
どうすれば、ITでより快適な生活ができるのかという原点に立ち返ることができたのですね。

IT利用というのは、とても便利な反面、よりスピード感を求められるという面もあります。
SNSなどのツールは即返事ができる代わりに「SNS疲れ」という言葉も生んでいます。
ITから離れる時間を持つデジタルデトックスもブームになり始めていますね。
こういったITのマイナス面を、業界自らが改善する提案を行う。
それにより、よりITに親しんでもらうことができます。
そういったことに気づき、会社のトップが率先して実行に移した。それがSCSKなのです。

風通しのよさが会社を変える

トップの意識が変われば、社員の意識も変わる。「モノ言う社員」が増え始めます。
IT業界の場合、リスク管理など絶対に欠かせない作業もあります。
そういったメリハリをきちんと見分け、コントロールをする必要がある。
減らしていい業務とそうでない業務を、トップが絶えず判断していかなくてはいけません。

現在SCSKでは、リスク管理を行う体制も変わり始めています。
仕事の量や質が変われば、当然適切な方法も変わっていく。IT業界の場合、スピードが速いからこそ、会社内での柔軟な対応が必要になってきます。

「忙しいのが当たり前」という慣習を打ち破り、社内の風通しをよくしたことで、逆に対応力自体は増しているともいえます。
長時間労働は時に必要な面も確かにあります。しかし、そこで思考停止してしまう怖さもある。
IT業界のようにスピードを求められる会社こそ、ワークライフバランスという余裕が必要なのかもしれません。