増えていく「プレ介護」

働き方改革を「今」行わなくてはいけない理由の1つに「少子高齢化」があります。
労働人口が減っていく中、限りある労働者にどのように働いてもらい、最大の結果を残すのか?というのが大きなテーマ。

しかし、この視点では「高齢者が増え、働き手としてドロップアウトしていく。」
という考え方しか見えてきません。
そういった高齢者にどうやって働いてもらうか、という議論は盛んですが、現実には、引用記事のように「今、介護やプレ介護状態をする状況」にあり、会社組織が変わってくれるとよいと思っている人も多いのではないか。

まず「高齢者に働いてもらう」という視点ですが、そもそもここで定義される「労働」の基準が「健康な現役世代」になっています。
そこから時間など負担を差し引くと高齢者になるというわけですが、高齢者はそこまで単純ではない。

また先頃、2025年には65歳以上の6人に1人が「認知症」になるという試算が出ています。数にして700万人。
下の世代の人数は今よりも減っていきますから、単純に考えてかなり負担が増加されることが考えられる。
「介護」や「プレ介護」という視点無くして、労働市場を語ることはできないのです。

働き方改革が空回りしてしまうのは、低所得者層の場合、結婚ができず、
1人で認知症となった場合に備えなくてはいけない。
「働き方改革」という言葉自体、関係のない世界の話となる。
こうして、働き方改革はごく一部の大企業のニュースに留まってしまうのです。
「介護」や「高齢化」というキーワードと向き合わなくては、本当の働き方改革はできないということ。

働き方改革から取り残される「介護」

働き方改革で取り上げられるのは、まず「働く女性」。
育児中の女性の負担を軽くするために、さまざまな法整備もされてきています。
また「ワンオペ育児」など、育児が母親1人の負担になることを問題視する単語も出てきていますね。

育児の場合、大変さもありますが、対象となる子供たちは「将来、国を支えて生きる存在」。そもそも社会で育てる必要があります。
母親や家族の負担という面だけでなく、未来を担う人材育成としての側面がかなり大きい。

では介護はどうか?というと、これから高齢者の心身が育つわけではない。
目標がないまま、育児のような目安になる期間もはっきりしない。
現役労働者の「手を取られる案件」としてしか語られない状況があります。

育児と介護は、一定時間、特定の人間のお世話をするという時間が必要という意味では同じ。
しかし、保育所のように3年後には小学校とはいかないのが介護。
長さの目安は全くの白紙、そのため「いっそ離職した方が、自身の精神衛生上もよい」という理由で介護離職をしてしまう人もいるのですね。
また「お世話になってきた親のために」なるべく時間を取りたいという理由で止めてしまう人もいます。

ここで育児との差が出てきます。子供というのは成長途上。「親」のような絶対的な安心感を持てる人間が存在しないと、心身の成長に問題が出てくる可能性がある。

しかし、高齢者の場合はどうなのか?
すでに人生を長く経験してきた人たちです。他人のお世話になることになっても特に問題はない。

むしろ人によっては、年を取ったからという理由で、やたらに世話を焼かれるのが嫌なケースもあります。

実は認知症が悪化するケースの1つに「介護」があることもあります。
自分の身に置き換えて考えてみましょう。ある日突然病気になったとする。
自分のことが自分でままならない。うまく意思疎通はできない。
この状態で、身近な人がいきなり世話をしにきたとしましょう。
単発であっても、かなりストレスが溜まる状況ですね。1人暮らしをしていたのに、いきなり同居となれば、ストレスはさらに大きくなり病状が悪化。いわゆる問題行動となることも多いのです。

また、認知症とわかると、どことなく人がよそよそしくなる。避けるようになる。
これも自身に置き換えるとわかりやすい。
「近寄らない方がいい人」認定されて生きることになる。誰でも相当に不愉快です。

高齢者と子供の違いは「自立度」。介護やプレ介護はただ時間を割けばいいとも限らず、面倒を見ればいいというものでもないのです。
プレ介護に必要なのは、時間より「介護をする側の余裕」かもしれません。

労働者としての高齢者

さらに一歩進めて考えてみると、高齢者というのは「自立した人格者」。
何かを任せられる存在です。そこに病気や老化などサポートの要素が加わっているというだけとも言える。

そもそも人間助けを借りて生きるのは当たり前。そういった価値観が浸透してくれば、介護現場の事情も多少変わり、高齢者を「自立した労働者」とみるのが当たり前という状況ができていくでしょう。

最後に気になることは、平成の間に想像以上に進んでしまった高齢化。
10年のうちには、認知症という病気それ自体を治したり、症状を緩和する方法も進むでしょう。
逆に気になるのは、現在の高齢者は戦中、戦後生まれ。心身共にタフなタイプが多いのです。今後は薬を使い栄養にも恵まれている世代が高齢化していきます。
そういった前提での、医療的な観点からの予測もしてほしいものですね。