効率重視といわれる日本社会、しかしその反面、必要のない会議の存在など「効率のよさ」とは無関係な現象もあります。
こういった会議が重視される背景には、日本社会は「横並び」であることにより、効率を上げて来たという歴史があるから。

かつての高度経済成長期のように、一定品質の商品を量産しなくてはいけないとなれば、同じような人間を一定人数以上確保するという方法が、もっとも効率がよい。
そして、場の空気を乱さず、無駄な時間を取らず、命令を聞き、その通りに従う人材がもっとも効率がよく、実際、会社の戦力にもなってきました。

しかし、IT社会の到来とともに、従来の価値観からはかけ離れた世界観が必要とされるようになった。
そのため、同質集団が同じことをやっていることに、何の意味もなくなってきた。

とはいえ、日本の大企業はずっとこういった方法を追求し、達成することで、結果を出してきました。
日本の教育制度も同様。

しかし、今の時代はどちらかというと、異質集団を求めている。
しかし、日本社会のような同質集団に慣れた社会の場合、すぐにそういう方向にシフトできない。
そのため、集団それ自体を否定することになったり、人を減らして、作業効率だけをアップさせたりという迷走状態が起きてしまうのです。

欧米などの場合は、元々異質集団、個を尊重して結果だけを求めるというケースも多い。
しかし、こういった集団が機能する背景には、弱者へのサポートがあるといった条件もある。

しかし、そこは置き去りにしたまま、競争原理だけを持ち込む。
従来の「同質を良し」とする価値観の名残と相まって、「弱者」という異物を排除する動きがむしろ強まっている面もあります。

こうなってしまう原因は、効率が目的化してしまい、何のための効率アップなのか分からなくなってしまうためと考えられる。

今までの日本企業に求められるものが「良質な同一商品」だとしたら、現在の日本に求められているものは「異質で質の高いもの」。
それを生むために、集団が存在しているのです。

名刺というレトロなもの

日本社会の混沌とした状況を示すものに、名刺があります。
紙の名刺を交換する風潮は今でも残っており、人と人をつなぐのに重要や役目を果たしています。
しかし、その一方で進むデジタル化、メールアドレスは膨大な量になり、SNSの種類も増えている。
名刺に書かれている項目も多く複雑になる。

情報量が膨大な現在、個人情報というのは、かなり大きな財産になるはずなのですが、管理しきれないという現象が出てきます。
そこに目をつけたのが、Sansan株式会社。名刺をクラウド保存、他人と共有したり、データを柔軟に活用したりするなど、ただ紙情報を整理するだけでなく、より有効に活用するサービスを提供している企業です。

そんなSansanでは、自社ビルの近くに住む場合、補助金が出るという制度があります。
通勤というのは、かなりの体力と時間を使います。また風邪を引いている場合など、周囲に菌をまき散らすことにもなってしまう。
通勤距離が短ければ、こういったリスクは回避できます。

リスクを回避すれば、作業効率は上がる。しかしSansanの目的は効率を上げることではなく、サービスの質を上げること。
紙の名刺をただ管理するだけでなく、IT保存という強みを活かして、有効活用するサービスを提供することからわかるように、マイナスをプラスに転じる方法を取っているということ。

同じ目的で、Sansanでは、在宅ワークや、土日振替労働などが選べるようになっています。

名刺というのは、考えようによってはなくてもよい。
デジタルツールで事は足りるのです。しかし紙の名刺は今でも存在しているばかりか、凝ったデザインのものもあります。
人と人が出会い、モノを交換することはデジタルには置き換えられない。
そして異質性が尊重される時代、名刺で個性を発揮するという、一見するとユニークな現象が起きているのです。

従来の方法を否定するのではなく、良いところを認め、さらに利便性を高め、快適な生活ができるようにしていく。
Sansanのサービスや働き方は、まさにそれを形にしているといってもよいでしょう。

否定をしない

現在Sansanでは、タブレットとノートパソコンを併用したデバイスが主に使用されています。
それは、タブレット、ノートパソコンどちらにも長所があるから。
それならば、両方の機能を備えた2in1を使えばよいという考え方なのです。

ともすれば、今の時代のような変革期は、大ナタを振るわなければいけないと思いがち。確かに時には大きな決断をする必要もあります。
しかし、効率を追求するという理由で、今必要なものを否定する必要はありません。
また現在役に立たなくとも、主旨や考え方は参考になるものもある。
モノを切り捨てるのは簡単ですが、まず活かす方法を考える。
その過程で、なぜモノやシステムがあるのかという理由にまで、考えを巡らすことができる。

人間の社会は、こういった想像力の上に成り立っています。
否定するのではなく、まず「活用する」という考え方が多様な人材を活かすことにもつながっていくでしょう。