工場はデジタル化すればいいというものではない

色々な職場がデジタル化していく現在、医療現場も例外ではない。
医療現場のデジタル化に貢献している会社の1つがGEヘルスケアジャパン。
同社は、CTスキャンなど医療機器も販売していますが、医療現場における「現場改革」システムそれ自体を売り出しているのが、大きな特徴。

引用記事に載っているGEヘルスケアジャパン社長 多田荘一郎氏の話から、医療機器メーカーの抱える問題や今後が見えてきます。

まず医療機器メーカーというのは、「医療機器を作る仕事」。
そういう意味では一般の工場と同じ。ただし医療機器の特徴として、営業を行い商品をより多く販売すればいいわけではない。
もちろん営業は行いますが、CTスキャナーは誰でも購入するものではない。
あるべきところにある機材、それが医療機器。

そういった理由により、GEヘルスケアジャパンは基本的に受注生産品が多いよう。
そのため現場で生産指示を出す人間の仕事がかなりマルチタスク化していたようなのです。

その改革として、まずこの業務を見える化、そしてタスク部分はRPAに任せ、そうでない部分は人間が行うようにしたそう。
一見ただの「RPA化」ですが、デジタル導入が先行していたわけではなく、仕事の効率を考えると、タスク部分はRPAに任せた方がいいのではないかということ。

そもそも、ある工程と別の工程に物理的な距離があったとする。
そこでロスが生じる場合、無人自動車の導入などを考えがち。
しかし、この2つの工程自体を見直すという考え方をすることが大事なのです。

そうでなくては、デジタルを導入して、時間の短縮は可能かもしれないが、作業自体は同じこと。結局同じ手間がかかる。業務内容自体は変わっていないのです。
これではデジタル化したところで、限界が見えている。

現在、医療機器を使う現場、すなわち医療現場では、人手が足りない状態が加速しています。
そうなると、医療機器を提供する企業としては、当然そういった状況を理解して、より医療現場の負担が軽くなる方法を考えなくてはいけません。

医療機器メーカーが病院のサポートを行う

現在、医療機器メーカーの仕事は製品を提供すること、それが壊れた場合、修理に行くなどアフターサービスを提供すること、この2本が大きな柱になっています。

しかし、この方法だと、仮にCTスキャナーが壊れた場合、患者さんの治療がしばらく進まないということにもなりかねない。
また故障が治ったあとに、検査をする患者さんが増える、臨床検査技師や病院の負担が増すことになります。

もし仮に「CTスキャナーが壊れない」としたらどうか。
形あるものである以上、それは無理ですが、壊れる確率を下げる方法、メンテナスを行う、壊れそうなときに先手を打つといった行動ができれば、病院関係者の負担はぐっと下げられる。

また、修理の時にいきなり呼び出されるわけではなく、ある程度予測ができるため、メーカー社員の負担も減る。
GEヘルスケアジャパンの構想は、このようにしてメーカーが病院を管理することにより、病院の負担を減らすというもの。
同社では、この方法を「「Brilliant Hospital構想」と命名。実行しています。

病院のややこしいところは、患者さんが増えればいいというものではない。
病気は少ないに越したことはない。しかしそれでは病院の経営が成り立たなくなってしまう可能性もある。
患者さんにとっての利便性と、病院経営を成り立たせる、やや矛盾した2つの要素を維持しなくてはいけません。

とはいえ、高齢化社会に伴い、現在の「検査漬け、薬漬け」医療に疑問を持つ人が増えてきているのも事実。
大病院などの待ち時間に悩む人が多いことも変わりません。

検査は最小限ですみ、待ち時間もない。最低限の来院で健康が維持できる病院があったとする。そういう病院の方に患者が集まりやすくなります。
患者さんの快適さ=病院の利益は必ずしも矛盾しない。
そういう病院をメーカー側から作っていくという発想、それが「「Brilliant Hospital構想」なのです。

現在の病院は、苦痛を感じることも多い場所ですが、そういった概念が全く変わるかもしれない。
また病院とは病気の治療を行う場所と思われていますが、予防や慢性疾患のコントロールなど、急性疾患の発症や急変を防ぐ対応策を打てるのも、また病院。

「病気にならないために、病院に行っておく」という時代も来るかもしれません。

医療現場というと、特殊な場所に思われますが、こういった考え方のシフトはどういった業種でも、今後必要になってきます。

例えば現在でも、食品廃棄を減らすため、マッチングアプリが出始めている。
ウーバーのように、好きな時に好きな場所に車を呼ぶシステムもある。
すでに「お客が面倒」を感じることと、企業側の無駄になっていることを同時に減らすシステム作りはどんどん進められています。

ここで大事なことは「デジタルありき」ではないということ。
工場運営で特定個人に負担がかかる、検査の待ち時間が長い。こういったことを、目先の改善ではなく、根本的に変えられないか?
その策としてデジタルを用いるということ。まずその現場にいる人間ありきという発想であることを忘れてはなりません。