人間に任せる余地を残す日本企業

職場のデジタル化やRPAの導入というと、事務作業を思い浮かべますが、製造業の現場でもかなりデジタル化は進んでいます。
元々、人間がやっていた流れ作業をロボットが行っているのが当たり前の世界。
各種作業の機械化を進めていくことも、自然な流れと言えます。

では、この先デジタル化が進むと、日本の製造業からは人間がいなくなってしまうのか?というと、どうもそうではないよう。
これには、日本の製造業の考え方が大きく影響しているようです。

製造業の多くは90年代に現場を機械化、人の負担を減らすという考え方にシフトしています。
それと同時に一時期減ってしまった「熟練工」の育成にも力を入れています。
メーカーには「人を育てる」というキャッチフレーズを持つ会社も多いですが、基本的にデジタルは「人間の補助」という位置づけ。
ベースになるのは熟練工という考え方が浸透しているよう。

デジタル作業はエラーもあります。そういったときの対応もRPAに任せるという発想ではなく、故障の原因は人間が探り対策を練る。
あくまで「人間が主導する」という考え方です。
こういう方法であれば、熟練工が絶えず育つことになる。またデジタル化により、雇用削減をする必要もない。実際、メーカーの中にはデジタル化に伴い、雇用が増加した会社も珍しくはありません。
熟練工を減らさず、IT管理者などデジタル技術を扱う人間を雇うため、こういた構図になるよう。

もちろん、エラー対策をRPAに任せるという考え方もあります。
この場合は、熟練工を育てるのではなく「熟練工並みのスキルを持つRPA」を育てる人材が必要になる。
今以上に、デジタルエンジニアを増やす必要があります。

現在のRPAは「現状の分析と対応」力は非常に高いですが、解決案を出す面ではまだ弱い。
そのため、熟練工の力が大きいのですが、今以上にデジタル化が進んだ場合、熟練工の仕事をデジタルがマスター。
本格的なAIが登場することも考えられる。
そうなると、製造業の雇用事情も大きく変化することが考えられる。

現場の熟練工ではなく、それをAIに教える技術者が増加するという状況ができていきます。
この状況についてはドイツがいいお手本になるようです。

会社以外で人を育てる

日本企業の場合、会社が人材育成を行うのが基本。
しかしドイツの場合、産業別労働組合に全員が加入。現場で働く前に技術習得をする場所があります。
当然、現在ではIT教育も行われている。
会社に必要な人材を育てるというよりは、必要な人材を育て企業に送り込むという形をとっています。

つまりRPA導入が当たり前となった現在では、ITエンジニアの育成が急務。
当然IT技術を身に着けた人材を育て、製造業の現場に人は必要ないと思えば、研究機関に送るなど、業種の壁を越えて適材適所に人材を配置するスピードが、日本より早いのです。

良い悪いというより、人材育成の場所や方法が違うため、ドイツの方が産業構造の変革を行いやすい土壌があるということ。

ただし良い悪いではありませんが、デジタル化の特徴は「スピード」。
現在でもITエンジニアは不足していますが、人材育成が後手に回ると、育てた結果、必要な技術はさらに先を行っていたということにもなりかねない。

そうなると、現在のメーカーが掲げる「人を大事にする」というモットー自体が成り立たなくなる可能性もあります。
日本型製造業の人材育成方法、現場で熟練工を育て、技術を継承するという方法は1つの考え方。

しかし、その段階からデジタルにとってかわられる可能性があることも、頭に入れておかないと、産業構造が変化してしまったときに、人材が無駄になり、必要な人材が足りないということにもなりかねない。

またひと昔前までは「ドイツの方法」は文字通り他国のやり方ですが、グローバル化が進めば、国別の方法論は、現在の企業別方法論程度に過ぎないレベルになる可能性もある。
地に足がつかない状態で他国の状態を追ったり、デジタル化を急速に進める必要はありませんが、新しい方法を絶えずチェックしておく必要はあります。

製造業の場合「人ファースト」を軸にしながら、さらにデジタル化が進む可能性もありますが、金融業界のように、もはや人はいらないという業界もすでに存在する。
こういった業界は製造業と違い、人のサポートではなく業務それ自体をデジタルに任せる傾向にある。
実際、すでに金融業では、新卒採用者が激減する傾向にありますね。

その反面サービス業の場合は、まだまだマンパワーが必要な部分も多い。
製造業のデジタル化は、その両方を含んでいます。
いずれにしても、何を作り出すか?売り物にするか?という部分は、人間が判断する最後の砦。
製造業の場合、熟練工が仕事の中からそういったアイディアを見つけ出すこともあります。
デジタルエンジニアの育成は急務ですが、「人のためにものを作る」という部分はぶれないようにしたいもの。現場改革は「構造転換」を頭に入れながら、ソフトに進めていく方がよいかもしれません。