「地方創生」をするには、まず自治体から

「お役所仕事」という言葉があるくらい、役所の仕事は楽でスピード感がないものというイメージがあります。
しかし近年は少子高齢化に伴い、職員採用数も減少。非正規雇用者もかなりの数に上ります。
また、いろいろな事情を抱えた地域住民に対応する能力も必要。
売り上げを伸ばす必要がないかわりに、決まった量の仕事を少人数でこなし、絶えずクレームにもさらされるというタイトな職場になっているのが、現在の役所。

そんな役所に強力な助っ人がついている都市もあるようです。
引用記事には、神戸市とタッグを組むベンチャー企業が紹介されています。ベンチャー企業も、また厳しい世界。
主に仕事のスピード勝負になるベンチャーの世界で、特定の顧客を確保することは容易でない。
そういったときに、地方自治体が顧客になってくれれば、かなり会社経営はスムーズに軌道に乗るのではないか。
とはいえ、役所が顧客になると「役所ならでは」の問題も発生するようです。

人口の多い神戸市役所も、また非正規雇用者の多い職場。
当然、引継ぎ業務が数年置きに出てくることになります。また住民の要望もさまざま。意外と役所はマニュアルが作りにくい場所なのですね。
そこで神戸市は、窓口案内用RPAの作成をベンチャー企業に依頼。
現在はタブレット端末が設置されているようです。

このマッチングがうまく言った背景は、役所仕事とベンチャー企業いわゆるスタートアップの特性両方を、役所が把握してくれたから。
つまり役所側が「民間活用」という意識を強く持ち、ベンチャーの特性を活かすというスタンスで業務委託を行ったからであるよう。

役所の仕事を外部委託といっても、簡単にはマッチングしづらい状況が、まだまだあるようです。

「役所」の特性

この成功例を活かし、次の案として神戸市は市営バスのシステム統合を考えているようです。
しかし、ここで問題が発生。
役所の問題の1つに「部署間調整」があります。意思決定までの時間が民間より長くかかるということ。
神戸市のバス事情でいうと、今回の案を発案した市の交通課とバスを運行する市の交通局は別の部署。

ベンチャー企業にしてみれば、役所という顧客が付くのは嬉しいが、1つの事業が実現するのに長い時間がかかるということ。
ストレスも溜まりますが、本来ならすぐ他の業務に取り掛かれるのに、役所担当業務がいつまでたっても終わらないということになるのです。

しかし、役所側にしてみれば、時間がかかったところで、特に自分たちの損失にはならない。
「調整は後回し」ということにもなりかねません。
また現在はコスト意識も高くなっていると思われる役所ですが、仕事を手早く行い効率をよくしたところで、自分たちの給与になるわけではない。
むしろ休みを確保したいので、早めに仕事を済ますという考え方の方が強いのではないか。

時間感覚、コスト感覚すべてが一致しない状況での、すり合わせはなかなか困難も大きいようです。
しかし「役所」とくくってしまえば、こういった考え方の集団になりますが、役所に勤務している個人個人は非正規労働者も多い。
前職は違う仕事をしていたという人も珍しくはないでしょう。

また役所職員も職場を離れれば、自治体のシステムの恩恵に預かる一市民でもあります。
消費者でもあり、買い物がしづらいシステムや不具合の多い製品に文句を言いたくなるという面では同じ。
そのため自分たちの仕事も「ベンチャー企業」とタッグを組むという「双方がウインウインになる関係を作ればいいのではないか?」という発想が出て来たのではないか。

まず「コスト意識」を持てば、ベンチャー企業に長いスパンで仕事をしてもらった場合の時給がわかりますね。
数字の比較は、事務職が多いだけにわかりやすいはず。
神戸市は今回の活用ノウハウを講演などの形で広めているようです。

地元ベンチャー企業の活用を

役所とベンチャー企業とのコラボは、民間と役所の感覚のすり合わせができれば、地域振興にはかなり有効な策になります。

またIT企業の特性は「広大な場所を必要としないこと」。
今回の神戸市はかなり大規模な自治体ですが、小規模自治体でも、起業が可能な分野がIT系。

今後、少子高齢化に伴い各役所の職員数はさらに減少。その反面、役所に足を運ぶ住民がどんどん高齢化していきます。
案内などの事情がどんどん変化していくと考えられる。
また役所の場合、頑張っても給与が上がることもない代わりに、「増えない」職場でもある。
職員数の減少はそのまま「仕事のハード化」につながってしまうのです。
そして役所の仕事の質が落ちれば、住民はよその自治体に引っ越すことも考えられる。こうしてどんどん負のスパイラルを招く可能性も高いのです。

地元ベンチャー企業を役所業務に活かすことで、地域の民間企業が活性化する。
それに伴い役所の業務のブラック化や、地方衰退を食い止めることもできる。
また今回の事例を取り入れることで、役所も体感的に民間企業の感覚を習得できます。
より地に足が付いた住民サービスを提供することができるのです。
ベンチャー企業や地元企業を業務に活かせるかどうかが、自治体の生き残りをかけるポイントにもなりそうです。