海外からの視点で日本を見る

先日トヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用は維持できない」と発言。
日本を代表する会社のトップの発言であるだけに、波紋が広がっていますが、その反面、誰もがうすうす感づいていることが言語化された面もあります。

これだけ、スピード感が早く流動性の高い現代の市場においては、決まったメンバーを雇い、同じチームで物事をこなすという方法には限界があります。

しかし、勘違いしてはいけないのは、高齢化した社員を「老害」と言って切り捨てる。使えない人材を捨てるといった意味ではないということ。

終身雇用ではない雇用状態のために必要なことが、引用記事では述べられています。
まず現在の終身雇用制ですが、学校制度と比較するとわかりやすい。
現在の学校ですが、基本的に同じ年齢の人間が、一斉に同じ時期に入学する。
そして同じ期間勉強をして、卒業する。
高校以上だと規定を満たさない場合、留年、退学といった事態もありますが、あくまで例外規定という扱いですね。

そのため、卒業後には「同窓生」というのが存在することになります。
こういった方法をメンバーシップと呼びます。
まずチームありき、そこからアイディアを出して、物事を達成する方法。

これに対して、欧米の企業では元々「ジョブ型」と呼ばれる採用方法を取っていることが多い。
まず目標や目的ありき。そこに必要な人材を取るという考え方です。

具体的にいうと「誰を経理にしようか。」ということではなく、「経理にふさわしい人材を探してくる。」という考え方。
終身雇用の世界では、仕事が合わなくても会社の世界に、自分を適応させる必要がある。

会社のために、頑張って経理になる必要がありますが、ジョブ型の場合、漠然と「御社のために頑張ります」では意味がない。
どういうスキルを持っており、どういう形でその企業が持つ課題や目的に貢献できるかを示さなくてはいけません。

つまり、経理をやろうと思うなら、経理のスキルを高めること。
またいろいろな会社の経理事情を知り、足りない部分を知るなどの研究も必要。
会社のためではなく、労働者として社会にどのような形で自分は貢献ができるのかという発想が必要になる。
労働者主体の現場つくりが、大前提になります。

労働市場の主役は労働者である

「このスキルで会社に貢献します。」という形になる。企業側としては、その考えやスキルは自分の会社には合わないという可能性もある。
そういう人材は採用しなければよい。

それでは、会社に合わなくなった人材をどんどん捨てて行けばいいかというと、
現在の日本企業のあり方を考えると、やや非現実的。
労働現場の流動性が高く、多様性もある社会であれば、1つの場所で仕事ができなくなったとしても、次を探せばよい。
しかし、日本社会ではまだ「1か所で頑張るのが美徳」という風潮が残っている。
主役は企業、そこに奉仕する労働者という構図が染みついています。

実際、日本でも転職は昔に比べ、増え始めていますが、まだ本流とは呼べない。
会社というのは、自分を育てる場所でもある。スキルアップのために戦略的に会社を移るという方法は、使える労働者になるために効果的な行動です。
まさに「労働の主役は自分」という考え方に基づくもの。

終身雇用が崩壊すれば、そこまでの向上心がなくとも、ある会社で自分が必要ではないとわかれば、次に行くという行動は当たり前になってくる。

しかし企業目線でのモノの考え方では、転職は「労働者の使い捨て」なんてことにもなりかねません。
労働の主役はあくまで労働者。そして労働者は会社に貢献をする必要がある。この原則意識を徹底しなくてはいけません。

会社色に染めないこと

そのため、企業側に必要な行動としては、内向きにならないこと。
会社によっては不思議な慣習が続いている企業もありますが、そういった「会社色に染まる」こと自体、まったく意味がないことになる。

そもそも会社色自体、企業の実績アップにつながらないことであれば、なくてもよい。
チームを組めば、ある程度チームカラーというのが出てきますが、その色に染まることが目的になっては、肝心の個人の技術が活かせない集団になっていきます。

実際に今の日本企業や集団の中には、「維持すること」自体が目的になってしまっているケースも見られます。
集団というのは、何らかの目的があり集まるもの。目的達成が第1であり、協調性はその手段です。
そもそも日本の場合、協調性は自然に優先されるという特性があるため、目標をしっかり持ち、共有するという意識を持つことが大事になります。

そのためには、風通しのよい人間関係が必要。
そもそもジョブ型の場合、メンバーが入れ替わる可能性が高い。
「なあなあ」では、意思疎通が図れていなかったということも出てくる。

必要なことはきちんと言語化するなどの習慣づけも必要です。
こう見て行くと、終身雇用崩壊後には、かなり欧米風なドライな社会が待っていることがわかる。
しかし、グローバル社会ではこういった心構えは欠かせません。

繰り返しますが、ドライな社会=使い捨てではありません。よいチームとは互いを活かせるチームともいえる。人材育成を行いつつ、目標達成を行うという発想も欠かせないのです。