働き方改革が進むと失業者が増える

「残業時間は減ったが、その分給与は減った。」この嘆き日本のサラリーマンの声に聞こえますが、実はお隣韓国の話。韓国では、日本以上のスピードで働き方改革が進んでおり、その分弊害も大きくなっているようなのです。
韓国での働き方改革の骨子は2つあります。
1つ目は「労働時間の短縮」。残業時間を短く、違反した場合は罰金を科せられるという点は日本と全く同じ。
2つ目は「最低賃金の底上げ」。こちらはこの2年間(2018年、19年)の間に、日本の倍以上のスピードで賃上げが行われています。

この2つの改革の目的は「夕方のある暮らし」というもの。
現在、日本の労働者でも「夕方」をエンジョイできる人はあまりいませんね。早朝勤務など、不規則勤務者に限られてしまうかもしれません。しかし、9時~17時勤務の場合、17時に退社できれば「夕方」を確保することは可能。そして一定以上の賃金があれば、自分の時間も趣味などに有効活用できます。
しかし、現実には弊害の方がはるかに大きいようなのです。

その理由は「賃金上昇のスピードの速さ」にあるようです。給与が上がることが経済改革の大きな要であることは間違いありません。しかし、それは会社の力で行うべきこと。現在の韓国では、中小企業などの賃金底上げのために補助金が支給されています。
つまり、本来の労働結果とは違う賃金を払っていることになるわけです。そうなると、当然会社の経営に無理が生じます。最悪の場合、会社が倒産ということにもなりかねない。

そうならないため、現在韓国では「労働の無人化」が進んでいるよう。日本でも「AIにとって代わられる職種」がよく取り上げられていますが、韓国ではすでにかなり実践されているようなのですね。

それらの結果どうなるか。労働市場が縮小して、失業者が増える。実際、韓国では現在の経済政策を続けた場合、失業者の増加が予想される。それ以前に、現時点で就業者数が増えていないのです。

ミスマッチを解消するはずが‥

韓国の働き方改革の目的の1つが「労働市場のミスマッチ解消」。韓国の場合、新卒に重きを置かない代わりに圧倒的な学歴主義。大卒が断然有利な社会。そのため就職浪人も多い。そして企業の大半は大企業、つまりよい大学を出て、大企業に就職するというコースが日本以上に大事なのです。そうすると、キツイ製造業などには人が集まりませんね。労働事情を改善すれば、その是正ができるというわけですが、現実はどうか。

現実には、中小企業には、非正規労働者が多く集まり、低い賃金で働いているようなのです。また残業時間が無くなり空いた時間で副業をする人も出てきているよう。「夕方のある暮らし」は一部の人だけのものになっているようです。

なぜ、こんなことになるのか?というと、理念先行で現実が追い付いていないから。仮に世界と勝負可能、賃金上昇が見込まれる優秀な中小企業があったとしましょう。人材は選びたい放題。しかも学歴だけで入社できるわけでもないとなれば、就職浪人は減ります。よい人材がよい会社を作り、収益を上げる。そして給与が上がる。この形であれば、残業時間のカットは非常に有益になる可能性があります。

しかし、現実の企業の収益を上げることを考えず、まず形から入るとどうなるのか。
それが現在の韓国の状況、「失業者の増加への道」になってしまうのです。

魅力ある労働市場つくり

もちろん国が労働改革をすることは悪いことではありません。しかし、現実とかい離しすぎるとむしろ逆効果を招くことが、韓国の例からわかりますね。とすると、働き方改革で有効なのは現実の後押し。つまり「やりがいのある労働」「企業収益を上げる方法」の後押しをすること。

しかし、この2点とも企業の考えるべきことであり、国のするべきことは「過重労働防止」策を打つくらいしかありませんね。また産業の後押しをすること。大企業は元より、地方や中小企業も成長の伸び城ができる土台を作ることです。

そもそも、韓国の弊害は、現実には大企業と中小企業格差が全く埋まっていないのに、形だけ埋めようとしてしまったことにあります。中小企業に地力を付けることの方が大事。それは日本でも同じ。

韓国の例を見てもわかるように、魅力のない労働市場はどんどん縮小していきます。労働市場自体が小さくなり、また底辺で酷使される人たちが出てくる。これは日本の働き方改革でも懸念されること。人間は生きていくために働きますが、仕事を通じて誰かの役に立つことが仕事の大きなモチベーションになります。しっかりと働く、その結果として給与をもらう。結果を出せば給与は上がるため、企業の収益を出すために、自分はどう働けばいいか考える。そのためにしっかり休む。

働き方とは生き方であり、まず労働者ありきの話。形から入るのも1つの手ですが、本末転倒な方法では逆効果になるだけのようですね。