グローバルな環境を活かしたイケア・ジャパン

この4月からスタートした働き方改革ですが、ノー残業は形だけで持ち帰り仕事が増えている、仕事が終わらない。
また同一労働、同一賃金にした結果、正社員の給与が低下したというケースも見られます。
残念ながら、働き方改革関連法案施行で、すべての会社がよい方向へ行っているわけではない。その反面、働き方改革の理念を実行できている会社もあります。

そういった会社にはどんな特徴があるのか、今回はイケア・ジャパンの例を見てみましょう。
イケアは、元々はスウェーデンでスタートした小さな家具屋、現在は世界各国に社屋を構え、日本でも「オシャレでお手頃価格な北欧家具が買えるお店」として有名な会社。
そんなイケアの日本支社、イケア・ジャパンは、働き方改革の旗手としても現在名を馳せているのです。

従業員すべてを同じ立場に

イケア・ジャパンの労働環境で特筆すべきことは「同一労働、同一賃金」が実行されていること。
その背景には

  1. 「パートタイマーを短時間勤務型正社員」に変更する。
  2. 有期雇用を廃止し、無期雇用にする。
  3. すべての従業員を社会保険に加入させる
  4. 福利厚生の統一

という4つの柱があります。また短時間型正社員には、フルタイム勤務へのチャレンジもできるようになっています。

つまり、イケア・ジャパンで働く社員には、正社員、非正規といった分類がない。
従業員は皆「コワーカー」と呼ばれ、全員が同じ扱いを受けられることになっています。

すべての従業員を同じように評価できる仕組みが作られているため、同一労働、同一賃金という対応が比較的容易なのですね。

裏を返せばイケア・ジャパンに「一時しのぎのパート」は存在しません。
当然、人を多く雇えば雇うほど、給与が高くつくことにもなる。
実際、イケア・ジャパンの人件費はかなり高くなってしまったようです。

しかし、会社の業績がそれを上回っており、相対的にはむしろ「同一労働、同一賃金」のおかげで会社の利益は上がっているのです。
全員を同じ土台に立たせることで、労働者のモチベーションを上げる。評価も行いやすくする。これらがうまく回り、業績がアップしているのがイケア・ジャパンなのです。

イケア・ジャパンが変わった背景とは

逆にいえばイケア・ジャパンは「ぬるい仕事」が許されない環境ともいえる。
では、時間的にハードワークなのかといえば、そうではない。短時間型正社員がいることからわかるように、働く時間それ自体にはかなり柔軟性があります。
あくまで評価基準が全員平等なのであり、従業員には「働き方を選ぶ裁量がある」ということ。

こういった方法を実践するためには、会社、従業員双方に労働に対する「主体性」が必要になってきます。
どういった働き方をしたいのか、どういう形で会社に貢献できるのかを従業員は考えておかなくてはいけない。
そして、管理職はその意見を受け止め、個々の従業員がベストな形で働ける職場を作らなければいけない。

同一労働、同一賃金は単純なようですが、平等に人を判断しようと思えば、まず労働者ひとりひとりを知り「平等という舞台に乗せる」という作業が必要になってきます。
実際、イケア・ジャパンの場合もマネージャーとコワーカーの間で、働く時間や目標などをしっかり話し合う時間を設けています。

昨今運動会などで「順位を付けない」風潮があり、賛否を呼んでいますが、大事なことは、まず全員が同じ状態でスタートラインにつくこと。
まずイケア・ジャパンはそれを目標にしたのです。

実はイケア・ジャパンの働き方改革は、2014年にスタートしています。つまり今回の「働き方改革」とは、何の関係もないのです。
では、なぜこういった改善に踏み切ったのか。
それは、イケアがグローバル企業であり、家具を主に扱う企業であることが関係しています。

家具というのは、利用できればいいわけではない。あるだけで嬉しい、そんな要素も必要です。
しかし、高齢者にとっては、使い勝手が最優先されることもある。またある国では便利だと感じても、別の国では合わない可能性もある。
トップダウンで仕事をしていては、会社が回らない、業績が頭打ちになってしまう会社なんですね。

理念を浸透させること

イケアの家具を使うのは、世界各地に住む老若男女。そういったニーズに応えるためには、まず従業員を大事すること。
そしてすべての従業員の力量を引き出し、仕事に貢献してもらうこと。
その必要性があったため、こういった社内改革が行われたのです。

また、この改革はイケア・「ジャパン」という会社での話。つまり日本人の働き方や生活環境に合うように工夫されているのです。

こういった発想から5年が経ち、今、改革が会社の実績となって表れているのがイケア・ジャパン。
「人を大事にする」という理念を掲げ、そこから「従業員を一律に扱う」という目標を決める。
そしてそのために必要なことを地道に洗い出し、実践に移していく。
1つの理念を掲げ、気長にそれを追い求めていく。拙速に何かを変えようとしたわけではないところが、イケア・ジャパンの改革の大きなポイントといえるでしょう。

働き方改革関連法案の実施から、1年足らずの現在、わかりやすい変化を求めるよりは、「何のために改革をしているのか」。その理念が共有できているかどうかの方が、遥かに大事だといえます。