社員全員が選ぶ「働き方」

働き方改革最大の目玉が「長時間労働の是正」。しかし労働時間を見直そうとすると、各社員の労働時間を考え直さなくてはいけない。
それだけで膨大な手間がかかってしまいます。そのため、目先の無駄を減らすだけに終わっている企業が多いのが現実。

しかし、そんな「労働時間の初期設定」自体を無くしてしまった会社があります。それがサイボウズ。
IT企業として、企業の労働効率を進めるプラットフォームを提供している会社です。そんな自社商品を活かして、社員の働き方を自由に設定しているのです。

IT企業といえば、ブラック企業の代表というイメージが強く、サイボウズも例外ではありませんでした。
元々は長時間労働が常態化する会社、一時期、離職率は29%近くにまで達していました。
3人に1人はやめる計算になります。これでは社員が育たない。
またこういった会社では優秀な人材が確保できない。
IT業界の場合、仕事内容自体がかなりグローバル。優秀なに人材はより条件のいい他国企業に就職し、日本企業のライバルとなっていく可能性も高くなります。

そうなるとIT業界全体に悪影響を及ぼす可能性もある。
業界全体が伸びて行かず、将来、企業どころかカテゴリーごと衰退していく可能性すら出てきます。
それをとりあえず抑えようとすると、人材確保に莫大な費用がかかる。付け焼刃の改革では限界があります。

まず、人材が育つ企業を作らなくてはいけない。そのためには、まず労働時間の改善が必要。
しかし、一律に労働時間をカットすれば仕事量自体が減ってしまいます。
そのため、サイボウズでは、全員に「働き方」を申告してもらい、チームとして結果を出すという方向に舵をきったのです。

サイボウズの働き方の大きな特徴は「労働時間をすべての人が申告する」ということ。通常、労働時刻には9時~17時などの初期設定があり、労働時間を是正する場合、それを変更していくという考え方ですが、サイボウズにはこの「初期設定」がありません。

9時~17時を定時勤務と考えるのは、日本企業の慣習であり、必ずしも労働者の当たり前とは言い切れない。
仮に8時間勤務が「通常」だとしても、10時スタートの方がいいということもあるはず。
社員1人1人に、自分に適切な労働時刻を考えさせるという作業が、チームプレーヤー意識を高めることにつながります。

また「初期設定」を明記しないことで、「マイノリティ」が無くなるというメリットもあります。
同じ理由でサイボウズでは、現在、働く場所も選べるリモートワークも進められています。

人事管理はどうなっているのか?

しかし、労働者の評価基準がないと人事作業は非常に面倒なことになるのではないか。
実は、労働時間やそれに見合った給与計算、サイボウズではオンラインで決定されるのです。
例えば、時短勤務を希望したとする。その結果、給与を減らすか否かは、上司が判断して人事にオンラインで報告。
また、基本的な給与計算事情や、給与変更情報は社労士ともオンラインで情報共有されているため、経理の手間も最小限で抑えることができるよう。

また働き方に関する情報全般が、全社員でオンライン共有されており、それを見ながら意見をする仕組みもできているんですね。

このプラットフォームを作り、管理するのは従来型の企業にとっては面倒かもしれません。しかしそれが「人事の仕事」として機能している場合、大きな問題はないのです。
人事の働き方も「労働の1つのあり方」。いくらでも工夫の余地はあるということですね。

この「選択型人事制度」と呼ばれる改革を実行した結果、サイボウズの離職率は、2018年には4~5%に低下。新卒入社3年間に限って言えば1%台という驚異の数値を記録しています。

その結果、採用コストは激減、教育コストも半分にまで減らすことができました。
過重労働で企業実績を上げようとすると、ただひたすら量をこなさなくてはいけない。どうしても限界が来てしまいます。
また社員を使い捨てにしなくてはならず、技術と経験を身に着けた人材も育たない。
結局、企業や業界として成長が見込めないことになってしまうのです。

長い目で見れば、過重労働をしなくてはいけない環境は改善した方が、企業のためということ。

チームとして結果を出すこと

しかしそうはいっても、社員の要望ばかりを聞いていても、業績は上がらないのではないか。
サイボウズの場合、チームとして結果を出すことを社員に要求しています。
働き方が自由である代わりに、労働を企業目標の達成に還元する意思がない社員はいらないと明言しているのです。

つまり病気やけがで労働ができない場合、その社員を外して休んでもらい、代わりの社員が頑張る。場合によっては休んでいる社員に知恵を貸してもらう。
こういった方法ならば、チームとして出す結果は変わらない可能性大。
少なくとも、無理に出社して不適合な労働を課すよりは効率がよい。

こういった考え方は従来の「事なかれ労働」に慣れた人材には、ハードルが高く感じられることでしょう。
しかし「フルタイム」を自分の頭で考え、チームを作れないようでは労働市場に必要とされない。そんな時代が来ていることをサイボウズの改革は教えてくれるのです。