企業が福利厚生を行う理由は、社員個人の待遇を良くするという意味だけでなく、社内の空気を良くためでもあります。

仮に福利厚生がない場合を考えてみましょう。
社員の置かれている環境にゆとりがなくなる。ゆとりがなくなれば、他の社員を慮る気持ちもなくなる。
誰かがミスをした場合、フォローするのではなく「あいつのせいだ」となり、ミスをした人間がその場に居づらくなる。
最悪の場合は退社、そして残った人間は、自分も同じ目に遭うのではないかと、萎縮した状態で仕事をすることになる。

こういった環境では、社員の能力を企業に還元することはできません。

だからといって福利厚生が手厚い場合、恩恵にあずかれる社員とそうでない社員が出てくる可能性もある。
すると恩恵にあずかる社員が嫉妬の対象になり、結局チームワークが乱れる可能性がある。

福利厚生は、実はかなりデリケートな問題でもあるのです。
そういった点に気づき、対策を行っているのが、ITサービス企業のサイバーエージェント。

サイバーエージェントは、社員間のコミュニケーションを大事にする会社。
社員同士が密に交流することで、モノを言いやすい土壌ができる。
すると社内で切磋琢磨が起き、会社内が活性化する。新しいアイディアが生まれ、会社の業績につながっているのです。

非常に前向きな社風ともいえますが、裏を返せば、自己主張が絶えず必要な環境であるともいえます。
そのため、設けられたのが、女性のための「エフ休」。女性専用の特別休暇で、申請理由は問わないというものです。

女性専用の休暇と聞いて、思い浮かぶのが生理休暇。
いくら風通しのよい社内であっても、あまり声を大にして言いたくはない事柄ですね。実はエフ休には、妊活をしてもらうという意味も込められているのです。
不妊治療は、それ自体公にしたくはないもの。
しかし、時と場合によっては、休暇が必要なこともあります。そのため、治療と仕事、両方がどっちつかずになり、どちらかを諦めてしまうというケースも少なくありません。
こういったケースをさりげなくサポートする制度、それがエフ休なのです。

またサイバーエージェントでは、妊活相談も受けることができます。
仕事と結婚、出産が両立しやすい風土を整えているんですね。

ここまで女性のサポートを手厚くするのはなぜか。
それは、女性に自由に行動してもらい、発言してもらうことが会社の利益につながるからです。
コミュニケーションというと、発信力ばかりが注目されがちですが、そういった事柄ばかりではない。言えないこと、言いづらいことだが、知っておいて欲しいことは、誰にでもどこにでもあります。
そういったことへの想像力も、またコミュケーションから生まれるのです。

まずは信頼関係を

エフ休のような、休暇制度を設けようとすると、おのずと社員同士、また企業と社員の信頼関係が大事になってきます。

もし、あまり社員同士がコミュニケーションを取っていないような企業で、こういった制度を設けるとどうなるか。
「なんで休んでいるのか、ずるい。」と言われかねない。また「休んでいる理由を開示すべきだ。」という意見も出てくるでしょう。

それでは、福利厚生が裏目に出てしまいます。
そもそも福利厚生とは「企業に貢献してくれる労働者に対する」サポート。
大前提として、全社員に企業貢献意識がなくてはいけません。

企業がワンチームとして機能している場合、全社員が他の社員の必要性を認識しますが、そうでない場合は、他の社員に対する嫉妬など、ネガティブな感情が先行することも考えられます。

もちろん人間の集団である以上、好き嫌いはある。しかし「好き嫌いもあるよね。」を踏まえたうえで、コミュニケーションを取り、企業貢献するか、そういった意識がないまま、漠然と集団が存在しているのでは、集団が出す結果はまったく違うものになります。

まずは「好き嫌い」や「福利厚生って時に不平等に感じるよね。」といった意見を言えるような信頼関係を作ること。
それがあってこそ、チームとして企業貢献が可能になる。そして必要な人間にはサポートを行う。
その結果、言いにくいこともあるだろうからとエフ休のような制度が生まれてくるのです。

やめない会社つくり

実はサイバーエージェントは、かつて離職率の高い企業として有名だった時期もあります。それはハードワークに風通しの悪さが伴ってしまったため。
その結果、他の社員への悪口が増え「こんな会社やめてやる」となるわけです。

同じハードワークでも、それが誰かの役に立つ、チームとして結果が残せるとなれば、この企業のために頑張ろうと思うもの。
社員同士の信頼は、企業への愛着を生む、そして企業に貢献できる社員が育つというわけです。

まず今社内で社員同士の信頼関係が築けているか、上司と部下の信頼関係はあるか。そういったところから働き方改革の糸口が見つかるかもしれません。