鉄道会社が運営する理由とは

いつでもどこでも働ける国へ、そんな流れを後押しするのがコワーキングスペース。
誰でも仕事をするために利用できるスペースとして人気。企業が法人契約をしているケースもあります。

中でも、ワーキングマザーの需要は大きくなっているよう。
保育所不足が叫ばれて久しいですが、保育の無償化は行われても、保育士や施設不足はまだまだ解消されず。
そのためワーキングマザーは、妊娠中から「保活」と呼ばれる保育所確保に奔走しなくてはいけません。
その時間を取るために、会社を休まなければいけないなんてこともあります。

また保活のための休みや育児休暇を取りづらく、退職する女性もまだまだ多いのが現状。
企業の制度が手薄なケースもありますが、育休制度があっても「休みます、早めに帰ります。」と言いづらい雰囲気はまだまだあるようです。

コワーキングスペースがあれば、そこで仕事をすることは可能。
完全に仕事に穴をあけるのではなく「違う形で働いています。」ということになるため、育児をする女性の罪悪感が少なくなる。
また、完全に会社と縁を切らず、仕事を継続することで、育児に時間を取られなくなったときに、色々な形で仕事復帰も可能になります。

物理的なサポートになるのはもちろん、会社外で働けるということは精神的サポートの意味も大きいのですね。

こういった悩みに当事者として直面、託児施設付きコワーキングスペースを開設したのが引用記事に登場する「東京メトロ」の女性社員たち。
鉄道会社の場合、人が働いている時間が自分たちのメイン就業時刻になる。
時間をずらして勤務をすることが、なかなか難しい職場です。

保活をしている労働者の場合は、いずれは保育所など子供を預ける場所も確保しなくてはいけません。

運よく確保できた保育所が家や会社と全く別のエリアにある場合、やはり通勤に支障をきたす。
また、保育所への迎え時刻が遅くなる可能性も高くなる。
ロスタイムが多い上に、会社で周囲に気を遣わなくてはいけない。

託児付きコワーキングスペースであれば、目の前に子供がいる。誰かに遊んでもらって安心できる様子であれば、手のかかる仕事に着手可能。
体調が悪そうなときは、最低限の仕事をこなすなど、仕事の量も調整できます。

社員が安心して仕事ができる環境があれば、当然仕事の効率もアップ。
会社にとっても利益向上につながる。現在は個人契約のようですが、企業との法人契約なども視野に入れているよう。

実は鉄道会社が、こういった施設を開設したのには、別の大きな理由も隠されているのです。

ワーキングマザーの待遇で決まる「資産価値」

こういった設備を東京メトロが開設しているとなれば、顧客の心証がよくなります。
それだけでなく、育児に便利となれば東京メトロの沿線に家を買い、子育てをしようという家族が増えてくる。
すると沿線付近の住宅資産価値は、かなり高くなっていきます。
「東京メトロ」の沿線住民というだけで、うらやましがられる可能性も出てくる。

こういった街づくりを視野に入れての、コワーキングスペース開設というわけです。
保育所を作ることに反対する街もありますが、子供がいる環境を作れば、学校もできます。学校に通うために必要な物品購入のお店、また学生が立ち寄りたいショップもできますね。
長い目で街を活性化させるのに、子供の存在はかなり大きいのです。

またメトロ沿線での思い出が楽しいものであれば、自分も同じ場所で家庭を持ち、子育てをしようという発想が出てくる。
「子育てに向いている町」はいろいろな自治体のキャッチフレーズになっていますが、育児がしやすい場所は治安がいいなど、ほかの世代も住みやすい条件である可能性も高い。
育児世代が集まる場所づくりには、これだけのメリットがあるのです。

しかし、同時に課題もあります。コワーキングスペースで人を集めるには、各企業がリモートワークを行うことが前提条件。
会社外勤務の余地が少なければ、わざわざコワーキングスペースを作っても人が集まりません。
各企業がどれだけ柔軟な働き方を進めるか?により、この東京メトロのプロジェクトは大きく結果が違ってくるのです。

逆に会社外での労働を認める企業が増えていった場合、介護人口なども見込めるようになる。
在宅介護が進められる今、高齢者にデイサービスを利用してもらうなど、一時的に外に出てもらう方法や、同居するのではなく近居という形で見守る家族も増えています。

また高齢者は見守ってもらうと同時に、自立した人間でもある。
安心した環境があれば、東京メトロなどを利用する可能性も大きくなります。
元気な高齢者の多い町となれば、人生の第2ステージの場所として多くの人が集まる可能性がある。

子供や高齢者が安心して過ごせる場所は、今後非常に重要な意味を持つようになります。その成否を決めるのは、各企業がどれだけリモートワークを進められるかにかかっているのです。