働き方改革がうまく行っている会社の事例を見て行くと、いわゆる「成果主義」的な概念を取り入れている企業が多く見られます。
労働の権利は労働者にあり、好きな働き方が選べるが、その代わり「結果を出す」という義務を果たせという考え方です。

正論ではありますが、結果が出せなかったらどうしようという安心感を欠いてしまうのがデメリット。
特に日本企業の場合、権利を柔軟に行使して働くという習慣があまりありません。失敗が許されない空気も未だ蔓延している。
成果主義になじめず、根性論を振りかざすブラック企業に勤務せざるを得ない、そのため、そういった会社が減らないという面もあります。

今後の労働市場は、高齢者や障害者といった多様な人材が増えていくことが予想される。
そういった人材を利用して、企業収益を上げるためには、まず「安心できる職場作り」をすることも重要。
そのお手本になるのが「生活協同組合コープみらい」です。

コープとは、宅配や店舗営業、また保険共済から、葬儀の請負など生活に必要なものやコトを提供する企業。コープみらいは、コープとうきょう、ちばコープ、さいたまコープの3つが合併してできた首都圏を軸足に企業展開を行う会社です。

首都圏だけに従業員数は1万人強(バイトを含む)という膨大な数に上ります。
この社員たちを支えているのが「福利厚生」。
3コープ合併時にできたのが「復職、就労支援制度」です。
これはがんなどの病気になってしまった社員をバックアップする制度。
5段階に分けたきめ細かいバックアップ制度が整備されています。

がんなどの大病を患った場合、まず第1段階では休職する。療養につとめ回復を図ることが第一。この段階では社員は休養に専念。その代わりに健康管理センターの看護師が電話をかけ、状況を把握しておきます。

続いて第2段階はリハビリ、まず病気療養モードから一般生活モードへシフトすることが最大の課題。コープみらいの社員の場合、職場に復帰した時に必要な体力や生活のリズムを整えていくことなどが1つの指針になります。

第3段階からは、いよいよ復職モードに入ってきます。
実際に現場に戻ってやって仕事をしてみるのですね。その様子を見ながら第4段階の復職するか否かの判定に入り、復職可能と医師が判断すれば5段階目の復職となるわけです。

病気の場合、一時的に頑張れても後が続かないということも多い。
また通院との調整なども必要になってきます。
現在は、精神疾患などメンタル面の病気も多い世の中になってきていますが、こういった病気の場合、病状に波があることも多い。

健康状態と労働の兼ね合いは、実際に就労してみないとわからないことも多い。
また病み上がりの場合、焦ってオーバーワークになる、そして再びリタイアすることになり、自信を失くして退職というケースも多く見られます。

コープみらいでは、産業医や、保健師、看護師など医療従事者によるバックアップ体制を作り、まめに労働者の健康管理を行う。
そして本人と事業所との情報共有をすることで、病気になった人でも安心して働ける体制を作っているのです。

興味深いのは、この制度により復職した人の多くは、病気以前と同じように働いている人が多いということ。
病気や障害のある人が、会社を退職してしまうのは、実際に戦力にならないからというよりは、「健常者と同じにならなくては」という強迫観念による弊害の方が大きいようです。

コープみらいでは、病気退職者が減っているほか、病気による休職日数も低下しています。

安心して働けるということ

またコープみらいでは、介護支援制度や育児休業制度も充実しています。
介護や育児も「働く時間もやる気もある。しかしいつどうなるかわからない、職場に迷惑をかけてしまうかも。」と思いがちな状況ですが、コープみらいでは介護休職日を設ける、また相談員を設けることで、安心して働いてもらえる仕組みが整っています。

病気や障害を抱えた人、また介護や育児などをしている労働者の問題は、「予測できない不規則勤務」と「同調圧力への対応」。
どうしても急な休みが必要になる。そしてそれが負い目となり働けなくなる。

しかし、そういった労働環境では「絶対に失敗できない」空気が蔓延してしまいます。少しでもフルタイムで働けない理由が出てきたら、その時点でドロップアウトということにもなりかねない。
本来使えるはずの人材をやすやすと手放すことになります。

またコープみらいの顧客は「一般市民」。業務内容に福祉サービスも含まれていますが、病を得ているなどハンデを抱えているからこそ、提供できるサービスもあります。

企業がどれだけしっかりと人材育成しても、安心できない場所では働けないとなっては、意味がない。
企業への帰属意識に必要なのは安心感。社員を甘やかしてもいいことはないという考え方もありますが、それは企業と労働者の信頼関係があってこその話。
まず安心できる労働環境を提供する、そのためのバックアップ体制を整えておく。そうするだけで人は企業のために働こうという意欲が大きく増すのです。