かつてはブラックだったサイボウズの例

何となく人間関係のギスギスした職場、部下の忙しさを上司は理解せず、意見も聞かず、無駄な忙しさだけが溜まっていく。
それが給与に反映されず、ついには身体を壊し、退職するはめに。
ブラック企業のイメージって、何となくこんな感じですね。

業績があまりよくない企業も多く、よけい結果を出すよう求められオーバーワーク状態に。どんどんブラックの色が濃くなっていくという悪循環を生みます。

しかし、中にはこういった状態からホワイト企業に転換した企業もあるのです。
現在は「ホワイト企業」として名前を知られているIT企業「サイボウズ」。
実は2005年以前の離職率はかなり高め。05年の退職率は28%とかなりの高率。
社員が定着しない、しかし業務は山のようにある。
使い捨てのようになっている社員が、日々残業という状況だったようです。

しかし、2017年の離職率は5%以下。業績は当時の倍以上。
どうすれば、このような状態を作り出せるのか?
サイボウズの社員がその秘訣を語った記事があります。

「生産性を上げる」という目標はない

当然、現在のサイボウズには「どうしたらホワイト企業になれるのか?」
「生産効率を上げる方法は?」といった質問が多く寄せられます。
しかし、サイボウズは「生産性の向上」を掲げたことは一度もないようなのですね。

目指したのは「社員の働きやすさ」だそう。
ではそのために何が行われているのか?というと、「恐ろしい量の情報共有」。
さすがIT企業、1人1人が知っておくべきことがそんなに多いのか、ということではありません。

企業に勤務する社員は、必ずしも自分の勤める会社の雰囲気や内情に詳しいわけではない。まして新卒が周囲の状況を把握するのには、半年か1年はかかります。

しかし、サイボウズは社員のつぶやきが絶えず行われている、さながら社内オンライン環境がツイッター状態になっているようなのですね。
中身は仕事内容とも限らず、趣味の実況中継など仕事と関係のないことも多い。

こんなことをやっていて業務に支障は出ないのか?
出ないことは業績アップが証明していますね。ではなぜ無駄とも言えることを社員が書きまくることで、業績がアップしているのか?

「どうでもいいことを発信できること」の重要性

社内オンラインで「どうでもいいこと」をつぶやくことを考えてみましょう。
ちょっと内容を考えてしまいますね。

発信する時点で、どうでもいいことであっても「自分の意見」です。
自分名義で何かを発信することは、会社のコミュニケーションの基本ですね。
たとえテレビドラマの感想であっても「まず、自分から発信すること」。
これで自分の意見を知ってもらえます。

そういう風土を作ることで、社内のコミュニケーションは密になっていきます。
チームワークができていくのです。

一般の会話をイメージすればわかると思いますが「言葉は軽いが、意外にナーバス」「時にするどいことを言ってくる」など、よく話をする相手には、何かしらのイメージを持ちますよね。

すると、何かの質問をするとき「これなら、Aさんが答えてくれるかな? いや全然返事のイメージがわかないBさんの意見も聞いてみたいな」
という考え方が出てきます。チームワークというのは、こういうことの積み重ね。
仕事というのは、チーム内で役割分担を行い、業務の内容をこなし、目標を達成していく作業です。

「生産性」というと、「目標ありき」なイメージがあります。
しかし、例えば社長が「この数字を目指せ」といったとする。
「数字の根拠は何だろう?」「自分の手柄が欲しいのか。」こういった「もやもや」が解決されなくては、数字を達成するモチベーション自体が存在しないままになります。これでは目標達成はできない。

しかし、サイボウズのような環境だと、まず目標自体が自発的に出てくる可能性が高い。またそれを達成しようと全員が思えるのです。

信頼できる組織とは

コミュニケーションとなれば「発言が行きっぱなし」では意味がありません。質問の場合は誰かが答えなくてはいけない。
サイボウズには「発言責任」とそれに応える「説明責任」の2つがあるのです。

ちなみにサイボウズの社員数は現在700人程度、2,3人を経由すると社長に行きつく人数だとか。
つまり、どんなことでも必ず何かがわかる、とことんわからないことは社長に行きつくという仕組みなのですね。

もちろん答えが「わからない」ということもある。
しかし組織のトップが考えて「わからない」という返事をもらうのと「意見を聞けない」のでは、全く意味が違います。

必ず返事はもらえることで、その場所に所属する安心感が大きくなり、信頼感も絶大になります。会社への絶対的な信頼感が、業績という結果につながるのですね。

ところで、やり取りをマメにするのは面倒ではないのか?
もちろん大変面倒なようです。そのため1人1人のニーズに合わせた、いろいろなルールが存在するよう。
こういったシステムを作るのは非常に面倒なことです。

しかし、現在盛んに言われる「多様性」を維持すること、例えば障がい者雇用を促進しようと思えば、結局こういった愚直な方法を実践するしかないのです。

「生産性が向上する」魔法のシステムがあるわけではない。
そこに所属する人たちの意見をどんどん出し続け、落としどころを見つけていく。その繰り返しがシステムになっていく。
サイボウズのやっていることは、とても単純で企業や社会には重要なことなのです。