安土・桃山時代の英雄、織田信長は戦の前にはかならず「人間50年~下天のうちをくらぶれば、夢幻の如く。生をうけ滅するもののあるべきか」と日本の伝統芸能「幸若舞」の演目を舞ったそうです。このように、この時代では人間の人生は50年程度と考えられていたようです。

これを裏付けるように、時代が下っても1980年代前半までは、企業の定年は55歳が主流でした。そして、その5年後60歳は還暦、干支が一巡して生まれた年の干支に還る時を人生の一区切りとすることになっています。しかし、戦後になり日本人の寿命は急速に伸び、最近では、60歳定年制を導入している企業が主流になっています。

ところが、日本人の平均寿命の延びは留まるところを知りません。特に、ここ数年は右肩上がりに上がっており、厚生労働省の「平成28年簡易生命表」にhttps://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life16/dl/life16-02.pdfによると、男性の平均寿命は80.98年、女性の平均寿命は87.14年となり、平成27年と比較して男は0.23年、女は0.15年上回っており、世界一の長寿国となっています。

このため、男女とも60歳を迎えてもまだまだ元気な人が多く、定年後の第二の人生をどう過ごすか、頭を悩ませているシニアが多いのが現状です。

多くの企業では、定年後には再雇用制度を設けていますが、再雇用時には多くの場合、給料が大幅に下がります。しかし、前述したように現代では60歳といってもまだまだ働き盛り、人生はこれからという人も多く、給料を減額されては、生活の経済上の必要から納得できないという人も多いのではないでしょうか。

これを受け、政府では「65歳定年制」の導入を進めており、公務員をはじめ、各企業にも導入を進めています。そして、今回、TISインテックグループのTISがその先鞭をつけました。

同社は2018年10月5日、基本給・賞与、人事評価などの処遇制度が60歳以降も変わらない「65歳定年制度」を、2019年4月に導入することを発表しました。

定年が5年延長。希望に合わせた定年も可能に

TISの発表によりますと、今回導入する「65歳定年制度」では、定年退職の年齢を従来の60歳から65歳に延長し、60歳までの職種・処遇制度、手当、勤務制度などが60歳以降も適用されるといいます。

また、この制度で特徴的なのは、60歳を過ぎると、本人の希望により65歳までまたなくても定年できる選択式定年制を導入していることです。これは、60歳、あるいは63歳での定年が可能で、従業員は自分のライフプランに合わせた定年が可能になるのです。

この制度の対象になるのは、TISに在籍する約60名のシニア社員(60歳以上の社員)からです。また、同社には今後も55歳以上の社員が約300名在籍しており、これらの多くの社員が今後の対象となります。

TISが進める「働き方改革」とは

現在、「働き方改革」が進められており、働き手の意識や企業の在り方に大きな変化が訪れようとしています。また、終身制雇用制の崩壊やこれまでと全く異なった価値観を持つと言われるミレニアル世代が社会に進出する年齢となってきたため、「働く」ということについて、あらゆる面からの変革が求められています。

かつて、高度成長期には、自分の健康やプライベートなどを犠牲にしても、働いて会社や組織のために尽くすことが美徳とされ、これはバブル期を経て、最近まで続きました。

しかし、終身雇用制が崩壊し、「組織」を大切にする時代から「個」を大切にする時代へと変化しました。これにともない、企業側にも、社員の健康が優先するという意識への変化が求められているのです。

今回のTISの「65歳定年制度」導入の背景には、「働き方改革」にてついて、独自の施策を進めようという同社の想いがあるようです。

では、TISの考える「働き方改革」とはどういったものでしょうか。同社によると、まず働く場所や時間など働く形態にさまざまな選択肢を増やし、個人のパフォーマンスが最大限に発揮される環境や体制を整えることだといいます。これにより、仕事の成果の質・スピードの向上やオーバヘッドの削減を目指します。また、同社社員の「働き方改革」に対する自覚と自律を高めることも目的だといいます。

また、同社は「健康経営」の施策にも、こだわっているようです。社員一人ひとりの人生の質を向上させることを目指し、「心身の健康」「働きがいの向上」「生活力の向上」の実現が、同社の目指す「健康経営」なのです。

「寿命100」歳時代の働き方って・・・

前述したように、日本人の平均寿命はどんどん伸びています。このままいくと「人生100年」時代となるのはまちがいでしょう。事実、厚生労働省の2018年9月に発表によると、住民基本台帳に基づく100歳以上の高齢者の総数はなんと69,785人にも上るようですhttps://www.mhlw.go.jp/content/12304250/000354926.pdf

このような時代になれば、60歳定年はちょっと早すぎると思うのは当然です。健康で、良い環境で、自分を大切に働く、これが100歳時代の働き方なのです。TISの導入は、今後の企業の動き大きな影響を与えることでしょう。