「模範囚」が逃げ出す理由とは

先日、松山刑務所大井造船作業場から27歳男性が脱走。
長い潜伏期間を経て逮捕という事件がありました。

この服役者、本来の出所は残り半年、模範囚とも言われていました。
また大井造船作業場は「塀のない刑務所」自由が多く、一般刑務所よりは拘束の少ない場所。
実際、再入率再入率」は8~14%と、全国刑務所の平均再入率43%を大きく下回る「優良施設」。法務省「刑務所改革」のシンボルのような場所だったのです。

世間で優秀とされる施設で、高評価を得ていた人物が、突然逃げ出す。
しかも本人に何の得があるのか、解らない理由で。
この部分だけ読めば、最近のニュースの多くがこの文章に当てはまることに気づくでしょう。

「ハラスメント」です。そもそもこの男性自身が、逃亡の動機を「他の受刑者や、刑務官にいじめられていた」と述べています。

「懲罰主義」はフェアなのか

この男性が「模範囚」と言われていた刑務所内の社会は、一般社会をそのまま縮図にしたような形。
しかも刑務所というのは「懲罰を与え更生させる施設」。
「頑張ったやつは出してやる」という、構造自体がハラスメントのような仕組みなのです。

こういう場所では、指導者が大きな力を持つ。
また刑務所は、3食生活保障付き、ということで、実社会以上に高齢化社会。
刑務官と親しい要領のいい受刑者がいる可能性もある。

そうすると「本当に社会に出る実力がある」かどうかと関係なく、本人の評価が決められる可能性がある。

男性が「模範囚」だったということは、刑務所社会にきちんと適応していたのでしょう。

しかし、限界が訪れる。逃亡生活そして瀬戸内海を渡るより、塀の無い刑務所で過ごした方が楽なように思えますね。何より出た後には、自由がある。

ですが、あえてそれを捨てる。
それだけハラスメントがきつかった、もしくは出所しても似たような世界が待っている、と思ったのかもしれません。

「俺だって頑張ってきた」の悪循環

今まで日本で、指導者のキツイ指導に耐えるシステムが機能していたのは、いわゆる「右肩上がりの社会」だったから。
苦しさに耐えると、金銭報酬などの見返りがある、また実際に自分の会社が大きくなる達成感があるという「結果」が出ていたから。

しかし、今では「叱責主義」だけが残ってしまっています。その原因は「俺だってこんなシゴキに耐えて、成長したんだ。」
その結果が「成長」ではなく「過労死」になっているのに、人を罰するという構造だけが残っているのです。

元大阪地検、特捜のエースであり、「闇社会の守護神」とも言われた田中森一氏は、自身も「服役経験者」。
「塀の中は番号制、体力上の理由で足が上がらないのに上げろと言われる。」
屈辱の連続の日々、それが刑務所だと述べています。

元々人として全く尊重されていない、そしてミスをすると叱られ、自身の尊厳を踏みにじられる。
こんな状況に刑務所の中、一般社会の皆が絶望している。
この構造を変えない限り、働き方改革も刑務所の環境も変わることはないでしょう。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180510-00169494-diamond-bus_all