“働き方の見直し”などと言ったときに、真っ先に思い浮かぶフレーズの1つが“ワークライフバランス”です。最近では、人材の獲得のために、“ワークライフバランスの充実”をアピールする企業も珍しくありません。しかし、ワークライフバランスを実現できたとして、それが本当に幸せに働くことに繋がるのでしょうか。

 

ワークライフバランスとは? “ワーク”と“ライフ”を切り離す方が幸せ?

そもそも、ワークライフバランスとは一体何なのでしょうか。平成19年(2007年)に政府が策定した「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」では、ワークライフバランスが実現した社会を以下のように定義しています。

国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会

つまり、「仕事上の責任を果たす=“ワーク”」と「家庭や地域生活=“ライフ”」のバランスを、人生の各段階に応じて調整し、それぞれにとってベストな選択をできるような状態というのが、ワークライフバランスが実現された社会であるというわけです。これは、“ワーク”と“ライフ”を切り離して、その時々で両者の比重を調整していくという考え方とも言えます。

この“ワーク”と“ライフ”の切り分けに関して興味深い結果を示しているのが、Googleが2016年12月に発表したワークライフバランスに関する調査です。Googleの社員に対して実施されたこの調査によると、仕事とプライベートが明確に分かれている人(Segmentors)と、仕事とプライベートの線引きが曖昧な人(Integrators)を比べると、本人がどちらのスタイルを望んでいるかに関わらず、「仕事とプライベートが明確に分かれている人の方が、幸福度が高い」という結果になりました。

 

“ワーク”と“ライフ”を切り分けるのは難しい

一方で、“Googleの社員の中でも、仕事とプライベートが明確に分かれている人は全体の3分の1以下”であり、“仕事とプライベートの線引きが曖昧な人の半数以上が、仕事とプライベートを明確に分けたいと望んでいる”という結果も同時に示されています。「仕事とプライベートを切り離したいのに、実際にはそうできていない」という人が多数存在しているのです。

以前の記事でご説明したように、現在の社会において働く人の中心となっているホワイトカラーは、仕事に必要な“知識”を自ら所有しているが故に、仕事とプライベートが一体化しています。

仕事とプライベートを明確に切り分けて、状況に応じてそのバランスを調整することができれば、それは理想的なことかもしれませんが、実際にはかなり難易度が高いといえます。ですから、ワークライフバランスの実現を目指して努力することによって、必ずしも幸せに働けるようになるわけではない、という面もあるのです。

ワークライフバランスの理想と現実

 

“ワーク”と“ライフ”の切り分けよりも、“働き方革命”を!

では、幸せに働けるようにするためには、どうすればいいのでしょうか。その答えの1つが、“ワーク”と“ライフ”を切り分けない道を探すことです。

そもそも、なぜ“ワーク”と“ライフ”は切り分けるべきだったのでしょうか?それは、“ワーク=主に個人の自由を奪われた状態で働くこと”を指しているからではないでしょうか。

  • ワーク:個人の自由を奪われている状態
  • ライフ:仕事から離れた自由な状態

と考えたとき、両者の境界が曖昧になってしまえば、人は“自由”をほとんど感じない状態になります。これでは、幸福度が下がるのは当然のことでしょう。

しかし、“働く”というのは、必ずしも自由を奪われることではないはずです。そして、今巻き起こりつつある“働き方革命”はまさに、“自由を奪われることなく、個人が自分にあったスタイルで働く”ことを意味しています

フリーランスになって、自分で自分をマネジメントしながら働くことも考えられます。また、以前の記事では、これからの時代、“個人が企業に合わせるのではなく、企業が個人に合わせるという発想の転換が必要”とご説明しました。少子高齢化が進んで労働力人口が減少する中で、企業は個人の能力を今まで以上に活かす必要があります。そのために、企業が個人を縛るのではなく、それぞれに合った形で働いてもらえるようにする、という流れは今後ますます強まっていくはずであり、その流れを積極的に推し進めることで、個人が幸せに働けるようになると考えられます。

 

いかがでしたでしょうか。
私たちは知らず知らずのうちに、仕事というのは苦しいものであり、仕事とプライベートを切り分けて、楽しいプライベートの時間を確保しなければならないと思い込んでいたのかもしれません。そうした思い込みが、”ワークライフバランス”という考え方を生んだのです。
しかし、仕事を苦しいものにしてしまっているのは、私たち自身でした。いま私たちに必要なのは、”ワークライフバランス”ではなく、”働き方革命”です。“仕事は苦しいもの”という思い込みを捨てて、“自由を奪われないような働き方”を模索することが、幸せに働き、幸せに生きるために求められているのです。