政府が“働き方改革”のテーマの1つとして掲げている“副業解禁”。その動きに先駆けて、“副業解禁”に踏み切る企業も出てきており、副業に興味を持つ方も増えてきていると思います。一方で、“副業なんて単なる小遣い稼ぎにしかならない”などとお考えの方もいるかもしれません。
しかし、本業以外の活動をすることは、これからの時代に必要な“パラレルキャリア”を築くきっかけになるかもしれないのです。

“副業”と“パラレルキャリア”の違いは、その目的

“副業”と“パラレルキャリア”は、どちらも本業以外に活動の場を持つことを指します。どちらについても明確な定義があるわけではないのですが、両者の違いをイメージ化したのが以下の図です。

1-2

“副業”とは、本業の他に別の仕事を持つということを言い、特に副収入を得ることを主な目的としたもののことを言います。一方の“パラレルキャリア”は、マネジメント研究の第一人者であるピーター・ドラッカーによって提唱された概念です。本業以外の活動として、企業で働く以外にも、NPO活動やボランティア活動、あるいは大学院での勉強など、経験・やりがい・スキルアップを主目的とする活動を行います。もちろん、そうした目的で活動した結果として収入を得られる場合もありますが、収入を得ることが主目的ではないというのがポイントです。

2009年に独立行政法人労働政策研究・研修機構が公表した調査において、「副業を行っている」と答えた1万803人に対し、その理由を尋ねたところ、「収入を増やしたいから」が31.3%、「1つの仕事だけでは生活自体が営めないから」が15.1%、「ローンなど借金や負債を抱えているため」が3.4%と、経済的な理由を選択した人が合計で49.8%を占めました。
一方で、「自分が活躍できる場を広げたいから」「様々な分野の人とつながりができるから」「副業のほうが本当に好きな仕事だから」といった”パラレルキャリア”的な理由を選択した人も合計で20.9%に及んでおり、2009年の時点で、すでに”パラレルキャリア”を築き始めていた人たちがいることもわかります。

今後、”働き方改革”が進んでいくことで、本業以外に活動の場を持つ機会はどんどん増えていくでしょう。そうした機会を、収入を得ることを目的とした“副業”にしてしまうのか、収入以外の部分を目的とした“パラレルキャリア”を築くために費やすのか、これは非常に重要な選択と言えます。そして、その選択をする前に知っておいてほしいのが、我々がすでに迎えている“長寿化”という現実です。

100歳まで生きるのが当たり前の時代

日本を始め、先進国を中心に“長寿化”が進んでいる、という話を聞いたことがある方は多いと思います。厚生労働省の調査によると、2015年の日本人の平均寿命は、女性87.05歳、男性80.79歳で、いずれも過去最高を更新しました。この数字を見ても、“長寿化”という現実がわかるかと思いますが、もっと驚くべき数字があるのです。

2016年に出版された『ライフ・シフト』(リンダ・グラットン他著、東洋経済新報社、2016)によると、2007年に日本で生まれた子供の50%は、107歳まで生きると推計されています。こう聞くと「子供たちの世代の話でしょ」と思われるかもしれませんが、2017年に30歳を迎える1987年生まれの人の50%は98~100歳まで、2017年に60歳を迎える1957年生まれの人の50%は89~94歳まで生きると推計されています。つまり、我々はすでに、100歳まで生きるのが当たり前の時代に足を踏み入れているのです。

長く生きていれば、自分を取り巻く社会の状況も大きく変化します。技術進歩のスピードも目覚ましく、新しく習得した技術や知識もすぐに一昔前のものになってしまいます。このような変化に対応しなければ、収入を得るのも難しくなってしまうでしょう。だからこそ、“パラレルキャリア”という考え方が大事になってくるのです。短期的な、足元の収入のために行う“副業”ではなく、長期的な視点をもって“パラレルキャリア”を築き、新たな経験をしたり、スキルアップを図ったりすることによって、変化の大きい長い人生を生き抜くことができるのです。

“第2の人生”のためには“長い助走期間”が必要

また、ドラッカーは、“第2の人生”という視点から、“パラレルキャリア”を持つことを勧めています。長い間同じ分野の仕事を続けていたら、ほとんどの人は飽きてしまいます。こうなると、本人にとっても周りの人にとってもプラスになりません。だからこそ、“第2の人生”を設計することが重要であり、それに踏み出すための“長い助走期間”として“パラレルキャリア”を築く必要があるというのです。

1つの仕事を続けていた人が、いきなり何か新しいことを始めようとしてもなかなかうまくいかない、というのは想像しやすいところだと思います。人生が長くなった分、“第2の人生”も必然的に長期化します。長い“第2の人生”を充実したものにするためにも、“パラレルキャリア”という考え方が大事になってくるのです。

 

いかがでしたでしょうか。
現状では副業を禁止している企業が多いですが、政府の動きに合わせて、これから副業解禁に踏み切る企業はますます増えていくでしょう。いざ自分の勤める会社で副業解禁となったときに、自分はどんな“パラレルキャリア”を築いていきたいのか、今からじっくり考えてみるといいのではないでしょうか。
最初に「これ!」と決められなくても、本業という生活の軸があるのですから、試行錯誤しながら自分に合ったものを探していけばいいのです。100年にも及ぶかもしれない長い人生を生き抜くために、短期的な視点で“副業”に取り組むのではなく、より長期的な視点で“パラレルキャリア”を築くことが重要です。