働き方を語る上で、避けては通れないのが女性の働き方の問題です。男女雇用機会均等法の施行に始まり、産休・育休や時短勤務の普及、管理職への積極登用など、女性の働き方はこの数十年で大きく変化してきました。
そして、今巻き起こりつつある“働き方革命”も、女性の働き方を変えていきます。その変化は、男性にも無関係ではないのです。

制度はあっても利用できないという現実

男女雇用機会均等法が制定された1985年以降、女性にも男性と同様に働く扉が開かれました。当初はごく一部のスーパーウーマンだけの話でしたが、その後、徐々に女性の社会進出が進み、1990年代から2000年代にかけては、多くの企業で産休・育休や時短勤務などの制度整備が進みました。多くの女性が結婚や出産を経て働き続けやすい制度が、少しずつ整ってきたのです。

とはいえ、そんな制度の恩恵を女性たちが十分に受けているかというと、実際には疑問が残ります。下のグラフは、第1子出産前後の妻の就業状況を示したものです。

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第1子出産に際して、育児休暇(以下、「育休」)を取得して仕事を続けたという女性の割合は、年々増加してきてはいるものの、2010年から2014年においても全体の28.3%であり、妊娠時に就業していた人の4割ほどに留まっています。せっかくの育休制度も、あまり機能していないのが現状なのです。

この理由の1つとして考えられるのが、制度があってもそれを利用しづらい雰囲気が職場にあるということです。以前の記事でご紹介したように、現在は、すでに少子高齢化による人手不足が顕在化しつつある時代です。すると必然的に、育休を取得することに申し訳なさを感じて自ら退職を選ぶという場合もあれば、直接的でなくても会社から退職を勧められるという場合もあるでしょう。

育休は男性でも取得が可能なものの、“子育て中の女性のための制度”であるという意識は根強いものがあります。時短勤務や在宅勤務なども同様です。せっかく企業が制度として取り入れたとしても、“子育て中の女性だけ特別扱いを受けて不公平”という考えが他の社員の間に生まれてしまうと、実際に制度を利用するのは難しくなるでしょう。

“働き方革命”で、女性が本当に働きやすい社会に

では、どうすれば本当に女性が働きやすくなるのでしょうか。そのカギを握るのは、実は男性の働き方なのです。
男性が毎日遅くまで働き、生活のすべてを仕事に捧げることが当たり前とされている状況では、子育てなどによる時間の制約がある女性は、上述のような“特別扱い”を受けざるを得ません。
一方で、少子高齢化時代を生き抜くための“働き方革命”では、男女問わず“限られた時間で効率よく働く”ことが求められます。こうした働き方が当たり前になり、男性も女性も公平に働ける環境を作ることで、女性が本当に働きやすい環境が実現するのです。

また、“働き方革命”により、女性だけでなく、男性の働き方も変わることによって、職場環境のみならず、家庭生活の面でも、女性が働きやすい状態が生まれます。
下のグラフは、出産後の夫の平日の家事・育児時間別にみた、出産後の妻の就業状況を示しています。これを見ると、夫の家事・育児時間が長いほど、第1子出産後の妻は、それまでと変わらない働き方が可能になることを示唆しています。

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夫が毎日遅くまで働いていて家のことは何もしないとなれば、家事や育児の負担はすべて妻にかかり、妻の仕事上の制約も大きくなってしまいます。“働き方革命”によって男性も働き方を見直し、家事や育児を行うことができれば、女性はもっと仕事と家事・育児のバランスを取りやすくなり、職場でも責任のある役割を担えるようになるのです。

大介護時代に活かされる、女性のノウハウ

とはいえ、“自分には小さい子供もいないし、今さら働き方を変える必要なんてない”などと考える男性もいるでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。

みなさんは、2025年問題という言葉をご存知でしょうか。2025年、日本では約800万人いる団塊の世代が75歳を迎え、後期高齢者の仲間入りをします。2016年現在で約1,500万人いる後期高齢者が、約2,200万人にまで増加し、全人口の4人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎えるのです。

そこで問題になるのが、団塊の世代に対する介護問題です。2025年には、団塊ジュニア世代を中心に、家族の介護を担う必要のある人が急増し、大介護時代を迎えると考えられています。1970年代生まれの団塊ジュニア世代は、2025年には40代半ばから50代半ばになります。こうした組織の中心をなすべき人々の多くが、介護という制約を受けて、従来の“働き方”を続けることが難しくなる可能性があるのです。

つまり、2025年を迎える前に、子育てや介護といった制約のある人でも働きやすい環境を作ることが、今の日本企業にとって喫緊の課題なのです。

そのためには、今まさに制約があるなかで試行錯誤しながら働いている女性たちが、重要な役割を担うことになります。

  • 女性たちが、制約のある中でも責任をもって楽しく働くためのノウハウを蓄積し、それを組織全体に広めていく
  • 組織全体としては、彼女たちのような働き方が将来的には当たり前のものになると認識し、それに合わせて組織全体の働き方を変えていく

こうした取り組みが、10年後の日本企業を救うための秘策となる可能性があるのです。

いかがでしたでしょうか。
今までは働き方の問題というと、女性、特に子供を持つ女性の問題ばかりがクローズアップされてきました。それは、彼女たちが制約のある中で働く人の代表とみなされてきたからです。
しかし、これからの時代、より多くの人が制約のある中で働く必要に迫られる可能性があります。むしろ、何の制約もなく、生活のすべてを仕事に捧げられるような人の方が、少数派になっていくでしょう。
そうした状況でもすべての人が楽しく働けるようにするためには、今は制約がないという人であっても、“自分が将来そうなるかもしれない”という当事者意識をもって、“働き方革命”に取り組むことが必要なのです。