働き方に関する様々な問題について、政府が積極的に議論を進める中で、メディアで話題になる機会も多くなりました。その際によく用いられるのが、“働き方改革”と“働き方革命”という2つの表現です。政府が掲げているのは“働き方改革”ですが、では“働き方革命”とは何なのか。今回は両者の違いとともに、“働き方改革”だけでなく、なぜ“働き方革命”が巻き起こりつつあるのかについて考えたいと思います。

“改革”と“革命”は、似て非なるもの

“改革”と“革命”、どちらも“変革”を意味する言葉ですが、実はこの両者には大きな違いがあります。『大辞林 第三版』(2006、三省堂)でそれぞれの項目を見てみましょう。

1-2

つまり、

  • 改革:既存の枠組みの中で変革を行うこと
  • 革命:既存の枠組みそのものを根本的に変革すること

という大きな違いがあるのです。

政府は“働き方改革”を掲げて2016年から様々な議論を進めていますが、これはあくまでも既存の枠組みを維持しつつ、働き方に関する諸制度を見直そうとするものです。これに対して、“働き方革命”は、働き方に関する制度だけでなく、その前提となる社会の枠組みや構造まで変わることであると言えるのです。

ブルーカラーからホワイトカラーへ

ではどうして今、“働き方改革”だけではなく、“働き方革命”が巻き起こりつつあるのでしょうか。それはすでに社会の構造が変化し始めているからなのです。

下の図は、いわゆるブルーカラーとホワイトカラーについてイメージ化したものです。

1-2

かつて働く人々の中心となっていたのは、工場などで働く、いわゆるブルーカラーと呼ばれる人々でした。ブルーカラーの特徴は、仕事に必要なものを自分では持っていないということです。製品を作るための工場も、材料も、道具も、すべては基本的に工場のオーナーのものです。
しかし、経済の発展とともに、いわゆるホワイトカラーの割合が増加してきました。ホワイトカラーの人々が仕事をするために使っているオフィスや備品は、もちろん会社のものです。しかし、ホワイトカラーが仕事をする上で最も大切なのは、オフィスや備品ではなく、彼らの持っている“知識”です。仕事に必要な“知識”は会社のものではなく、あくまでも彼ら自身が持っているものであり、自らの力で得なければならないものです。

ブルーカラーの場合、仕事に必要なものを自分では持っていないことから、仕事をするのは基本的に職場にいる間だけとなり、仕事とプライベートの線引きが比較的はっきりしています。
一方で、ホワイトカラーの場合、仕事に必要な“知識”は“自分のもの”です。ですから、オフィスを離れていても仕事のことを考えて、そこでアイディアが浮かぶこともありますし、休日などに仕事のために必要な知識を得るべく勉強することもあるでしょう。あるいは、日常生活の中で得た知識や経験が仕事に活かされるということもあるかもしれません。つまり、ホワイトカラーの場合には、仕事に必要な“知識”を自分で持っているが故に、仕事とプライベートを明確に分けることが難しく、いわば仕事とプライベートが一体化しているのです。

“働き方”は、もはや“生き方”である

現在の日本の働き方に関する制度は、労働基準法を始めとする労働法制に基づいています。労働基準法では、従業員の労働時間を把握することは使用者(=会社側)の義務とされていますが、上述のように仕事とプライベートが一体化しているホワイトカラーに関しては、労働時間を正確に把握するというのは非常に難しい問題です。

このように、ブルーカラーを想定して作られた日本の制度には、仕事とプライベートが明確に分かれていることを前提として設計されている部分が多くあります。しかし、ホワイトカラーの占める割合が増加している中で、もはや仕事とプライベートを単純に分けて考えることはできません。この仕事とプライベートとの線引きに、現在起きている働き方に関する問題の原因があるのではないでしょうか。だからこそ、働き方に関する問題を解決するためには、仕事だけを切り出して“働き方”として考えるのではなく、仕事もプライベートも含めた“生き方”として考えることが重要なのであり、“革命”という根本的な変革が必要とされているとも言えるでしょう。

 

いかがでしたでしょうか。
働き方に関する問題が山積している中で、まずは足元の問題を解決していくために、政府が掲げているような“働き方改革”を進めていくことは必要でしょう。しかし、それだけで終わりではありません。
AIを始めとして様々なテクノロジーが今後ますます進化していく中で、社会の構造も今以上に大きく変化していくと考えられます。そうした大きな変化が起きつつある以上、”働き方革命”という根本的な変革が進むのは不可避なことなのです。

“働き方革命”の先にどんな社会があるのかは、今はまだはっきりとはわかりません。
しかし、その波に乗り遅れないように、働く個人としても、企業としても、既存の枠組みに収まらない根本的な変革は避けられないという前提に立って、”働き方”すなわち”生き方”の問題について考え、行動することが求められているのです。