2016年は、政府が“働き方改革”を掲げて取り組みを始めるなど、“働き方”に関する議論が一気に加速した年でした。とはいえ、「そういうのは一部の大企業の話で、うちみたいな中小企業には関係ない」などと考えていませんか?しかし、実は中小企業にこそ“働き方革命”が必要であり、また、中小企業だからこそ優位に立てる点もあるのです。

中小企業こそ深刻な“働き手不足”という現実

以前の記事で、少子高齢化によって、日本では働き手がどんどん減っていくというデータをご紹介しました。2010年に8,173万人だった「労働力人口」と呼ばれる15歳~64歳の人口が、2060年には4,418万人まで減少すると推計されています。では、現状ではどうなっているのかというと、実はすでに“働き手不足”の問題は顕在化しているのです。下の図は、財務省が2016年10月に公表した『財務局調査による「人手不足の現状及びその対応策」について』から、企業における人手不足感についてまとめたものです。

企業における人手不足感

この調査によると、財務局によるアンケートに対して“人手不足を感じている”と回答した企業は、全体の63.2%に及んでいます。さらに企業の規模別でみた場合、大企業が56.6%となっている一方で、中小企業においては74.7%が“人手不足を感じている”と回答しています。つまり、現状においても中小企業の“働き手不足”問題は大企業よりも深刻なものになっているのです。

また、中小企業の場合、子育てや介護を理由に退職する社員が1人でもいれば、その穴を埋める他の社員の負担は大企業よりも大きくなります。今いる社員がそういった理由で退職するのを防ぎ、さらに、そうした理由で他社を辞めざるを得なかった人の力を拾い上げ、人手不足を解消していくためにも、中小企業こそ、今すぐにでも“働き方革命”に着手し、多様な人材が働きやすい環境を実現する必要があるのです。

“みんなの顔が見える”中小企業の優位性

そうは言っても、“何か新しい取り組みをするには、資金的に余裕がない”という中小企業も多いことでしょう。確かに、“働き方革命”のために新しいシステムを導入するなどとなれば、資金面で余裕のある大企業の方が優位かもしれません。しかし、中小企業だからこそ、“働き方革命”を進める上で優位になる点もあります。その1つが、“みんなの顔が見える”という中小企業ならではの特徴です。
下の図は、中小企業と大企業の組織をイメージ化したものです。

中小企業と大企業の組織

大企業のように規模が大きく複雑な組織では、経営者からは、大多数の一般社員が日々どのように働いているのかというのはほとんど見えません。一般社員同士でも、他の部署の人がどんな仕事をしているのか知らないという場合もあるでしょう。

一方で、中小企業では、人数が少ないからこそお互いのことがよく見えています。経営者と一般社員との距離も近く、仕事だけでなく、家族の状況まである程度把握しているという場合もあるでしょう。つまり、中小企業では、そこで働く人たちが“社員”という一つの塊としてではなく、“一人ひとりの個人”として認識されやすいという状況があるのです。

“働き方革命”の主役は、働く個人

では、どうして“みんなの顔が見える”ことが“働き方革命”を進める上で優位に働くと言えるのでしょうか。その答えは、“働き方革命”の主役が働く個人であるということにあります。

今までは、企業が決めたルールやシステムがあり、個人がそれに合わせて働くというのが一般的でした。しかし、これからますます深刻化する“働き手不足”の問題に対応するためには、子育てや介護といった事情を抱えるなど、企業に合わせた働き方をすることが難しい人たちの労働力を活用する必要があります。そのためには、個人が企業に合わせるのではなく、“企業が個人に合わせる”という発想の転換が重要なのです。“企業が個人に合わせる”ためには、当然、そこで働く個人の状況を理解する必要があります。ここで、“みんなの顔が見える”という中小企業の特徴が強みを発揮するのです。

“働き方革命”を進める上で、必要な制度の整備を行うなど、企業側にも重要な役割はあります。しかし、もっと重要なのは、そこで働く一人ひとりが、どうすればより働きやすくなるのかを自ら考え、声を上げ、そして実行していくことです。“働き方革命”の主役である働く個人の姿が見えやすく、それに合わせて柔軟に対応しやすいという点で、実は中小企業の方が“働き方革命”に取り組みやすいと言えるのです。

いかがでしたでしょうか。
もちろん資金面の問題も重要かもしれませんが、最近では無料や低価格で使えるクラウドサービスやチャットツールなども増えてきています。また、政府が“働き方改革”を推進する中で、様々な助成金制度なども期待できるでしょう。中小企業の経営者においては、自分たちは無関係などと思わず、こうした動向をしっかりとチェックする必要があります。
そして、“働き方革命”の主役たる一人ひとりの社員も、“自分の会社では無理”などと考えず、自分たちの手で働きやすい環境を作り上げるべく、“働き方革命”に取り組んでいくことが大切です。
『中小企業白書』によれば、日本の企業のうち99.7%は中小企業が占めています。従業員の数で見ても、中小企業で働く人の割合は、すべての企業で働く人の69%に及ぶのです。一つ一つの企業の規模は小さくとも、中小企業全体が動けば、それは日本社会の大部分が動くことになります。中小企業こそ“働き方革命”という大きな流れの先駆者となれる可能性があるのです!