前回の記事では、デジタル時代を生き抜くための1つ目のポイントである“イノベーション”という観点から、企業におけるダイバーシティの重要性を考えました。後編では2つ目のポイントとして、デジタル時代において消費者の欲求を満たすために必要な“カスタマーエクスピリエンス”という観点から、ダイバーシティの重要性を考えていきます。

 

デジタル時代は、“顧客中心”の時代

デジタル化が進む中で、いち早く変化しているのが商品・サービスの買い手である消費者です。商品やサービスについて、店舗などを訪れなくても、インターネットを通じて得ることのできる情報はどんどん増加しています。その中には、提供側の企業が発表する情報だけでなく、実際にその商品やサービスを利用した顧客による口コミ情報なども含まれます。売り手と買い手の間にある情報の非対称性は解消されつつあるどころか、売り手が把握していない情報を買い手が得ている可能性すらあるのです。

さらに、商品そのものや購買手段について、顧客の選択肢が広がったことも、デジタル時代の特徴です。インターネットを使えば、自宅にいながら、海外のお店の商品を購入することも容易です。また、同じ商品やサービスを購入するにも、店舗に行くのか、インターネットで注文するのか、企業の公式サイトで買うのか、オークションサイトやフリマアプリを利用するのかなど、多様な選択肢が存在しており、顧客は自分が最も気に入った商品を、最も快適だと思う方法で購入することができるのです。

 

顧客中心の時代には、カスタマーエクスピリエンスの向上が急務

このような顧客中心の時代において、注目を集めているのが“カスタマーエクスピリエンス”という考え方です。“カスタマーエクスピリエンス”とは、商品やサービス自体だけでなく、購入前後のあらゆるプロセスにおいて顧客が体験する“快適さ”や“感動”などの感覚的・感情的な部分を含めた、包括的な価値のことを言います。

カスタマーエクスピリエンスの概念図

多くの情報と選択肢をもつ顧客を満足させ、その企業や商品・サービスのファンになってもらうためには、こうしたカスタマーエクスピリエンスを向上させることが重要だと考えられているのです。

実際に、2011年に米国で行われた調査では、「消費者の89%が、カスタマーエクスピリエンスが十分に満たされなかったことが理由で、他社に乗り換えた」という結果が示されています。

 

ダイバーシティが優れたカスタマーエクスピリエンスを実現する

では、カスタマーエクスピリエンスを向上させ、顧客に満足してもらうために、企業はどうすればいいのでしょうか。実はこの答えも、ダイバーシティにあるのです。

様々な顧客が、どういった場面で感動したり、快適に感じたりするのか。顧客のカスタマーエクスピリエンスを向上させるためには、顧客の立場になって考えることが求められます。このとき、似たような価値観をもった人々がいくら集まっても、多様な顧客のカスタマーエクスピリエンスを満たすようなアイディアは生まれないでしょう。多様な価値観や考え方を持った人々が集まり、様々な立場からアイディアを出し合うことで、多くの顧客を満足させるようなカスタマーエクスピリエンスを実現できるのです。

 
いかがでしたでしょうか。
企業にとって、ダイバーシティ推進は、デジタル時代を生き抜くうえで非常に重要な問題なのです。しかし、せっかくダイバーシティ推進の取り組みを行っても、きちんとした目的意識がなければ、その真価は発揮されません。それどころか、社内に混乱を巻き起こし、組織がバラバラになってしまう可能性すらあるのです。
多様な人材を、企業の競争力強化のためにどう活かしていくのか。これは、企業がこれからのデジタル時代を生き抜いていくために取り組むべき、避けては通れない課題なのです。