“デジタルトランスフォーメーション”という言葉をご存知ですか?次々に新しい言葉が飛び出してくるIT業界で、最近話題になっているキーワードです。“デジタル”による“トランスフォーメーション=変革”というと、「IT化による業務改善なら、うちの会社でも既にやっているけど」と思われるかもしれません。しかし、“デジタルトランスフォーメーション”には、そこからさらに一歩進んだ、“攻めのIT活用”が必要になるのです。

 

活発化するIT投資、中小企業でも

ビジネスにおけるIT活用はもはや必須のものとなっており、企業のIT投資も活発化しています。一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会が2017年1月に発表した「企業 IT 動向調査 2017」(IT 予算の速報値)によると、2017 年度の IT 予算について、前年度と比べて「増加」と回答した企業が34.0%、「不変」が49.7%で合わせて83.7%となっており、全体の8割以上の企業が前年度並みあるいはそれ以上のIT投資を行う予定としていることがわかります。

また、企業の規模別にみると、規模の小さい企業ほど「減少」と答える割合が少なくなっており、中小企業におけるIT投資が、特に活発化しているようです。むしろ、以前の記事でご紹介したように、人手不足がすでに深刻化している中小企業こそ、IT活用の必要性が増してきているとも考えられます

 

IT投資の目的、トップは「業務プロセスの効率化」

そんな活発化するIT投資ですが、いったいどのような目的で行われているのでしょうか。上述の調査によると、あらかじめ用意した選択肢の中から、「IT 投資で解決したい中期的な経営課題」 を優先度の高い 1 位から 3 位まで選択してもらった結果、最も多かったのは「業務プロセスの効率化 (省力化、業務コスト削減)」となりました。1位から3位までを合わせると、全体のおよそ半数の企業がこの「業務プロセスの効率化」をIT投資の目的として選択しているのです。この結果から、「IT活用による業務プロセスの効率化」が企業にとって非常に重要な課題として認識されていることがわかります。

 

”守り”だけでは終わらないデジタルトランスフォーメーション

しかし、ここで注目したいのは、「営業力の強化」「ビジネスモデルの変革」「顧客重視の経営」「商品・サービスの差別化・高付加価値化」といった、現状ではあまり課題として強く認識されていない選択肢です。

経済産業省が策定した「攻めのIT活用指針」では、企業のIT活用レベルを以下のように定義しています。

  • 置き換えステージ:紙や口頭でのやり取りをITに置き換え
  • 効率化ステージ:ITを活用して社内業務を効率化
  • 競争力強化ステージ:ITを自社の売上向上等の競争力強化に積極的に活用

さらに、同指針では、次のように記されています。

米国などで高い収益を上げている企業では、ITの活用による企業の製品・サービス開発強化やビジネスモデル変革を通じて新たな価値の創出やそれを通じた競争力の強化を目指す、いわゆる「攻め」のIT経営を積極的に行っているとされています。しかし、我が国企業のIT投資においては、依然として、その目的が社内の業務効率化・コスト削減を中心とした「守り」に主眼が置かれる場合が多い状況にあると考えられます。

(太字は筆者)

つまり、現在多くの日本企業が該当するであろう「効率化ステージ」で行われているのは“守りのIT活用”であり、「営業力の強化」「ビジネスモデルの変革」「顧客重視の経営」「商品・サービスの差別化・高付加価値化」など、競争力強化ステージで行われることこそが“攻めのIT活用”であるということです。

”デジタルトランスフォーメーション”とは、ITをビジネスに導入し、”守り”の効率化ステージ、”攻め”の競争力強化ステージへと進んでいく、その一連の流れのことをいいます。もちろん、単純に一直線に進むというわけではなく、行きつ戻りつ、同時に複数のステージをこなしたりと、企業によって進み方は様々でしょう。ただ1つ言えるのは、現在多くの日本企業が軸足を置いている”守り”のステージは、IT活用のゴールではないということです。

IT活用の各段階とデジタルトランスフォーメーション

 

“デジタルトランスフォーメーション”で、生産性が向上?

では、今なぜ、“デジタルトランスフォーメーション”が重要なのでしょうか。それは、多くの日本企業が課題としているであろう、“生産性の向上”と関係があります。以前の記事でご紹介したように、生産性を向上させるためには、

  • 効率化・無駄の削減
  • 新しい付加価値を生み出す

という2つの方法があります。まさに前者にあたる「業務プロセスの効率化」は、生産性向上のための重要な取り組みと言えるわけですが、それには限界があるのも事実です。ですから、生産性向上のためには、IT活用による業務効率化=“守りのIT活用”を進めつつ、同時に新しい付加価値を生み出すための、“攻めのIT活用”にも目を向けていかなければなりません。そしてそれは、”デジタルトランスフォーメーション”の歩みを進めていくことなのです。

 

いかがでしたでしょうか。

今回の記事では、IT活用を“攻め”と“守り”という視点から考えました。現状ではまだまだ“守り”の段階にある日本企業が多い中で、生産性向上のためにはそこから一歩抜け出して、“攻めのIT活用”を行い、“デジタルトランスフォーメーション”を進めていく必要があるのです。

そこで、後編では、“知の探索”と“知の深化”という経営学の理論から、“デジタルトランスフォーメーション”を行う上で人間に何が求められているのかについて考えたいと思います。